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最終章:知識の街

266話

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 ハビスを撃退というより餌を与えてどっか行ってもらった後
 ふと思い立ったように冒険者ギルドに立ち寄ってみると

 やはり神罰の影響か若い人ばかりでベテランは居ないみたいだった。

「おう、嬢ちゃん俺たちと組まねぇか?」

 だからこう言ったアホの手合いも現れる。
 スっとセラは俺の後ろに隠れると明らかに敵意を相手が見せてきたのであちらが動けない様に結界で閉じ込めた。

 魔法使い系統の魔力に長けた連中は俺の魔力は感じ取れずとも
 セラの魔力量の多さに入った当初から警戒と怯えを見せている。

「冒険者ですら無い一般人を襲うなんて帝都の冒険者ギルドも地に落ちたらしいな」

 わざと大きめの声でそいつらに向かい文句を言うとこちらを睨んで来るので
 俺がほんの少しだけ敵意を見せると急に怯えだした。

「んぁぁ? どこのカチコミだコラァ??」

 どこぞのチンピラが次の相手かと思えば帝都支部のギルドマスターだった。

「おっさん、冒険者の質悪すぎだぞ?
 俺とセラリウムは一般人……いやセラリウムはクロス伯爵家の次女だから一応貴族令嬢だぞ?」

 絡んできた2人組みの顔色が青→白→土色に変わった。

「お前は冒険者だろ?」

 何言ってんだお前? みたいな顔されたので俺はあっけらかんとした態度で

「へ? 神罰の前にギルド本部と揉めて引退したけど?」

 完全に固まったギルドマスター……筋肉髭ゴリラ脳がショートしたらしい。
 それを無視してモーゼの十戒の如く俺らが歩くと人の波が別れるそして依頼書張り出しの前に立つ。
 国内情勢や道、盗賊情報と言った街の外に向かったり商人や貴族の情報を掴むなら商業ギルドの方が向いてるが

 都市内部の情勢を知りたいなら冒険者ギルドの塩漬け依頼や雑用依頼を見れば
 だいたいその街で何が起きているのか判断がつく。

「帝都内もきな臭いな、早めに出て行くか」

 そして俺達はギルドを出た。先程の奴らの仲間が俺達を追いかけようとしたが
 知識の街と違い転移魔法が使い放題なのでピョンピョンと姿を消すので諦めたみたいだな。

 途中気配隠蔽で俺は全員の追っ手の顔を覚え肩を触った結果条件が全て揃った。

「クケケケ、俺達を狙ったアホうな連中は腹痛にでもなってろ!!『カース:腹痛』」

 本気で呪いをかけると死んでしまうのでこれくらいが1番余裕だったりする。

 そして帝都内がきな臭いのは荷物運びや人探しやテイムモンスターのペット探しみたいな依頼が多かった。
 人探しは大方相手がお偉いさんなんだろうけどペットの方は5件以上あった。

 テイムモンスターは魔力の繋がりが有るから熟練度が高い人なら

『帰っておいで』と念じればマスターの元へ帰巣本能が刺激され帰ってくる筈なのだ。

 攫って依頼を出させて金を取ってる奴が居るのかそれとも動物型が多いので食べてる奴が居るのかは謎だけどな。

 それと治療と清掃と浄化系の依頼が多いというのが気になった。
 聖職者や治癒系統の魔法が使える者が帝都に少ない証拠だ。

 治癒魔法の使い手は神罰で被害を被った地域に駆り出されているのは分かるが浄化の案件はおかしい。
 帝都は神罰の影響は冒険者ギルドと帝都に帝国軍、貴族の私兵軍で殆ど被害がなかったのに浄化が必要なのはおかしいのだ。

 大方、貴族の軍や私兵に誘う為の炙り出しに近いと思う。
 後は地下の下水に変な感覚があるのでベテランが居なくなり下水依頼をこなしておらず何か住み着いて居そうだな?

 そんなことを思っているとセラがこちらを覗き込んでいた。

「ケビン兄? どうしたの?」

 俺はそんな考察をセラに聞かせると少し顔を顰めた。

「兄様はそんなことまで考えてることがおかしい。
 でもこれから文句言いに行く時に一緒に言えば?」

「まぁその通りなんだけどさ? それを言ったらどうなると思う?」

 首を傾げながらセラは少し考えて

「優秀と思われる?」

「優秀と思われたら強欲な貴族はどうする?」

「んー……あっ! 囲いこもうとする??」

 俺は頷き肯定して

「また貴族にとか言い出すアホが出ると思うぞ。
 それか娘を嫁にとか出してくるぞ? 宰相さん1人にだけ伝えるか」

 そう言っていると帝都の皇帝の城門前まで辿り着く。
 ん? 貴族街の門はどうやって越えたかって?
 勿論セラの身分証と従者1名で通ったが?

「止まれ!! 何用だ!」

 門番に声をかけられた。んーいつ見てもこの人達は威圧的だね。

「宰相様宛にこの手紙を届けてもらいたい。
 私は知識の街に住んでるのだが貴国の貴族が自分の娘を嫁にと
 あろうことか家に押し掛けてきて迷惑なので苦情を言い渡しに来た」

 俺はマジックボックスから適当な建材を出してその上に手紙を置く。

「んぇっ!? そうであったのか、では少しお待ち頂いても?」

 俺は手紙から離れると門番が取りに来てすぐに人を呼び走って行ったので
 俺はセラとその場に椅子と机を出してお茶菓子を食べ始める。

 偶に貴族の使いや商人が馬車や歩きで城門を通ろうと問答をしているのを横目にしていると1台の馬車が止まる。

「おい! そこの女。私の嫁にしてやろう。光栄だろう?
 ガレール子爵家の嫡男の嫁になれるんだ!ハッハッハー!」

 陽気なバカが現れた。

「失せろ? それも早急にな!」

 俺が立ち上がり睨みつけると相手は激昂する。

「なっ!? 貴様無礼だぞ! 帝国内で貴族に逆らうとは命が惜しくない様だな?」

 いやいや、帝国内でクロス伯爵家に喧嘩売る方が命捨ててるぞ?
 護衛が抜剣した時だった、懐かしい若い宰相が走って来て俺の目の前でスライディング土下座をした。

「ケビン殿、この度は我が帝国がご迷惑をおかけして申し訳ございませんでしたーー!!」

 マジか……この人一応この国で立場的に2番目に偉いんだけど?
 実質、実権的にはノース辺境伯とクロス伯爵家の方が強いけど……

「もう来なくなるならそれで構わないんだけどさ。現在進行形でアホ貴族に絡まれてるんだが?

 それも子爵家如きが伯爵令嬢を嫁にとか訳分からんこと言ってるぞ?」

 宰相の目がマジで怒り始めた。
 ほう? この人成長したなぁ……オーラ的な物が見え始めている。

「貴様……我が国にとってはこの方は賓客だぞ?
 お前の様なアホが居るから有能な者が国外に出て行ってしまうのだ」

 子爵家嫡男と言っていた奴や護衛連中は顔が真っ青だ。
 宰相の口撃はまだ終わらない。

「それにセラリウム嬢はクロス伯爵家のご令嬢だぞ?
 クロス伯爵家とことを構えたいなら好きにすれば良いさ。
 その代わりどれだけの家が参加して領地を滅ぼされるかは知らんがな」

 そう言うと嫡男様は気絶した。

 俺達と宰相は客間に通されて今回婚約者騒動を起こしに来た家のリストを渡すと頭が痛そうだ。

 帝国貴族の特に下位貴族や高位貴族が人を送り出していたのだ。
 しかも高位貴族の令嬢は家では立場の弱い妾の子供を送ってきている。

 高位貴族の令嬢は家からの手紙と共に殆どが亡命の相談の個人的な手紙付きが多かったのでそれも相談して
 尚且つ、冒険者ギルドで気になった点を言うと悩みだした。

「ん? 騎士団でも下水の清掃見回りはしてるはず……」

 俺は心の中で絶対してないぞ? と答える。
 彼らは帝都で騎士になったという変なプライドがあるが為にそんな雑用はしない。

 そして雑用をやらされてる見習いが普通にサボってるだろう。

 話が終わらないのと宰相の考え事待ちしていると皇帝が入ってきた。
 セラが帝国式の儀礼を取るが俺は一切の儀礼を取らない。

 皇帝は俺を見るとニヤニヤしていた。
 昔のガッチガチだった俺を思い出しているのだろうな。

「ふむ、久しいなケビン。来たのだから茶でも飲み歓談しようか」

 そう言って皇帝とのお茶飲みスタートだ。
 セラ……逃げたいのは分かるが諦めろ!!
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