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最終章:知識の街
279話
しおりを挟む俺は親父の部下に呼ばれて門まで向かうと3人のおっさんが居た。
「私はウエスタン辺境伯から来ました使者です」
「同じくサウス辺境伯からの使者です」
「私はイースティア辺境伯の使いです」
親父は今更何しに来たという怪訝な表情をあらわにしている。
集まってきている人達も使者と言われても誰も敬う様な態度は取らない。
使者は一応貴族であるけれどここは帝国でも共和国でも無いし
自分達が領地を出るきっかけを作った連中に敬意もくそもないからな。
そして使者3人の顔は厳しい民衆や文官達の表情にオロオロしていた。
文官と親父それとカインとハビスとタビ、何故か部外者の俺とユリアさんが見届け人として参加することになった。
全員が会議室に入ると3人のおっさんがおべっかを並べる。
謝罪は無いし、何故か上から目線なのがアホだけれど。
文官は親父の様子を見て顔色が悪くなってくる。
使者はそれを自分達に有利と取ったのかペラペラと口の回転数が上がる。
そこで俺が手を挙げるとあからさまに嫌な顔をする。
「済まないが見届け人の隣の都市、知識の街のケビンだ。
貴殿ら3人は先程から主筋とは違う話ばかりで意図が読めないので本題に入ってはくれませんかね?」
そう言うと3人は『知識の街』という部分に反応し顔色を変えた。
そして本題に入ったのだが……
要約すると
・3辺境伯はクロス家に賠償金を払う。
・寄子の中でも家格の高い人をクロス家に差し出す。
・キャロリーナとセラリウム相手に入婿させる
・物資を提供しても良いが帝国に戻ることが条件。
・関税や通行税を5年撤廃する。
ここまで聞いて親父がキレた。
「おう、お前ら何様だよ? 帝国に戻るのが条件だぁ?
辺境伯家はいつから皇族の真似事をする様になったんだ?
それはお前らの当主が俺を引き戻さないと当主交代の憂き目にあってるからだろうが!!」
はぁ……親父にすらわかることをネチネチ言わないで欲しいよな。
今更ながら和解策に出たりするにしても最初はまず謝罪しないと誰も納得しないだろうにな。
この人達本当にアホだと思うよ。
なんでわざわざピンポイントに親父の逆鱗に触れてくるかなぁ……
それとニタニタとしながら都市の復興の様子を見てこいつら欲をかいたのがまずミスだな。
そんなもん敗者が勝てるわけないだろうに。
ここは俺も代表者として立っているので援護してやろうっと。
「今現在、知識の街は友好条約に基づきクロス家を全面支持する。
それにギルドもそれを承認している中身の無い会談を行うなら我々は手を引くよ」
そう言うとかなり動揺していた。
そもそもこの3辺境伯達は知識の街にも高圧的な態度で
クロス家の二番煎じをしようとして商業ギルドマスターを激怒させたのだからあまり関わりになりたくないのだ。
「攻めようと思わんでくれよ? こちらもSランククラスの冒険者が複数名とクロス家の騎士団が居るのだからな?」
3人の使者は『Sランク!?』と驚いていたが……タビがそこに被せる。
「知識の街は今現在、エルフ、魔人族、ドワーフ、獣人族、竜人族全ての種族と友好関係にありますから欲を出せば身を滅ぼしますよ?」
そう言うと3人の使者は物資を「差し上げます!!」と言ってそうそうと帰って行ったので俺達がすぐにその物資を調べると
禁製品が出てきまくったのでそれを集めて丁重にお返しした。
こいつら罠に嵌める気マンマンじゃねぇかよ!!
すぐに帝国に苦情を入れる使者を出してこの件は終わった。
しかし、住民の不安を煽る形になってしまったので物資も沢山ある為に炊き出しで盛大に祭りを開くことになった。
「孤児院食堂の本領発揮だぞ!準備は良いか!?」
子供達はウキウキした表情で頷いたので全員で用意をすることにしたのだった。
うどんだけではなく今日はカレーうどんを出す。
一応カレー発祥の地になっているカレーはクロス領の人の口に馴染みかあるからな。
カレーの匂いが漂い始めるとおばちゃん達が手伝うということだったので手伝って貰った。
嫌なことは美味しいものを食べて忘れるのも大事だと俺は思っている。
新たな地で不安を感じてる人も居れば早速仕事が見つかり希望を抱いている人も居るのだからさ!
この日は結局、お酒も出してクロス家が帝国から完全に独立を宣言した日に親父が制定してお祭り騒ぎをした。
◇
翌日、顔色の悪いカインが俺を呼び出した。
「どうしたカイン??」
「密偵を影やお前の仲間が連れてきたんだけどさ。どう処理していいか分からないんだ」
俺はニヤリと笑い檻に入ってる密偵を見る。
どうせ目の前に居るので俺は演技をする。
「んなもん拷問してから所属を聞けばいいんじゃね?
親父がカインに任せたならそれが正解だと思うぜ?
難しいなら影に頼めばやってくれるぜ?」
そういうと帝国最凶と呼ばれていた影の拷問を想像して勝手にブルってる密偵たち。
こういう強かさがカインには必要だな。
「まぁ、そこら辺はハビスと相談しながらするのが1番だと思うぜ?」
そう言って場を離れるのであった。
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