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2.迷宮都市ルグランジ
2-1.
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わいわいがやがや、誰かが何処かで騒いでて、
ガラガラガラ、馬車が駆けずり回ってて、
ヒューンドガーン、誰かがどこかで飛んでいる。
それが迷宮都市ルグランジの生活音、忙しなくて騒がしい。
独身の頃、俺の一番好きなタイプだった町だ。
ここに来た目的は一つ。ダンジョンクリア報酬、それと名誉だ。
まぁ、竜騎士団に居ると忙しくて行く時間が無かった、ある意味心残りみたいなものだ。
それで冒険者ギルドに行かなくてはならないのだが、この街に来たのは初めてで勝手がわからない。
ダンジョンに潜る為の手続きがそこで行われるから行かざるを得ないのだ。
道行く人に聞くのも良いのだが、冒険者ギルドというのはその種の人達が集まる所だ。
その人達が多い場所を探せば、おのずと見つかる。
そうそう、こんなふうに細い路地を突き抜けて……。
ガバッ
急に真っ暗になる視界に人攫いに遭ったと直感した。俺超名推理。
足をバタバタと動かすが、可動域が少ないせいか敵は全く動じない。俺超無能。
そうして、袋から出されたのは檻の馬車の中、手足を縛られ転がされた。俺超無力。
カーテン閉められ状況はわからないが、いつの間にか町からも脱出したらしい。
そんな訳でいきなり迷宮都市ルグランジとおさらばしたのだ。
マジねーわ。
今着ているのは、こんな人攫いに合わないようにとグレッグが用意してくれた服だ。
ショートパンツに少しよれたシャツに外套と手袋。貴族っぽさを全力で打ち消した完璧な変装だ。
それに髪もまとめて帽子の中に入れてあるから、もしかすると女と思われていない可能性もある。
その方が都合がいい。
女とか貴族だとかアピールするのはわざわざ誘拐してくれと言ってるようなものだからな。
そうでなくても誘拐されたのだが…。
「ねぇねぇ…、アナタも…捕まったの?」
震えながら声をかけて来たのはネコ科の獣人族の少女だった。
かなり人血が濃いらしく、耳さえ隠せば人と見分けがつかない。
「まぁそう言う所だな……って結構多いな、しかも女ばっかりか」
話には聞いていたが、迷宮都市の子攫いは多いらしい。
子連れで来て親だけダンジョンに潜る奴が多くて、そこに夢を見てるのだが結局得れるのはシケた宝物だ。
それで町に戻ってみれば子供はいない。声をかけてくるは誘拐犯。
お宝と交換で子どもを返すってのが良くあるパターン。
お宝がいいモノであれば子供は帰って来る、そうでなきゃ永遠にさよならだ。
俺みたいに単身でうろついてる場合ってのは、親がダンジョンで亡くなったケースが殆どだ。
その場合、金持ちへ愛玩奴隷として売り飛ばされるのが鉄板らしい。
町として本腰いれて規制していないのは、孤児が居ついてスラムを形成するくらいなら、誘拐してくれって話もある。
全く酷い話だ。
そして、特に女ばかりを狙うのは、まぁそう言う目的なんだろう。
マジ殺すしかねえ。
娘を持つ父を巻き込んだ事を後悔させてやる。
ところがコイツら遠征してきたみたいで森の中で一泊する様だ。
こんなところでコイツらやっつけても意味がない、早く拠点に案内しろよなんて思っていた。
「おい、そこのチビ、出てこい」
チビばっかりだが、どの子だろうと周りを見て回る。
全員座ってるからよくわからん。
「お前だよ、そこのキョロキョロしてるお前だ!」
「俺か?」
「なんだ男かよ、女みたいなナリしやがって、いいから出て来い」
どうにもリーダーらしき奴の元に連れられ、ほっぺをプニプニされる。
一体何がしたいかわらかん。
「こいつあ、上玉だな」
「ですが、こいつ男ですぜ」
「なんだと!?」
スパーン。
股間に男の手が勢いよく突っ込んできた。
グホッと何かが込み上げる。内臓が口から出るかと思った。
まるで金蹴りをされたかの様な勢い、男だったら死んでたぞ!
「うん?ついてなさそうだぞ?」
「なんだ、女か、それならいい値段になるな」
こいつ一番最初に殺す。
「それで何やらせる気だ」
「飯を作れ」
「それくらい自分でやったら──」
胸ぐらを掴まれ体が宙に浮いた。
とはいえ、殴られることは無いだろう、大事な商品だからな。
「生意気な事を言えば痛い目をみるぞ」
「わかった、わかった、材料は何があるんだ?」
そうして見せられたのは、クズ野菜ばかりだった。
*
「アンタが誘拐犯のリーダーか?」
「いや、俺じゃない、そこの大人しそうなのがリーダーだ」
「へぇ、よくあんな弱そうなのに従ってるんだな。男なら天下取れよ、お前なら勝てる」
「いやいや、何煽ててるんだよ、てか、アイツめっぽう強いぞ、お前も逆らうんじゃないぞ」
黒づくめの男はこちらをチラリとみて、鼻で笑った。
よし、二番目はアイツだ。
ガラガラガラ、馬車が駆けずり回ってて、
ヒューンドガーン、誰かがどこかで飛んでいる。
それが迷宮都市ルグランジの生活音、忙しなくて騒がしい。
独身の頃、俺の一番好きなタイプだった町だ。
ここに来た目的は一つ。ダンジョンクリア報酬、それと名誉だ。
まぁ、竜騎士団に居ると忙しくて行く時間が無かった、ある意味心残りみたいなものだ。
それで冒険者ギルドに行かなくてはならないのだが、この街に来たのは初めてで勝手がわからない。
ダンジョンに潜る為の手続きがそこで行われるから行かざるを得ないのだ。
道行く人に聞くのも良いのだが、冒険者ギルドというのはその種の人達が集まる所だ。
その人達が多い場所を探せば、おのずと見つかる。
そうそう、こんなふうに細い路地を突き抜けて……。
ガバッ
急に真っ暗になる視界に人攫いに遭ったと直感した。俺超名推理。
足をバタバタと動かすが、可動域が少ないせいか敵は全く動じない。俺超無能。
そうして、袋から出されたのは檻の馬車の中、手足を縛られ転がされた。俺超無力。
カーテン閉められ状況はわからないが、いつの間にか町からも脱出したらしい。
そんな訳でいきなり迷宮都市ルグランジとおさらばしたのだ。
マジねーわ。
今着ているのは、こんな人攫いに合わないようにとグレッグが用意してくれた服だ。
ショートパンツに少しよれたシャツに外套と手袋。貴族っぽさを全力で打ち消した完璧な変装だ。
それに髪もまとめて帽子の中に入れてあるから、もしかすると女と思われていない可能性もある。
その方が都合がいい。
女とか貴族だとかアピールするのはわざわざ誘拐してくれと言ってるようなものだからな。
そうでなくても誘拐されたのだが…。
「ねぇねぇ…、アナタも…捕まったの?」
震えながら声をかけて来たのはネコ科の獣人族の少女だった。
かなり人血が濃いらしく、耳さえ隠せば人と見分けがつかない。
「まぁそう言う所だな……って結構多いな、しかも女ばっかりか」
話には聞いていたが、迷宮都市の子攫いは多いらしい。
子連れで来て親だけダンジョンに潜る奴が多くて、そこに夢を見てるのだが結局得れるのはシケた宝物だ。
それで町に戻ってみれば子供はいない。声をかけてくるは誘拐犯。
お宝と交換で子どもを返すってのが良くあるパターン。
お宝がいいモノであれば子供は帰って来る、そうでなきゃ永遠にさよならだ。
俺みたいに単身でうろついてる場合ってのは、親がダンジョンで亡くなったケースが殆どだ。
その場合、金持ちへ愛玩奴隷として売り飛ばされるのが鉄板らしい。
町として本腰いれて規制していないのは、孤児が居ついてスラムを形成するくらいなら、誘拐してくれって話もある。
全く酷い話だ。
そして、特に女ばかりを狙うのは、まぁそう言う目的なんだろう。
マジ殺すしかねえ。
娘を持つ父を巻き込んだ事を後悔させてやる。
ところがコイツら遠征してきたみたいで森の中で一泊する様だ。
こんなところでコイツらやっつけても意味がない、早く拠点に案内しろよなんて思っていた。
「おい、そこのチビ、出てこい」
チビばっかりだが、どの子だろうと周りを見て回る。
全員座ってるからよくわからん。
「お前だよ、そこのキョロキョロしてるお前だ!」
「俺か?」
「なんだ男かよ、女みたいなナリしやがって、いいから出て来い」
どうにもリーダーらしき奴の元に連れられ、ほっぺをプニプニされる。
一体何がしたいかわらかん。
「こいつあ、上玉だな」
「ですが、こいつ男ですぜ」
「なんだと!?」
スパーン。
股間に男の手が勢いよく突っ込んできた。
グホッと何かが込み上げる。内臓が口から出るかと思った。
まるで金蹴りをされたかの様な勢い、男だったら死んでたぞ!
「うん?ついてなさそうだぞ?」
「なんだ、女か、それならいい値段になるな」
こいつ一番最初に殺す。
「それで何やらせる気だ」
「飯を作れ」
「それくらい自分でやったら──」
胸ぐらを掴まれ体が宙に浮いた。
とはいえ、殴られることは無いだろう、大事な商品だからな。
「生意気な事を言えば痛い目をみるぞ」
「わかった、わかった、材料は何があるんだ?」
そうして見せられたのは、クズ野菜ばかりだった。
*
「アンタが誘拐犯のリーダーか?」
「いや、俺じゃない、そこの大人しそうなのがリーダーだ」
「へぇ、よくあんな弱そうなのに従ってるんだな。男なら天下取れよ、お前なら勝てる」
「いやいや、何煽ててるんだよ、てか、アイツめっぽう強いぞ、お前も逆らうんじゃないぞ」
黒づくめの男はこちらをチラリとみて、鼻で笑った。
よし、二番目はアイツだ。
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