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最終章:知識の街

278話

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 街の下水道の大まかな道は俺や教師が作る。
 俺達が獣王国の都市を作った時は俺の魔力のゴリ押しだった為に
 それを今の生徒達に実践しろとは言えない。

 文官を目指す生徒には下水道の地図の書き出しをして貰う。
 そして課題はどこに出入口を作るか? という宿題が出ていた。

 今も白熱した舌戦が繰り広げられている。

「区画ごとに入口出口作った方が効率的だろ?」

「犯罪者の隠れ場所になったり変な人が住んだり攻めてきたら地下から入り放題じゃない!!」

 正直に言うと、騎士・兵士宿舎と冒険者ギルド(仮)と教会勢力(未定)と
 もう1つは困窮者が集まる場所に公共事業として清掃用の入口を作るべきだと思っている。
 まぁそれに気付くかどうかが点数の分かれ道だね。

 維持管理するのは下っ端連中なのであってどの組織も気にならないだろうからね。

 生徒達は既に下水道や清潔にすることの大事さを授業で習ってる人しか連れてきてないので慎重に壊れない強度にする為に頑張っていた。

 その中でもキャロはやはり異彩を放っていた。
 生徒がかけた土魔法の強度が弱い場所に『ストレングス』の付与魔法をかけた弱い魔物のクズ魔石を埋め込んでいる。

 埋め込むのはセラが空間魔法で飛ばしてるみたいだけど2人の正確な魔法の行使に視察にに来ていた母上達も驚いていた。

 それをクロス領の領民が生暖かい目で見ている。

 丁度親父が来たので隣に転移する。

「親父! 街の広さは足りてるか?」

 そう言うと親父の隣に居たハビスが首を横に振る。

「住宅地は問題ありませんが……農耕地が足りません」

 ふむ、農耕地か……

「それは今ある外壁の中が良いのか? それとも外にもう1つ壁を作る方がいいのか?」

 ここの外壁の高さは10mほどでこの都市が陥落した理由もここにある。
 大都市と呼ばれる外壁は20mあるからな。

「どちらでも構いません。領民は文句は言わないでしょうから」

「そういうことなら今ある外壁を改造するよ
外壁の中は全て荷物出してるよな?」

 ハビスが頷いた。流石に資源回収は終わってるか。
 俺は都市にいる全住民に拡声魔法で音を届ける。

『今から外壁の拡張工事を行う。外壁内部にいる奴は即刻出る様に外壁近くにいる奴は逃げろよ?
 学生は魔法とは柔軟な発想で扱える所を見せるので外壁に注目。
 外壁付近の騎士は避難が終わったら魔法を打ち上げてくれ』

 俺が拡声魔法を使っている間にハビスが影に何か指示をしていたからな。

 10分くらい経つと示し合わせたかのように魔法が上に打ち上がる。

「さーて、やりますか!! 」

 俺は地面に手を置き、空間把握の魔法で外壁全てを知覚する。

「『断岩斬』良し!切れたな『ガイアコントロール』」

 ザンっ、ズンッという音の次にズズズズと地面が鳴り外壁が8つに別れて都市からどんどんと円状に離れていく。

 各外壁の間が離れたのを確認できたら俺は黒子と琥珀を呼ぶ。

『どうしたのー?』『何するのー?』

「わるい、次の魔法に魔力が足りるか微妙なんだ。貸してくれ! それと外壁をこんな感じで作るから『思念伝達』」

 俺は外壁の思念だけではこいつらにうまみの提示が無いのでそれともう1つの案を出すと2人ともニコニコと笑みを浮かべ

『『やるー!! 約束だよ!!』』

 と協力が取れたので俺の肩に手を置いてもらい魔力を貰う。

「最後の仕上げだな! 『ロックオブウォール』『粘土化』『成形』『硬質化』」

 今の外壁ごと飲み込む様に新しい外壁を作り元の外壁を新たに建てた外壁と粘土化させて混ぜんだ後
 イメージ通りに形を整えた後に硬質化する。

 そしてネロに念話を送る。

「ネロ今作った外壁に熱を加えてくれ。破壊はするなよ?」

 そう言うとすぐ近くに居たのか魔法名が聞こえた。

『フレアストーム』

 ファイアストームの上位魔法だな。
 今作った外壁が紫の炎の竜巻で熱されていく。

 住民の被害は俺達が結界を張り凌ぐ、この効果で農耕地予定の場所の焼畑も兼ねている。

 俺が鑑定で見てもそこそこ大雑把にやったのに耐久度Bの評価がついたので魔法を上に打ち上げるとすぐに止まった。

 視線が凄いのでそちらを見ると生徒達も教師もポカーンとしていた。

「土には熱すると硬質化する種類があるから気をつけるように
 それと熱に弱いすぐに流動化してしまう土もあるから知識をつけるように頑張ってくれ」


 そう言うと俺はハビスに提案していた街の一角の土地にくる。

 ここは既に下水道の製造も終わってる地域なので下水道に天井扱いの蓋をする。
 俺が今から作るのは孤児院と知識の街からこちらの街に来た時の滞在出来る家だ。

 そしてふたつの建物の門の前に神獣型になった黒子と琥珀の像を建てる。
 前に神社の様に置いて欲しいと言われていたのを思い出してこちらに作ってみたのだ。

 学校教師の爺さんも興味津々でこちらを見ていたので数回に分けて魔法を行使する。
 鉄筋の配置→土魔法で包み込み柱と基礎の設置。

 そこから柱と柱を土魔法で繋げて行き壁も中身も作っていく。
 そして力技で壁を切り抜いて呼んでいたドワーフ族に木材や金属を渡して窓や内装を作って貰う。

 建物は左から礼拝堂、孤児院、滞在用建物を作り礼拝堂に俺が現在知っている神の像を作っていく
 するとアロンダイトの像が光ると外から雄叫びが上がる。

『うぉぉぉ!? こりゃ何かここ心地良いぞ?
仕事が捗るぜぇぇ!!!』

 アロンダイトからの支援か? それともお祝いとして来たっぽい。

 ここの工程は後は内装だけなので俺は後を頼んで領民が集まる婦人会の元へ向かう。


「坊ちゃん!! 懐かしいねぇ!」

 近所のおばちゃん達に捕まりバンバンと肩を叩かれる。

「おばちゃん達暇だろ? 内職しない?」

 俺は元々作ろうと思っていて忘れていた物に必要な道具を事前にドワーフに作ってもらっていたのでそれを配る。

「こりゃ凄い針だね!!」

 俺はおばちゃん達の目の前に布団の見本と中に入れるスリーピングシープの毛を出す。

「これはスリーピングシープの毛を洗って干した奴なんだ。
 それをこの袋状になってる布にこんな感じで指2本分平らな所で詰めたらこんなふうに縫って欲しい」

 ふはは! これで内職職人ゲットだぜ!!
 知識の街は量より質を取ってる為に大量生産に向いてなかった。
 なので暇で仕事も無い人達に次の仕事を渡したかったのだ。

「ケビン様? これは保証契約なされてるんですか?」

 後ろから声をかけてきたのは商業ギルドの人らしい。
 多分綺麗だから受付かな?

「とっくにしてるよ、必要だったのは大量の作業してくれる人だけだったからね。

 おばちゃん達! この仕事をきっちりしてくれるなら針と布団1組ずつあげるよ!」

 おばちゃん達の目の色が変わった。
 俺も針なら錬金術で作れるんだけれどやはり職人が作った物と比較されると心もとないのだ。

 なので先に超上級鍛冶師のドワーフに作って貰いあの針はそれをまるまるコピーして錬金術で作った物だ。

 それでも金属のグレードを上げたりしないと性能はドワーフ謹製針の方が高かった。

 この街は将来『快眠の街』とか言われると嬉しいんだけどな。
 この綿の代替品として使われるスリーピングシープの毛をベッドマットとして扱ったりもする。

 それはスプリングを作るのが相当難しいので特注として1個試しに作り放置した。
 現在俺の部屋のベッドマットになっている。

 この世界の寝具は平民は布を重ねた物を使うか藁を敷くかのどちらかしかない。
 なので品質の良い眠りを体感して欲しかったのだ。

 それと自分達が作る物がどれだけ良い物かが分かれば誇りになるだろうからな。

 次の日おばちゃん達は血相を変えて従業員として使ってくれと懇願された。
 なのでミカサ商会雇いの親父とハビスに許可を取ってさっさと工場を2つ作った。
 実はかなり前からやろうと思って大量に素材を集めていたので

 毛を洗いゴミを取り乾燥させる工場と布団を作る工場を作ったのだ。

 それから1週間、街が活気づいて来た時に空気の読めない使者が来るのはお決まりなのだろうか……
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