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最終章:知識の街
268話
しおりを挟む俺とセラが街中を歩いていると不意に手を引っ張られる。
「どうした?」
「あれ!」
セラが指をさした所に居たのはアワアワとしてる女の子? だった。
しかも多分お金持ちの女の子で認識阻害がかかってるせいで周りに気付かれてない。
何故かすごく不憫に見えてくるしデジャヴ感もある。
女の子の目の涙を堰き止めてるダムは決壊しそうだな。
俺達はまっすぐその子の所まで歩くと声をかける。
「迷子か?」
セラは頭をなでなでしてやると遂に泣き出した。
「迷子でしゅー……誰も気付いてくれなくて……死んだかと思った……」
oh......それは自業自得だな? 同情はするけどな。
「そりゃそれだけの効果の高い魔道具を使ってたら魔法抵抗値の低い人は君の存在すら感じ取れなかっただろうね?」
「そのとーり、私はセラ。こったはケビン兄あなたは?」
「私の名前はガーネットです!!」
セラと同じくらいなのに2人とも頭良さそうな会話してるなぁ。
それとセラ急に顔が引き攣り始めたけどどうした?
「家の近くまで送ってやるそ? どこだ?」
ガーネットは少し悩んだ後に
「お城!!」
魔道具のローブの効果の高さから高位貴族の令嬢かな? と思っていたがまさかだったな。
それにしてもこの国の貴族や皇族の令嬢は我が妹達も含めてのほほんとしすぎだろ。
帝都の治安は他の都市よりは良いとは言え誘拐が無いわけじゃない。
殆どの貴族は身代金を払って隠しているけどな。
「はぁ、トンボ帰りとはこのことだな」
面倒になったので俺とセラとガーネットで手を繋ぎ屋台で食べ物を
複数買って与えて一瞬で転移で城の目の前に到達する。
門番が驚いていたが、それより驚いていたのは『こいつらさっき帰らなかったか?』という目だったので
「ここがお家の令嬢を街で見かけたので連れてきた」
ガーネットのローブのフードを取ると門番はギョッとしてダッシュで城の中に入って行く。
事情を説明していると近衛騎士が5人飛んできた。
女性騎士達なのでこれでこの子は城に住む高位貴族の子供では無く
皇女殿下確定だわ……何してんの? しかもこれで俺は2回目だぞ……
「ケビン殿……助かった。ガーネット殿下!!
外に行かれる時は私達の誰か2人は連れて行ってくださいと言っているではないですか!?」
俺はガーネット殿下に先程買った屋台の食い物を渡して大人しくさせている最中にローブにかかっている隠蔽の魔法をトレースする。
そしてそれを無効化出来る魔法陣を腕輪を錬金術で作り魔法陣を付与する。
「騎士さんこれ使ってみて? ガーネット殿下はフード被ってみ?」
ガーネット殿下はフードを被ると腕輪をつけた近衛騎士の女性は驚く。
「殿下が普通に見える!! ありがとうございます。お礼は……」
「あー……クロス伯爵家に渡しておいてください。陛下にそう伝えれば勝手にしてくれますので
この技術を真似される訳にはいかないので魔道具の根幹の部分は別の金属で覆っているのでコピーは出来ないです」
まぁ鋳型を作れば出来るけどそこまで俺は優しくないし魔法陣も付与したり効果を決定する時に魔力の通り道をしっかりとつけないといけないことは
誰にも言ってないので誰か頑張って気付け。
俺達はガーネット殿下を送り届けて先程まで居た場所に転移で戻る。
露店を見て回っているとひとつのツボがキラキラと光っていた。
悪意や悪い感じはしないのでそれを見ていると
「珍しいな兄さん。そんなあまり価値の無い物を熱心に見るなんてな?
気に行ったのかい? 安くするから買っていってくれないかい?」
「あぁ、良いぜ?」
生粋の商人にとってこのツボは価値がないらしい。
「ケビン兄? そのツボ変な感じがするよ?」
「俺も同意見だな。さて宿屋に帰ってから確認してみるか」
その後飯を食べて宿屋に入りツボを取り出し魔力を流して見ると門が現れた。
門の中に入ると武器やお金が沢山置いてあった。
倉庫の様な感じかな? と思ったら1つの旗が鳴動し始めて俺とセラは警戒していたが
1人の青年が現れた。
『いやー助かっちったよ。俺は芸術と幸運の風の神だ。
気にしないでくれ、面白いもん使ってる人間にくっついて行ったらここに入って出れなくなっただけだからな。
君達には幸運が訪れやすくしておいた。助かったありがとう!!』
今日はとことん呑気な奴らに出会う日らしいな。
神の1柱を見送ると俺達は倉庫の中身を回収してクロス伯爵家に送った。
だって俺もセラもマジックボックスがあるから要らないしな。
それにしてもこんな高位の魔道具いつの時代の物なんだろうか?
ダンジョン産の可能性もあるので特定は難しいか。
全ての今現在関わりのある国への苦情は入れたから明日は2人で一気に知識の街に帰ることにした。
セラも俺も帝都は領地の都市の次に来ている場所で目新しい場所なんてないからな。
ミカサ商会の店舗の規模がバカでかくなってた位だったし。
◇
次の日、帰ろうかと思っていると部屋の前に仁王立ちしている親父が居た。帝都にいたのかよ……
「ケビンよ? 来ているなら何故クロス伯爵邸に来ないのだ?」
「はぁ……1日しか居ないのに使用人達に負担をかけたくなかっただけだよ。
親父達が居るならまだ違ったから行っただろうけどな?」
セラも頷くとズーンと凹む親父。
我が父ながらとても面倒な人だわ……感謝はしてるんだけどな。
「じゃあ俺達は用事終わったから帰るわ。じゃーな。長期休暇にはセラをクロス伯爵領に送る予定だ」
「うむ、絶対だぞ? 来なかったらこちらから行くからな?」
いや来んなよ……代官達がすげぇ困るだろうに
「父様。来たら絶交ね?」
セラのトドメの一撃が重すぎる……
そして帝都を出て直ぐに俺達は転移するといつもお馴染みの強制転移室に出た。
「ケビンさん! いやぁ最近凄かったですよ!子供達が100人以上も来るんですから!」
「ごめんね、各地で困ってる子供が多かったから拾って来たんだわ。
幸いやる気の多い子が多かったから勉強させるために連れてきたんだよ!」
そう話をしながら手続きが終わり孤児院に向かうと……
俺は驚いた。 屋敷がもう1つ建っていたからだ。
いや計画にはあったけどこんなに速く建つなんて想定外だわ。
孤児院に入ってみるとやはり居たドワーフ族達が
「おう! ケビン殿! なんか屋敷建てる計画があるし建材も揃ってるから建てて置いたぞ!
美味い飯を貰う代わりだから気にすんな!」
違うだろ!! お前らは美味いアテと〆に喜んで作ったんだろうが!とツッコミたいがやめた。
「おー族長さんもこの街を見に来たんだな。屋敷はありがとう。そろそろ部屋数も足りなくなりかけてたから助かったよ」
新しい屋敷には獣王国の子供と帝国の子達が入ってるらしい。
庭では獣人の子とうちの初期から居る子供達の組手が行われていたが人族の子達が強くて驚いてる様子が分かるな。
「ケビンさん!! 出かけるなら声を掛けてください!!」
突然出てきたトアとメルにめちゃくちゃ説教されたのは言うまでもない。
でもこんな感じに平和の一端を享受できることに笑みを浮かべてしまったのだった。
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