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最終章:知識の街

267話

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「うぐぅ? んむぅ……ふぐふぁ!?」

 皇帝は今セラと一緒にオセロをしている。
 セラは勿論孤児院で既に体験済みなので要領が分かっている為、これに気付かない限り勝てない。

「ふふふ、既に5回も敗北しておるのだ!!
角を取れば勝ちだぁぁ!」

 あっ! 皇帝さん? そこ取っても意味無いよ?

「ふっ、じゃあこっち」

「ぐぬぅぅぅ……」

 角を取ってもその角に対応してる角までの道が最初から無いのにね……不遇過ぎる。
 既に宰相さんなんてカラクリに気付いて角を取ろうとした時にアワアワしてたぞ?

 俺と宰相さんは帝国との交流と禁止事項(主に婚約者送り)を決めていた。
 学校に入る生徒として来るなら貴族籍の使用不可とかを重点的に作っていた。

 まぁ……あの学校の教師は元高ランク冒険者や
 目が飛び出でる程有名な学者が多いから貴族なんて一切合切気にしないんだけどね。

 気になる遺跡があるから調べに行くって言って危険特定地域に向かう学者がどこに居るんだよ。
 そんなことしてるからベラボーに強い。

 研究費用が足りないからSランク冒険者してましたって言う人も居る。
 双薬の誠道と呼ばれていた奇人が教師に入ってくれたのは助かった。

 この2人は兄妹で錬金術師と薬師で遺跡や危険特定地域に潜ってサバイバルしてるぶっ飛んだ人達だ。

 俺と転移者達で作り上げた科学の知識を纏めた本を餌に『後進も育て上げれない研究を誰が引き継ぐんだろうな?
 あーあ……君達の貴重な研究も2人が居なくなったら打ち切りか……』

 と煽ったら簡単にその知識の本と助手になれるだけの逸材を探すのと並行して
 周りも優秀に育て上げてやると宣言してきた。

 教師の一覧を見せると宰相が一瞬気絶しかけていたが俺は見なかったことにした。

「それとケビンよ……俺は激辛カレーを食べてみたいのだが?」

 セラさん? 嫌そうな顔やめてね? 皇帝さん? 上の天井に隠れている連中に後から狙われても知らんからね?

 俺はマジックボックスから以前カロンに出した激辛カレーを渡す。
 そして少し粘度の高い木の実の汁を瓶に詰めた物をだす。

「辛かったらこれでお口直ししてください」

 ヤシの実の中にある果汁位甘く少し粘度があるので辛さには効果的だ。
 これは教えてないけど獣王国に生えている。

 勿論獣王には伝えているし既に輸入を始めていた。
 勝手にミカサ商会名義でな!! 手紙は送ったけどな。

 中の実と果汁それに外皮が繊維質で茣蓙の様に編み込めば活用方法がそこそこあるとふんだのだ。
 中だけでも十分利益を出せるので秘密だったりする。

「か、か、からぁぁぁ!!!」

 何してんのこのおっさん……俺はアポートの逆で激辛カレーを天井裏に送ってやると歓喜の感情がダダ漏れだった。

 そして流石はハビスに調教されたカレー信者達、激辛カレーを黙々と食べれるらしい。
 俺もセラも空間把握を使っているので上の連中がガツガツ平然と食べていることにキョトンとしていた。

 俺も意外だったけど納得出来る理由もあったので顔には出ないけど驚いてはいる。
 そして空間把握の中に捻れが起きたのでそれを掌握してそのままマジックボックスに吸い取ると皿の他に紙が入っていたので取り出すと

『大変おいしゅうございました。天に召されるかと思う程幸福でございます』

 信者が変人過ぎて怖い……まぁ良いか。

「皇帝陛下からも貴族達に牽制しておいてくださいね?
 知識の街は周りを貶める悪人や強欲人でなければそれは力ですから受け入れますが……
 貴族は違います。権力を笠にして脅迫してくるのですから
 平民達の立場を考えてください、俺の被害はなくても今回も数件問題起こしてるんですから。
 料金の踏み倒しや暴力沙汰、人攫い未遂まであったのですからね?」

 これはハビスが来た時に俺の方に寝返った影の部隊の1人が普通に紛れ込んで来ていて手紙を渡されて驚いたことだった。

 平民を人間として見てない平民や罪人になって貰って如何に平民が一致団結して小を切り捨てるのか体験してもらいたいわ。

「人は反対意見が集まれば集まるほど空気が入るスライムのように膨張して弾けてその切っ先は必ず少数派の貴族に回りますよ?」

 前世でもよくあった革命だ……まぁ結局は成り代わった所で治世が良くなったのは数例しか無いはずだけどな。

 人を守るには力も金も権力も必要だが貴族は過分過ぎるのだ。
 人の強欲は輪廻するからな、どうしてもそうなるのだから。

「皇帝は権力という絶大な力を持ちながらも上手く扱えてますが
 それも一時の癇癪で潰れることも想定してないと龍の尾を踏みますよ?」

 宰相の顔が引き攣り、皇帝も真顔になっていた。
 言わないだけで分かっているのだ、知識の街の同盟関係の国や個人的な有力者と知識の街に在留している規格外の者達の戦力差が。

 それを俺で抑え込めるなら良いが無理ならそのまま1人でも国落としが出来る実力者が居るからこそ最高の学び舎と言えるんだけれどな。

 校長が今は上手く手綱を握っているがそれも崩御しては意味が無いので必死にシステムを作っているのだから。

 教師の数を増やしたのは学者同士のコミュニティを作ることと細かく科目を細分化することにより
 学者の研究意欲も落とさない様にしているのだから。

 そして実戦授業だけは必須科目にしている。
 知識を得て新たな力を使える様になった連中の鼻っ柱を折る為だ。
 そこまでして謙虚さを持ったまま卒業して欲しいと思っている。

 あの学校のコンセプトは『基礎教育』『護身力』『サバイバル』の3つなのだから。

 最低限度の常識と教育に、外に行き身を守る為の力の確保に
 最後に強力な敵から逃げ延びる為に生き残る術を学んでもらうつもりだからな。

 そこから更に個人的に学びたい教科を選択式で行っている。
 教師同士で同じ科目は話し合い差異が出ないようにと後は体験談を多めに話す様にしている。

 人は失敗から学びを得る方が多いからな。

「うむ、肝に銘じておこう。それと何歳まで入学出来るとか制限はあるのか?」

 ん? 誰か入りたい人でも居るのか?

「無いですよ? 基礎学力次第で最初の基本的な勉強が免除されるだけですから」

「ふむ、我が娘達が入りたいとゴネておってな? 良いだろうか?」

 んー? 来年には2期生の入学試験があるから大丈夫だけどな。

「完全1人暮らしになりますけど大丈夫ですか?」

 今やセラもキャロも知識の街に来てから着替えも料理も1人で出来る。
 なので貴族だろうが特例は作るつもりが無い。

「すぐに訓練だな」

そう言うと笑顔で出て行った。

「私も執務が残っていますのでこれで失礼致します。君達、2人が帰られる時は案内を頼むよ」


「「はっ!!」」 

 宰相さんも騎士に声を掛けて出て行ったので俺達もすぐに外に出たのであった。


 セラと手を繋ぎ

「さあ帰ろうか我が家に」
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