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41.発病する大聖女
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ドルヴァー公爵との戦闘はあっさり終わった。
私は行軍に同行しただけだというのに、功績を大きく取り上げられた。
敵の寝返りが多発した為、大きな戦は無く、散発的な戦いだけだった。
戦いから一カ月が経過した今、私は未だにアリニャーヌ公国に居た。
帰る時間も惜しんで教会伝いに妹探しを続けている。
そんな状況をエリザベスは心配して苦言を呈した。
「エリアナ、いい加減になさい」
「エリザベス様、もしかしていい加減に帰れって言うの?」
「帰るなとは言う事はあっても、帰れなんて言わないわ。そうじゃなくて降臨の時間と回数が異常なのよ。その内体を壊すわよ」
「でも、妹が居なくなったのよ、仕方ないじゃない」
「現実を見なさい!呪いが解けたって事は、もう・・・」
そう、もう死んでいる・・・かも知れない。
姿を変えられた者が死んだ場合は元の姿に戻らないらしく、その姿を知っている者は限られている現状、私が探さなければいけない。
「諦めるのも一つの選択肢なのはわかっています。
それが出来ないのは、私に責任があるから。
私が頼んで呪った。
結果的に私が追い詰めたような物ですから」
その言葉にダリアが反論した。
「呪わなければアリアナ様はあのまま処刑されていたのです、エリアナ様が気に病む事はありません」
「ですが」
「エリアナ・・・お前、影が薄くなっていないか」
「影?」
薄いながらも私の影が揺らめいた。
魔導照明に照らされ、昼間の様に明るい室内に私以外の影はくっきりと見えている。
理由は明らかだった。
天界移住症候群───
あまりに症例が少なくこれを乗せてる文献は殆どない。
だけど、私は数多ある書籍に目を通していたから知っていた。
天界或いは魔界の力に頼っていた者が陥る症状で、逆説的にこの世界と天界・魔界とは存在する次元が異なる事を立証した症状。
徐々に別次元の方に存在自体が移り行き、こちらの世界での存在が希薄になり、それでも続けた場合は存在が消滅する。
その初期症状がこの薄くなった影だ。
直接治療する方法はなく、当面の間次元の異なる力に関わらない事で症状が沈静化する。
「ついになっちゃったか・・・」
「知ってるの?何が起きてるのよ?」
「まぁ、聖女独特の病気、力を使いすぎってだけ・・・」
「つまり、これ以上降臨できないって事でしょ。ざまぁないわ、降臨とか言うズルを散々利用したツケが来たのよ」
「あははは、エリザベス様は容赦ないねぇ」
「だから、もう、降臨するのは止めなさい。探すなら人員出してあげるからさ」
「う、うん、じゃあ連絡用に大聖堂へ降臨だけにする・・・」
「そうそう、素直ね」
私は無力だ───
その日、意識を失う程、深酒した。
私は行軍に同行しただけだというのに、功績を大きく取り上げられた。
敵の寝返りが多発した為、大きな戦は無く、散発的な戦いだけだった。
戦いから一カ月が経過した今、私は未だにアリニャーヌ公国に居た。
帰る時間も惜しんで教会伝いに妹探しを続けている。
そんな状況をエリザベスは心配して苦言を呈した。
「エリアナ、いい加減になさい」
「エリザベス様、もしかしていい加減に帰れって言うの?」
「帰るなとは言う事はあっても、帰れなんて言わないわ。そうじゃなくて降臨の時間と回数が異常なのよ。その内体を壊すわよ」
「でも、妹が居なくなったのよ、仕方ないじゃない」
「現実を見なさい!呪いが解けたって事は、もう・・・」
そう、もう死んでいる・・・かも知れない。
姿を変えられた者が死んだ場合は元の姿に戻らないらしく、その姿を知っている者は限られている現状、私が探さなければいけない。
「諦めるのも一つの選択肢なのはわかっています。
それが出来ないのは、私に責任があるから。
私が頼んで呪った。
結果的に私が追い詰めたような物ですから」
その言葉にダリアが反論した。
「呪わなければアリアナ様はあのまま処刑されていたのです、エリアナ様が気に病む事はありません」
「ですが」
「エリアナ・・・お前、影が薄くなっていないか」
「影?」
薄いながらも私の影が揺らめいた。
魔導照明に照らされ、昼間の様に明るい室内に私以外の影はくっきりと見えている。
理由は明らかだった。
天界移住症候群───
あまりに症例が少なくこれを乗せてる文献は殆どない。
だけど、私は数多ある書籍に目を通していたから知っていた。
天界或いは魔界の力に頼っていた者が陥る症状で、逆説的にこの世界と天界・魔界とは存在する次元が異なる事を立証した症状。
徐々に別次元の方に存在自体が移り行き、こちらの世界での存在が希薄になり、それでも続けた場合は存在が消滅する。
その初期症状がこの薄くなった影だ。
直接治療する方法はなく、当面の間次元の異なる力に関わらない事で症状が沈静化する。
「ついになっちゃったか・・・」
「知ってるの?何が起きてるのよ?」
「まぁ、聖女独特の病気、力を使いすぎってだけ・・・」
「つまり、これ以上降臨できないって事でしょ。ざまぁないわ、降臨とか言うズルを散々利用したツケが来たのよ」
「あははは、エリザベス様は容赦ないねぇ」
「だから、もう、降臨するのは止めなさい。探すなら人員出してあげるからさ」
「う、うん、じゃあ連絡用に大聖堂へ降臨だけにする・・・」
「そうそう、素直ね」
私は無力だ───
その日、意識を失う程、深酒した。
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