12 / 51
10.出会い
しおりを挟む
お父様に止められた調査を私は続けていた。
妹の男体化の手がかりを見つけるには、とある書物が足りない。
そんな場合はどうするか。
市井に買いに行けばいいのですよ。
眼鏡装着よーし!変装よーし!外套よーし!
いざ行かん、本屋へ!
勿論、一人で行くような不用心はせず、私のお付きのボディーガードのレッドがついて来る。
彼は市井に溶け込めるほど平凡な顔立ちなのに、いざ格闘となると一流の腕利き。
まぁ、騎士団の団長ですからね。
本気を出すときはオールバックにするらしく、たまにしか見れないのですがその時は中々女子受けする顔立ちなのです。
今回みたいに市井に出る場合、ちゃんと平民の服装を用意するあたり頭も回る様です。
「レッド、今回もよろしくね」
レッドは私がエリアナでアリアナの成り代わりをしている事を説明してあります。
先日の事件から、不義を働くとは到底思えませんからね。
「はい、お嬢様は必ず守り通して見せます」
私達の住んでいるのは王都の中でも貴族ばかりが集まる東区域。
書店が多く並ぶのは中央区、そこに向かうのには公爵家の馬車を利用する。
そうしてたどり着くのは中央区の端っこ。
公爵家の家紋が入った馬車となると目立つので、目立たない広い場所に置いてく感じです。
後は辻馬車か徒歩で移動となる。
大体は行は徒歩で色んな店を立ち寄りながら、帰りは荷物が多いので辻馬車といった具合。
本屋と言っても、露店で本を並べてるだけの店もあれば、建物の一階をまるまる本屋としてる店、3階建て全てが一つの本屋、大きな建物の中に複数の本屋が入ってるなんてケースもある。
掘り出し物の本なんて有れば最高なんだけど、その日によって当たりはずれはあるものですね。
12件目の時点で6冊の興味深い本を入手し、露店タイプの13件目の品ぞろえを眺めている所、探していた本が出て来た。
それは『現役魔女年鑑 王国歴292年度版』、おおよそありとあらゆる魔女が乗ってる年鑑で、今回の性別を変える呪いを得意とした魔女を探すなら、必須と思われる本。
今は299年なので7年前の物ですが、魔女が早々増える訳でもないので、問題はないでしょう。
「おじさん、これください」
「おやじ、これをくれ」
同じ本を指差しているのは外套を着てフードを深く被る成人男性。
お互いに、それなりに怪しい恰好なのは間違いない。
つまりはお互いに目立ちたくないという事情がある訳ですね。
「こまったな、これ一冊しかないんだよ」
「俺はこれが無いと困るんだ、同額を貴女にも払うから譲ってくれないか」
「困りましたね、私も必要としているのですよ、勿論、趣味などではありません」
相手の男性は、ため息をついて呆れる様に言葉を投げ捨てた。
「はー、こういう時、淑女ならば男性に譲るものなのだがな」
「あら、レディーファーストの精神を存じない紳士が居るとは思いませんでした」
「はは、言うじゃないか」
「当然の事を言ったまでです」
そんな言い争いが始まるかもしれない空気を察してか、レッドが助言をした。
「お嬢様であれば、必要な情報は2、3日で読み切れるのではないでしょうか。ならば4日後に譲る約束をするのはどうでしょう」
「流石、レッドね。いいアイデア」
改めて男性に向かって、その提案をする。
お代はこちらで支払い、数日後に公爵家まで受け取りに来て欲しいと伝えた。
「ザザーランド公爵・・・もしかしてエリアナか」
「私の事を存じて──」
「お嬢様、お下がりください!」
レッドが二人の間に割り込んで警戒を強める。
私の事を知っていると言う事は、その魔女年鑑を使って何かする可能性があると考えたみたい。
「レッド!落ち着いて!話が先よ」
「すまない、そちらが警戒するのも無理はない」
男性は武器を持っていない事をアピールしながら少し距離を取っていた。
その時、風によってフードがめくれる。
その姿に見覚えがあると思えば、風船王子にどこから似ていた。
「条件はそれでいいが、そちらに行く訳にはいかない。4日後に、ここの近くの茶店で落ち合うのはどうだろうか」
「ええ、そちらがそれでいいのでしたら」
「あーよかった。喧嘩が始まるかと思っちまったよぉ」
こうして欲しかった物が手に入った訳ですが、あの男性が私の名前を知っている理由が気になったせいでそれ以降はあまり店を周る気にならなかったのです。
どこかで見た事あるのですよねぇ・・・。
妹の男体化の手がかりを見つけるには、とある書物が足りない。
そんな場合はどうするか。
市井に買いに行けばいいのですよ。
眼鏡装着よーし!変装よーし!外套よーし!
いざ行かん、本屋へ!
勿論、一人で行くような不用心はせず、私のお付きのボディーガードのレッドがついて来る。
彼は市井に溶け込めるほど平凡な顔立ちなのに、いざ格闘となると一流の腕利き。
まぁ、騎士団の団長ですからね。
本気を出すときはオールバックにするらしく、たまにしか見れないのですがその時は中々女子受けする顔立ちなのです。
今回みたいに市井に出る場合、ちゃんと平民の服装を用意するあたり頭も回る様です。
「レッド、今回もよろしくね」
レッドは私がエリアナでアリアナの成り代わりをしている事を説明してあります。
先日の事件から、不義を働くとは到底思えませんからね。
「はい、お嬢様は必ず守り通して見せます」
私達の住んでいるのは王都の中でも貴族ばかりが集まる東区域。
書店が多く並ぶのは中央区、そこに向かうのには公爵家の馬車を利用する。
そうしてたどり着くのは中央区の端っこ。
公爵家の家紋が入った馬車となると目立つので、目立たない広い場所に置いてく感じです。
後は辻馬車か徒歩で移動となる。
大体は行は徒歩で色んな店を立ち寄りながら、帰りは荷物が多いので辻馬車といった具合。
本屋と言っても、露店で本を並べてるだけの店もあれば、建物の一階をまるまる本屋としてる店、3階建て全てが一つの本屋、大きな建物の中に複数の本屋が入ってるなんてケースもある。
掘り出し物の本なんて有れば最高なんだけど、その日によって当たりはずれはあるものですね。
12件目の時点で6冊の興味深い本を入手し、露店タイプの13件目の品ぞろえを眺めている所、探していた本が出て来た。
それは『現役魔女年鑑 王国歴292年度版』、おおよそありとあらゆる魔女が乗ってる年鑑で、今回の性別を変える呪いを得意とした魔女を探すなら、必須と思われる本。
今は299年なので7年前の物ですが、魔女が早々増える訳でもないので、問題はないでしょう。
「おじさん、これください」
「おやじ、これをくれ」
同じ本を指差しているのは外套を着てフードを深く被る成人男性。
お互いに、それなりに怪しい恰好なのは間違いない。
つまりはお互いに目立ちたくないという事情がある訳ですね。
「こまったな、これ一冊しかないんだよ」
「俺はこれが無いと困るんだ、同額を貴女にも払うから譲ってくれないか」
「困りましたね、私も必要としているのですよ、勿論、趣味などではありません」
相手の男性は、ため息をついて呆れる様に言葉を投げ捨てた。
「はー、こういう時、淑女ならば男性に譲るものなのだがな」
「あら、レディーファーストの精神を存じない紳士が居るとは思いませんでした」
「はは、言うじゃないか」
「当然の事を言ったまでです」
そんな言い争いが始まるかもしれない空気を察してか、レッドが助言をした。
「お嬢様であれば、必要な情報は2、3日で読み切れるのではないでしょうか。ならば4日後に譲る約束をするのはどうでしょう」
「流石、レッドね。いいアイデア」
改めて男性に向かって、その提案をする。
お代はこちらで支払い、数日後に公爵家まで受け取りに来て欲しいと伝えた。
「ザザーランド公爵・・・もしかしてエリアナか」
「私の事を存じて──」
「お嬢様、お下がりください!」
レッドが二人の間に割り込んで警戒を強める。
私の事を知っていると言う事は、その魔女年鑑を使って何かする可能性があると考えたみたい。
「レッド!落ち着いて!話が先よ」
「すまない、そちらが警戒するのも無理はない」
男性は武器を持っていない事をアピールしながら少し距離を取っていた。
その時、風によってフードがめくれる。
その姿に見覚えがあると思えば、風船王子にどこから似ていた。
「条件はそれでいいが、そちらに行く訳にはいかない。4日後に、ここの近くの茶店で落ち合うのはどうだろうか」
「ええ、そちらがそれでいいのでしたら」
「あーよかった。喧嘩が始まるかと思っちまったよぉ」
こうして欲しかった物が手に入った訳ですが、あの男性が私の名前を知っている理由が気になったせいでそれ以降はあまり店を周る気にならなかったのです。
どこかで見た事あるのですよねぇ・・・。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】魅了が解けたあと。
乙
恋愛
国を魔物から救った英雄。
元平民だった彼は、聖女の王女とその仲間と共に国を、民を守った。
その後、苦楽を共にした英雄と聖女は共に惹かれあい真実の愛を紡ぐ。
あれから何十年___。
仲睦まじくおしどり夫婦と言われていたが、
とうとう聖女が病で倒れてしまう。
そんな彼女をいつまも隣で支え最後まで手を握り続けた英雄。
彼女が永遠の眠りへとついた時、彼は叫声と共に表情を無くした。
それは彼女を亡くした虚しさからだったのか、それとも・・・・・
※すべての物語が都合よく魅了が暴かれるとは限らない。そんなお話。
______________________
少し回りくどいかも。
でも私には必要な回りくどさなので最後までお付き合い頂けると嬉しいです。
伯爵令嬢のユリアは時間停止の魔法で凌辱される。【完結】
ちゃむにい
恋愛
その時ユリアは、ただ教室で座っていただけのはずだった。
「……っ!!?」
気がついた時には制服の着衣は乱れ、股から白い粘液がこぼれ落ち、体の奥に鈍く感じる違和感があった。
※ムーンライトノベルズにも投稿しています。
離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。
しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。
私たち夫婦には娘が1人。
愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。
だけど娘が選んだのは夫の方だった。
失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。
事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。
再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。
初めての相手が陛下で良かった
ウサギテイマーTK
恋愛
第二王子から婚約破棄された侯爵令嬢アリミアは、王子の新しい婚約者付の女官として出仕することを命令される。新しい婚約者はアリミアの義妹。それどころか、第二王子と義妹の初夜を見届けるお役をも仰せつかる。それはアリミアをはめる罠でもあった。媚薬を盛られたアリミアは、熱くなった体を持て余す。そんなアリミアを助けたのは、彼女の初恋の相手、現国王であった。アリミアは陛下に懇願する。自分を抱いて欲しいと。
※ダラダラエッチシーンが続きます。苦手な方は無理なさらずに。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
今度こそ君に返信を~愛妻の置手紙は離縁状~
cyaru
恋愛
辺鄙な田舎にある食堂と宿屋で働くサンドラ。
そこに子爵一家がお客様としてやって来た。
「パンジーじゃないか!?」叫ぶ子爵一家。
彼らはサンドラ、もといパンジーの両親であり、実妹(カトレア)であり、元婚約者(アラン)だった。
婚約者であるアランをカトレアに奪われたパンジー。婚約者を入れ替えれば良いと安易な案を出す父のルド子爵。それぞれの家の体面と存続を考えて最善の策と家を出る事に決めたパンジーだったが、何故がカトレアの婚約者だったクレマンの家、ユゴース侯爵家はパンジーで良いと言う。
ユゴース家のクレマンは、カトレアに一目惚れをして婚約を申し込んできた男。どうなんだろうと思いつつも当主同士の署名があれば成立する結婚。
結婚はしたものの、肝心の夫であるクレマンが戦地から戻らない。本人だけでなく手紙の返事も届かない。そして戦が終わったと王都が歓喜に溢れる中、パンジーはキレた。
名前を捨て、テーブルに【離縁状】そして短文の置手紙を残し、ユゴース侯爵家を出て行ってしまったのだった。
遅きに失した感は否めないクレマンは軍の職を辞してパンジーを探す旅に出た。
そして再会する2人だったが・・・パンジーは一言「あなた、誰?」
そう。サンドラもといパンジーは記憶喪失?いやいや・・・そもそもクレマンに会った事がない??
そこから関係の再構築を試みるクレマン。果たして夫婦として元鞘になるのか?!
★例の如く恐ろしく省略しております。
★タイトルに◆マークは過去です。
★話の内容が合わない場合は【ブラウザバック】若しくは【そっ閉じ】お願いします。
★10月13日投稿開始、完結は10月15日です。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションでご都合主義な異世界を舞台にした創作話です。登場人物、場所全て架空であり、時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる