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1.アバークロンビー家

1-3.

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 ツマラナイ日常にツマラナイ教育、世の中にはどうしてこんな無駄なものがあるのかと問いたい。
 歩き方レッスン!
 ダンスレッスン!
 テーブルマナー!
 座学!裁縫!刺繍!音楽!

「うおー!もー嫌だー!あのまま竜騎士団宿舎で生活すればよかったー!」
「ホッホッホ、なりませんぞ、公爵令嬢たるもの──」
「甘えるべからず!頼るべからず!自分に厳しくあれ! だろお?」
「そうです、その通りです、以前のお嬢様はそれはもう、完璧にこなしておいででした」
「だったら何で死んだんだよ~」
「そうですね、そろそろ話しましょうか、あれは──」

 そんな訳でグレッグの昔話が始まった訳だ。

『それはそれは優しくて美しい公爵令嬢がいました。
 そのご令嬢はとある王子様に恋をします。
 ですが、その王子様は既に婚約者が居る身、その恋は実りません。
 その代りにと、別の王子様が言い寄ります。
 ですが、ご令嬢は諦めきれなかった。
 こともあろうか、婚約者に決闘を言い渡したのです。
 ですが、ご令嬢は決闘に敗れました。
 次に考えたのは毒殺です。
 ですが、それも失敗します。事もあろうか自分で飲んでしまいます』

「おい、そこで死んだと言うんじゃないだろうな」
「いえいえ、続きがございますよ」

『今度は泣き落としをしようとしました。
 ですが、それは別の王子様に阻止されます。
 今度は一計を案じました、なんと魔法対決を申し込んだのです。
 ですが、練習しすぎで当日魔法が出せなくて負けてしまいます。
 ついには諦めてしまいました。
 ですが、今度は別の王子様が応援を始めてしまったのです。
 それに勇気づけられ、再び立ち上がります。
 ですが、その時、うっかり足を滑らせて、池に落ちてしまいました』

「それで?」
「以上でございますが?」
「最後の一文でよくねえか?それに『ですが』が多すぎなんだよ!」
「ほっほっほ、これも話術ってやつですな」
「そんな話術捨てちまえ!んでよ、剣術の先生はどうなった」
「おぉ、それを忘れていました。それがですね、先ほどの別の王子様というのが相手をして頂けるそうです」
「へぇ、まぁ腕が立つならいいぜ」
「ええ、それはもう、同年代では負け知らずでございます──」

 カキィーン!

 俺は相手の剣を弾き飛ばした。
 その剣は空中で回転しながら相手の少し後ろに剣先から着地した。
 あわあわと慌てふためく王子様はもはや内股で涙目になっている。
 同年代と聞いていたが、俺よりも頭半分くらい背が高いと言うだけで、全く実力不足だった。
 この年にしては頑張る方だと思ったが、前世の反射神経に竜の心臓と血液を持つ俺の敵では無かった訳だ。

「すまんな、手加減ができないんだ」
「ううう……、うわああああん!」

 突如、泣いた王子様に静かに見守るか悩んだ挙句、自分の子供をあやすかの様に頭を撫でてやった。

「悔しいか、悔しいよな。男の子だもんな、だけど負けは負けなんだ、認める事で次に進める。それが出来ない内は半人前だぞ」
「──………、うん、僕、頑張る」
「いい子だ、お前はきっと強くなるぞ」

 そうして王子様は帰っていった。
 きっと、強くなってまた来るだろう。
 その時が楽しみだ。

 *

「所で、あの王子様の名前、なんだっけ?」
「もうお忘れですか!ウィリアム・フィッツロイ、この国の第二王子にございます」
「そうか、また会えるかな」
「会えますよ、何せ貴女様の婚約者でございますから」
「はぁ!?いやいや、冗談だろう?」
「本当にございます、爺や嘘つきませんから」
「まぁ、だとしても今日の事で破談だろうな」
「はてさて、それはどうでしょうかね、ホッホッホッホ」

 その後、熱烈なラブレターが来た。マジカヨ。
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