上 下
16 / 51

14.罠を張る

しおりを挟む
「お父様!一つ教えてください」
「なんだ、言ってみろ」
「王妃様からのお茶会のお誘い、誰かに教えました?」
「いや、アリアナには一言言ったがそれだけだ、何かあったのか?」
「王妃様か私を狙った罠がありました、如何にも女性が興味を持ちそうな罠です」
「なんだと!」

 父はガタッと立ち上がり、明らかに動揺していた。

「書状が届いたのはいつですか?」
「私が見たのは、3日前だ。アリアナに話したのもその日だ」
「どうして先に私に言ってくださらないのですか」
「お前は何かにつけて、断ろうとするからだ」
「ぐぬっ、兎に角、先に私に教えてください、絶対行かないなんて言いませんから」

 私は部屋を出る時、ドアが壊れるかと思う程に勢いよく閉めた。
 いっそ壊れればいいのに!って思いながら閉めてやった、もう、腹立たしい!

 次にダリアに話を聞いた。

「ウィルバートのここ三日間の外出時間を教えて」
「はぁ、でしたら3日前は深夜に4時間程、2日前は朝方に4時間と言ったところでしょうか」
「また変な時間に・・・」
「それとマーガレットですが、北方の珍しい種の売ってる店を教えて欲しいと3日前に聞かれました」
「え?売ってるの?」
「アイスローズですよね?ええ、北方民の市が立てれば時々出ますね。あれ、保冷剤に便利なんですよ」
「そんな使い方があったのね」

 あれ?だとしたら、わりと一般的に流通している?
 誰でも犯行可能って事?
 でも、このタイミングで買うのはあからさま過ぎる。
 もう、現行犯で押さえるしかないね。

「ダリア、罠を張るわ」
「罠、ですか、ターゲットは・・・」
「ウィルバートよ」

 私の推理では、妹の目的は“アリアナ”の死。
 しかも目撃者が必要で、それは身内や平民ではなく複数の貴族である事、または王妃様でもいい。
 恐らく、ジェイミー様でも良いのでしょう。
 動機こそわからないけど、そうする事でウィルバートの心に平穏が訪れるのでしょう。

 だったら、こちらから仕掛けを見抜くまでです。
 次の招待状が来た時が勝負です!


 二日後──

「あー・・・エリアナ、アリアナ宛に招待状が来ているぞ、今度はブキャラン侯爵だ」
「ふふん、待っていました」
「ついに淑女として目覚めたか・・・お父さんは嬉しいぞ・・・」

 そんな事無いですけどね。
 夜会は3日後。
 それまでの間、マーガレットとウィルバートの動向を監視する事になった。
 そして思った通り、マーガレットが闇市の方に向かって行った。

 それを私とレッドで尾行した。
 私はいつもの様に男装している。
 ちゃんとバレない様に付け髭もつけたわ。
 これで罠を仕掛けるのであれば、現行犯で取り押さえて・・・。
 取り押さえてどうするの・・・?

「アリアナ様、どうされました」
「いえ、ほら、マーガレットを尾行して、私は彼女が寄った店で何を買ったか確認しておくから」
「承知しました」

 そうして、店主に話を聞くと、とある葉を粉末にした物を購入していると教えてくれた。
 勿論、化合方法によっては毒物になる物。
 つまり、今回は毒殺と言う事です。

 他にも手を打って来ないか注意して監視した。
 買った物と言えば長めのロープにクワやカマといった農具を買い込んだ。
 きっとこれはカモフラージュなのでしょう。

 私は対処方として、毒物に対する解毒剤を用意した。
 それは事前に飲む事が出来ない為、持ち歩く事になった。

 ブキャラン侯爵とは少しだけ面識があった。
 遊び好きで珍しい物好き、私の発明品を面白いと言って金を積んできた事もあった。
 彼は少しばかり黒い噂も付いて回っていて、今回のパーティもその関係の可能性が高い。

 表向きは仮面舞踏会という形をとった、パートナー交換会と言う噂。
 そこで何をしているのかは察する事は容易だ。
 妹も出ていた事から、それは一夜の夢の語らいでもしているのでしょう。

 ダリアの助言により、体のラインが出るドレスが良いと言う助言に従った。
 防御力的に心もとない、まるで風俗嬢にでもなった気分。
 目元を隠すマスクに扇子を用意していざ出陣。

 公爵家の馬車で移動する。
 同行者はレッドを連れて行った。
 仮面舞踏会ですから、私の招待状があれば、付き添いを一人連れて入れる。
 今回、解毒剤は粉末状にしてあり、持ち物に含めてある。
 レッドには私が解毒役を飲めない状態に陥った時の対処法を教えておいた。
 備えは万全です。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冷酷無比な国王陛下に愛されすぎっ! 絶倫すぎっ! ピンチかもしれませんっ!

仙崎ひとみ
恋愛
子爵家のひとり娘ソレイユは、三年前悪漢に襲われて以降、男性から劣情の目で見られないようにと、女らしいことを一切排除する生活を送ってきた。 18歳になったある日。デビュタントパーティに出るよう命じられる。 噂では、冷酷無悲な独裁王と称されるエルネスト国王が、結婚相手を探しているとか。 「はあ? 結婚相手? 冗談じゃない、お断り」 しかし両親に頼み込まれ、ソレイユはしぶしぶ出席する。 途中抜け出して城庭で休んでいると、酔った男に絡まれてしまった。 危機一髪のところを助けてくれたのが、何かと噂の国王エルネスト。 エルネストはソレイユを気に入り、なんとかベッドに引きずりこもうと企む。 そんなとき、三年前ソレイユを助けてくれた救世主に似た男性が現れる。 エルネストの弟、ジェレミーだ。 ジェレミーは思いやりがあり、とても優しくて、紳士の鏡みたいに高潔な男性。 心はジェレミーに引っ張られていくが、身体はエルネストが虎視眈々と狙っていて――――

慰み者の姫は新皇帝に溺愛される

苺野 あん
恋愛
小国の王女フォセットは、貢物として帝国の皇帝に差し出された。 皇帝は齢六十の老人で、十八歳になったばかりのフォセットは慰み者として弄ばれるはずだった。 ところが呼ばれた寝室にいたのは若き新皇帝で、フォセットは花嫁として迎えられることになる。 早速、二人の初夜が始まった。

大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました

扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!? *こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。 ―― ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。 そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。 その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。 結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。 が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。 彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。 しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。 どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。 そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。 ――もしかして、これは嫌がらせ? メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。 「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」 どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……? *WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。

美貌の騎士団長は逃げ出した妻を甘い執愛で絡め取る

束原ミヤコ
恋愛
旧題:夫の邪魔になりたくないと家から逃げたら連れ戻されてひたすら愛されるようになりました ラティス・オルゲンシュタットは、王国の七番目の姫である。 幻獣種の血が流れている幻獣人である、王国騎士団団長シアン・ウェルゼリアに、王を守った褒章として十五で嫁ぎ、三年。 シアンは隣国との戦争に出かけてしまい、嫁いでから話すこともなければ初夜もまだだった。 そんなある日、シアンの恋人という女性があらわれる。 ラティスが邪魔で、シアンは家に戻らない。シアンはずっとその女性の家にいるらしい。 そう告げられて、ラティスは家を出ることにした。 邪魔なのなら、いなくなろうと思った。 そんなラティスを追いかけ捕まえて、シアンは家に連れ戻す。 そして、二度と逃げないようにと、監禁して調教をはじめた。 無知な姫を全力で可愛がる差別種半人外の騎士団長の話。

【R18】国王陛下はずっとご執心です〜我慢して何も得られないのなら、どんな手を使ってでも愛する人を手に入れよう〜

まさかの
恋愛
濃厚な甘々えっちシーンばかりですので閲覧注意してください! 題名の☆マークがえっちシーンありです。 王位を内乱勝ち取った国王ジルダールは護衛騎士のクラリスのことを愛していた。 しかし彼女はその気持ちに気付きながらも、自分にはその資格が無いとジルダールの愛を拒み続ける。 肌を重ねても去ってしまう彼女の居ない日々を過ごしていたが、実の兄のクーデターによって命の危険に晒される。 彼はやっと理解した。 我慢した先に何もないことを。 ジルダールは彼女の愛を手に入れるために我慢しないことにした。 小説家になろう、アルファポリスで投稿しています。

王女、騎士と結婚させられイかされまくる

ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。 性描写激しめですが、甘々の溺愛です。 ※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。

彼女が望むなら

mios
恋愛
公爵令嬢と王太子殿下の婚約は円満に解消された。揉めるかと思っていた男爵令嬢リリスは、拍子抜けした。男爵令嬢という身分でも、王妃になれるなんて、予定とは違うが高位貴族は皆好意的だし、王太子殿下の元婚約者も応援してくれている。 リリスは王太子妃教育を受ける為、王妃と会い、そこで常に身につけるようにと、ある首飾りを渡される。

腹黒王子は、食べ頃を待っている

月密
恋愛
侯爵令嬢のアリシア・ヴェルネがまだ五歳の時、自国の王太子であるリーンハルトと出会った。そしてその僅か一秒後ーー彼から跪かれ結婚を申し込まれる。幼いアリシアは思わず頷いてしまい、それから十三年間彼からの溺愛ならぬ執愛が止まらない。「ハンカチを拾って頂いただけなんです!」それなのに浮気だと言われてしまいーー「悪い子にはお仕置きをしないとね」また今日も彼から淫らなお仕置きをされてーー……。

処理中です...