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最終章:知識の街
282話
しおりを挟む最近の俺は気の赴くままの夢にまで見たスローライフに没頭できていることに不安を感じ始めていた。
「はっ!? 何かとてつもなく嫌な予感がするぞ!?
俺の人生でこんなにも平穏無事な日々が続くなんて大きな不幸の前兆なんでは?」
そんな時、後ろからスッパーンといういい音を立ててハリセンで叩かれた。
「痛ァ!? ってソウちゃんかよ!? 久しぶりだな? 一瞬誰か忘れてる人も沢山居るぜ?」
『君の前世の波乱万丈さには同情するけどさ。
ケビンそろそろ君は次代に任せるということを覚えないとダメだと思うんだけど?』
俺はそのことについて考えていたことが実はあった。
「言われなくても分かってるさ。衣食住の中でも特に睡眠の質を上げてやれば
次の日のパフォーマンス能力も上がるから力を入れていただけだよ。
それに寒暖房については召喚者達が文化を伝えるだろうからな?
そろそろ海側の土地を回るべきだと俺も思っていたりするから
今の工場の引き継ぎと新クロス領の建設に目処が立ったらひっそりと旅に出ようと思ったりしてる。
そこ辺はきちんと理解してるさ」
その言葉にソウちゃんの顔が驚きを見せる。
その表情だけで安穏な旅が期待できないんだけれど……
『ふーんまぁ良イんじゃない? タのしければスローライフここに極めたりだねっ!』
所々声が裏返るなんてなんて器用な神なんだ……あっ……創造神だったわ。
ジト目で見られても知るかよ。
『それにしても機械化産業の基礎的分野のカラクリだけ教えてその先は教えないんだね?』
その言葉に俺は笑ってしまった。
「何言ってんのさ? ソウちゃんは。
魔法なんて独自の文化があるんだ本来なら魔法陣や刻印魔法文字の分野が広まればスタイリッシュな箱型魔道具だって作れるんだぜ?
超高級品になるけどな?」
刻印魔法文字とは魔法金属や高位魔物の魔石に魔法文字を刻印することによって魔法陣を簡略化した物だが……
1部の国の錬金術師や魔道具職人によって秘匿技術として扱われている。
あちらも既に俺が魔法陣自体を書けるとわかっている為に余り刻印魔法文字の存在を出さないでくれと
ギルド本部に掛け合いがあったらしいが知らない。
奴らは自分達の知的好奇心の欲求解消と快適な生活しか興味がないっぽい癖に技術は独占したいらしい。
今は配慮して魔法陣を隠れ蓑にしたブラックボックス部品として使っている。
刻印魔法文字は技術の結晶だが、余り学ぶ者を増やさない理由があった。
それは兵器流用が簡単にできる点だ。
「それに化学や機械化を教え過ぎて武器の分野が開発が進めば欲深い連中の業が必ず問題を起こすよ」
その言葉にソウちゃんは目を瞑って考えていた。
「それに魔法は行使しても魔力から魔素に変わり空気には一切被害が出ないけど
俺達化学を学んだ奴らは違う、空気中の酸素を使っている。
今はその人が少ないけれど多くなれば環境破壊に繋がってしまう。
それだけは避けたかったんだよ、それに意外と魔物の方は自然のルールに従っているから酸素の様な燃焼を使っているからな」
トカゲ型魔物には油袋を持っていて牙で火花を散らし魔法では無く魔物の生態自体のスキルの様な火炎放射を使う種類も居るのだ。
マグマゴーレムの様な常に燃えている魔法生物達は
熱に干渉しても空気には干渉してないのに森で自然と身につけた技の場合自然のルールに従ってる奴らの方が多いのは不思議だよ。
「それと最近特にシャロやセラの視線の色が変わり始めている。
腐の感情を纏い始めていると言ったら良いのかは分からんがな」
その瞬間、ソウちゃんの肩が一瞬跳ねたのを俺は見逃さない。
『どどとど、どうしたんだい? ケビン? なんでそんなに力の限り肩を掴むのかな?』
「何か知ってるんだろ? 出せ!!」
※立派な脅迫です。良い子はマネしないでね。
◇
2分後、ソウちゃんは諦めて複数冊のうっすい本を出して来た。
中身を閲覧しなくても奴らが誕生してしまったことは理解出来るけど中身を見てみる。
「ぎゃあああ!?? 腐女子や腐男子が生まれてふぇぇ??
それにいつの間にかエロ漫画までこの世界に持ち込まれてるじゃねぇか!!」
この世界のむっつりさん達は娼館に行く勇気が無くてこっそり処理が基本だけれどこんな物がばらまかれたら……
そして裏面を見ると俺は口をあんぐりと開けてしまった。
しっかりと写本禁止の横に商業ギルド認定のマークと最後のページには
『この本の内容は保証契約によって保護されています』と明記されていた。
『いやぁ、ここ最近姿を見せれなかったのは芸術の神がこの世界は未だに居なくてねぇ?
はっはっは! 選別をしていたんだよ。
まぁこのまま行ったらエロの神だけれどね。
まぁた運命神は凄い文化をぶち込んで来たもんだよ』
俺はプルプル震えながら……言葉を発する。
「普及率は……?」
『版画印刷が無いからねぇ? ケビンが協力すればもっと早くなるんじゃない?』
「それはダメだろ? こいつを作った奴が努力するか? それとも発展させなきゃ意味が無い。
それに……俺が既に何もしてないわけないだろ?」
『へ?』
俺はマジックボックスからとある箱を取り出す。
『マジか……タイプライターを作ったということは既に活版印刷の機械化済んでたりするの?』
俺はニヤリと笑みを浮かべて頷くも一つだけ問題があった。
「問題があるとしたらインクと紙の方かな?
刷る方に問題は無くても結局吸着の良くない紙にした所で意味が無いからな」
『良かったよ……こんなに文明が進んだら情報操作が簡単になって大変なことに……ん? 』
ソウちゃんは俺が試しに作った印刷物を目にする。
それを見て固まっていた。
『へぇ……神の正式な相互関係図ね。確かにこの世界では一神教になってるとこ多いもんね。
そもそも光神と創造神が一緒って言う所もあるからねぇ』
そもそも属性神なんて居ないんだよな……文献を漁ってみると
多分精霊王が使いっ走りにされて顕現した結果神として崇め奉られたパターンだからな。
そんなことを思いつつもそう言えばと試しに作った印刷物を見せる。
それを見てソウちゃんは……
『これは!! 時代が一気に進み過ぎだよ!!』
だって俺が見せたのは教科書もどきだったからだ。
実は自分で論文をまとめたりするのが面倒になって精霊達に書類通りに型を作ってもらい
10冊ずつ印刷してみたりしたやつだ。
「これに保存魔法を付与して学校の蔵書室に隠して置いたりダンジョンの宝箱に入れたりするつもりだよ」
俺、実はダンジョンで結構宝箱自体を回収してたりして
そろそろ使い道も無いのでどこかに捨てるか何かアイテムを入れてダンジョンに隠そうかと思って画策していたのだ。
『はぁ……まぁ君はクロのお気に入りだからできるけどさ?
作者名はタスクにしてるんだね?』
俺は前世の名前を使ったのには訳があったりする。
ケビンなんて付けたら沢山の注文が殺到するからな。
それにずっと前から準備してきた。
俺やタビやセラは空間属性を持っている為に冷蔵庫も冷凍庫も要らないけれど
一般の人達にとってはヨダレもののお宝だ。
態々使い方を書いている説明書着きで入れて置くので多分発見され次第沢山の冒険者が殺到するだろうなんて考えていると
ソウちゃんの横に黒い渦が現れる。
『我が使徒ケビンよ。お前の計画はわかった。
我も楽しみたいので既に出来ている宝箱は各地にランダム配置して
他はダンジョン機構にアイテム自体を確率1%~5%で宝箱から出る様にしておこう。
遅々として進まない瘴気の浄化が捗るならお易い案件だ』
そういうクロにアイテムは接収された。
何故かフルセットをソウちゃん、クロに手渡す羽目になったので他の神が襲来しても嫌なので設計図をアロンダイトにお土産としてクロに手渡した。
ダンジョン機構に登録するってことは作る人が必要だからね。
1ヶ月、図ったかのように新クロス領街の近くの低級ダンジョンにて1冊の本と小型の魔道具が見つかり
各ギルドがお祭り騒ぎとなった。
そして最初の発見者はギルド直属の育成契約を結び手厚い保護を受けたのであった。
これはカインが始めてギルドに街として領主代行として行った政策だった。
多分、俺の時のように若い子が発見した為に問題が起きると踏んで
次に見つける冒険者は身を守る為に隠すと思ったのだろう。
これを機に各地から同じような『タスク作』の魔道具が各地から見つかり始めてダンジョンフィーバーが巻き起こるのであった。
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