上 下
24 / 51

20.浮気の現場

しおりを挟む
 風船王子から夜会への参加を催促され、予定通り代理エリアナを立てたけど、あっさりと承諾された。
 そして今、エリアナは風船王子のエスコートの元、会場に入る所だ。

 馬車の中でも、風船王子の会話は止まらず、アリアナがどれだけ素晴らしいかを語り続けた。
 内容は兎も角、完全に別人だと思われている事に安心をしていた。
 適当な相槌だけしかできない会話。
 彼は何が楽しいのだろうかと思う。

 会場では、私は隅っこで座っているので、自由にしてくださいと告げた。
 付け加えて、この場で見た事は妹には内緒にしておくとも言ってみた。
 それで、どうするのか見ものですね。

 しばらくすると、私の前に踊りの誘いが列をなした。
 聖女アリアナ目的であって、私にはこれっぽちも興味がないのは分かり切っている。
 それぞれがそれぞれで必死なのでしょ。

 全員断りして、ワインを傾けながら遠くの風船王子を眺める。
 彼は一向に誰とも踊ろうとしない。
 別に踊るくらいなら浮気じゃないんだから、やってもいいハズ。
 その後、どこかに行ったりキスしたりさえしなければいいんです。

 違った。
 ぶっちゃけて言えば、してもらった方が良いです。

 所が、彼は色々な人達と話をした後、私の元に来た。
 そして真横に座ると愚痴を溢した。

「いやあ、挨拶ばかりで疲れるよ」
「そうですよね、お疲れ様です」
「それよりも、君から話題を振って貰えないか、話をし過ぎて喉を痛めそうだ」
「はぁ、どのような話をしたらいいのでしょう?」
「そうだな、先日の戦の話はどうだ。あれの経緯は良く知らないのだが、どうしてあの様になったのだ?」
「さぁ・・・私にも分からない事はありますので」

 あんたの婚約者が寝取られてたせいだとか言えないですよ・・・。
 この事は妹には直接聞けないでいた。
 もし妹の方が本気で侯爵を好きになっていたのならと考えると腫物に触る様なものだから。
 早く元に戻ればいいのに、そしてら改めて聞く事も出来るかもしれない。
 でも、聞いたところで正直には答えてくれないでしょうね。
 面倒だなぁ・・・。

「じゃあ、一族皆殺しにしたのってどう思う?」
「あれはやり過ぎだと思います、陛下や王妃様はどうして何も言わないのでしょうか。特に王妃様は保守派ですよね」
「母上は・・・中立だな、何処にも肩入れする気は無いらしい」
「そうだったのですか、その・・・殿下はどちら側なのでしょう」
「俺もそうだ、片方に肩入れするような事をすれば敵ばかりになってしまう。そうなれば二の舞だ。とはいえ、サザーランド公爵令嬢と婚約している以上、多少なりと改革派と見られるのだろうな」

 武力で押す改革派に、魔女を使って呪う保守派。
 どっちもどっちだと思う。
 いっそどっちも滅びればいいのに──。

 ズキッ

 痛い──

 ズキッズキッ

 痛い────

 何、この、異常なまでの痛みは、頭が、痛い。
 病気にでもなったのかな。

「おい、大丈夫か、エリアナ、エリアナ!」
「大丈夫、ちょっと頭が痛いだけ」
「待ってろ、部屋を借りて来てやる、ノーズ子爵は・・・居たっ」


 □□ □ □ □□

 気が付くと見知らぬ部屋で、大きなベッドに横たわっていた。
 横には風船王子が椅子に座って居眠りをしている。
 頭痛がしなくなっている事を確認して起き上がると、それにつられてか風船王子が目を覚ました。

「起こしてしまいましたか、夜会は参加しなくてよかったのですか」
「あぁ、問題ない、パートナーが急病の時に放り出していくような神経はしてないさ」
「そうですか」

 以前からの印象とは大分違う、紳士的な所を見て少し見直した。
 これなら、妹も結婚して幸せになれるかもしれない。

「思ったんだけどさ・・・」
「はい」
「エリアナ、俺の側室に入らないか、俺、大事にするからさ、エリアナもアリアナも!」
「・・・」
「思ったんだ、これだけ姿が似ているなら、同じくらい愛せるなって、な?悪くない考えだろ?」
「・・・・・・・」
「いやぁ、母上はエリアナは止めた方がいいって言ってたんだけどさ、やっぱり双子を引き離すって酷じゃん?好みも似てるなら、きっと俺の事好きになってるだろう?だから、いまから朝までヤ───」

 ぱぁあんっ

 我慢できず平手打ちを入れてしまった。

 こればかりは本当にダメだ。
 私を馬鹿にし過ぎだ。

「私は貴方と関係を持つつもりはありません!少しでも見直してた私が馬鹿でした、さようなら!」
「あああ、ごめんごめんごめん、いかないで、あ、アリアナには内緒にしてくれよ、頼んだよっ、おーい」

 まさか、浮気相手が私になってしまうとは思いもよらなかった。
 最低、ホント最低!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【完結】魅了が解けたあと。

恋愛
国を魔物から救った英雄。 元平民だった彼は、聖女の王女とその仲間と共に国を、民を守った。 その後、苦楽を共にした英雄と聖女は共に惹かれあい真実の愛を紡ぐ。 あれから何十年___。 仲睦まじくおしどり夫婦と言われていたが、 とうとう聖女が病で倒れてしまう。 そんな彼女をいつまも隣で支え最後まで手を握り続けた英雄。 彼女が永遠の眠りへとついた時、彼は叫声と共に表情を無くした。 それは彼女を亡くした虚しさからだったのか、それとも・・・・・ ※すべての物語が都合よく魅了が暴かれるとは限らない。そんなお話。 ______________________ 少し回りくどいかも。 でも私には必要な回りくどさなので最後までお付き合い頂けると嬉しいです。

城内別居中の国王夫妻の話

小野
恋愛
タイトル通りです。

伯爵令嬢のユリアは時間停止の魔法で凌辱される。【完結】

ちゃむにい
恋愛
その時ユリアは、ただ教室で座っていただけのはずだった。 「……っ!!?」 気がついた時には制服の着衣は乱れ、股から白い粘液がこぼれ落ち、体の奥に鈍く感じる違和感があった。 ※ムーンライトノベルズにも投稿しています。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

あなたの剣になりたい

四季
恋愛
——思えば、それがすべての始まりだった。 親や使用人らと退屈ながら穏やかな日々を送っていた令嬢、エアリ・フィールド。 彼女はある夜、買い物を終え村へ帰る途中の森で、気を失っている見知らぬ少年リゴールと出会う。 だが、その時エアリはまだ知らない。 彼との邂逅が、己の人生に大きな変化をもたらすということを——。 美しかったホワイトスター。 憎しみに満ちるブラックスター。 そして、穏やかで平凡な地上界。 近くて遠い三つの世界。これは、そこに生きる人々の物語。 著作者:四季 無断転載は固く禁じます。 ※2019.2.10~2019.9.22 に執筆したものです。

完結 R18 媚薬を飲んだ好きな人に名前も告げずに性的に介抱して処女を捧げて逃げたら、権力使って見つけられ甘やかされて迫ってくる

シェルビビ
恋愛
 ランキング32位ありがとうございます!!!  遠くから王国騎士団を見ていた平民サラは、第3騎士団のユリウス・バルナムに伯爵令息に惚れていた。平民が騎士団に近づくことも近づく機会もないので話したことがない。  ある日帰り道で倒れているユリウスを助けたサラは、ユリウスを彼の屋敷に連れて行くと自室に連れて行かれてセックスをする。  ユリウスが目覚める前に使用人に事情を話して、屋敷の裏口から出て行ってなかったことに彼女はした。  この日で全てが終わるはずなのだが、ユリウスの様子が何故かおかしい。 「やっと見つけた、俺の女神」  隠れながら生活しているのに何故か見つかって迫られる。  サラはどうやらユリウスを幸福にしているらしい

初めての相手が陛下で良かった

ウサギテイマーTK
恋愛
第二王子から婚約破棄された侯爵令嬢アリミアは、王子の新しい婚約者付の女官として出仕することを命令される。新しい婚約者はアリミアの義妹。それどころか、第二王子と義妹の初夜を見届けるお役をも仰せつかる。それはアリミアをはめる罠でもあった。媚薬を盛られたアリミアは、熱くなった体を持て余す。そんなアリミアを助けたのは、彼女の初恋の相手、現国王であった。アリミアは陛下に懇願する。自分を抱いて欲しいと。 ※ダラダラエッチシーンが続きます。苦手な方は無理なさらずに。

処理中です...