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最終章:知識の街
257話
しおりを挟むセラの自由奔放さに集まった閣僚達が頬を緩める。
そして各地で起きたことや婚約者騒動を話すと起こした派閥が頭を抱えていた。
「うむ、それで? 辺境伯領に居た元冒険者領主はどうだった?」
それ俺に確かめちゃうの?
「まぁギリギリランク内に入った程度? じゃない?」
そう言うと1人の筋骨隆々の男が立ち上がる。
魔圧をかけてきたので上乗せして返すと顔を真っ青にして腰が抜けた様でそのまま椅子に戻った。
「国王陛下よりつ、強い……? ハッ!? 失礼しました」
「ブハハハ! こやつの周りには我と同等……それ以上の者がゴロゴロしてるぞ?
孤児院のみの戦力だけでも我が国は負けるだろうな!」
あー……確かにな。
黒子と琥珀だけで勝てるだろうな。
「それで俺は婚約者とか要らないのでよろしく!
それに貴族が嫌で出奔してるのに貴族にしてやるとか上から目線で来られても困るしな!」
「うん! ケビン兄は父様をぶっ倒してでも貴族は嫌だって言ってお家出てる!」
セラが補足してくれるから楽チン楽チン。
「それに俺の軽い魔圧にも耐えられないと恥をかくだけだぞ?」
「皆の者! こやつが世界の中心に居るのはたかが100年だぞ!
我らには関係ないだろ? ならこの話は終わりだ。
下賎な身分の者も居るからな!」
そう言ってこちらを貶したのは何か陰キャそうなメガネの奴だった。
「ふーん? そんなこと言っちゃうの?
俺は良いけど、妹はれっきとした貴族院に名前が載ってる伯爵令嬢なんだが?」
「はっ!?」
外交問題勃発しそうな発言はやめてね?
「おぉ! ケビンは帝国生まれだったな?
なら鬼と呼ばれる武人も居るのだろう?」
「それ父様」
セラがその傲慢そうな奴に告げると顔から表情が消えて頬が引きつって居た。
言わなきゃ良いのにね……そもそもギルド的には俺もそこそこ権力持ってるんだけど?
「俺も冒険者はギルドと揉めてもうしてないが商業ギルドでは自らで素材を取りに行ける特殊な資格とそこそこ高ランク商人だぞ?」
そう言うと更にひくつかせる。
「あー……それと水仙国王陛下に気に入られた理由はカレー粉の創作者であり計算機そろばんの創作者だからだ」
そろばんの方は知らなかった様で水仙国王は驚いていたが
この言葉により武官より文官の態度が一気に軟化して揉み手をしているようになる。
「むっ!そういえばカレーのお陰で米が止まらんぞ!」
武官側の数人はカレーに反応していた。
「あーならもう少し面白そうな奴教えてやるから米炊いておいてよ?」
国王陛下よ……会議そっちのけで指示出すなよ。
「元貴族子息のケビンと現役伯爵令嬢のセラが領地がボロボロで立て直せない位、民が疲弊していると言っているのだ。
調査官を派遣したがすぐにわかるだろう」
俺がその後に言葉を添える。
「『民あっての集落、集落あっての街、街あっての国。つまり国は民が安心して暮らせなければ衰えるだろう。
民が笑顔で暮らせる国は必然と栄えるだろう』まっ、こんなとこかな?」
そう言うと文官が驚いていた。水仙国王もだ。なんで??
「ケビン、その言葉をどこで知った?」
「いや? 俺がそう考えているだけだけれど?」
「ぐぬぅ、なら良い。我が水仙国、建国の祖の元勇者様が同じことを伝えておるのだよ。
だから全員が驚いたのだ」
なるへそーー! でも私利私欲で動いてる奴居るけどもね?
「俺は計算機を最初は自分が楽する為に作った。けれど商人になりたい子供が計算スキルが無いだけで道を閉ざされていた。
薬師では弟子が居ても専門的分野で薬の下処理しかさせて貰えてなかった。
だから食品で尚且つ多少の失敗があっても誤魔化せるカレー粉の調合をお願いした。
本来なら帝国内だけで流通させることも出来たが……
国は1つの国だけで成り立たない。停滞するからな。
だからこそ全世界に流通する様に保証契約して良かったと今なら思う。
あれが狭い範囲だけでやっていたら奪われるかこの日まで生きてなかっただろうな
集団が狂人化した時のエネルギーは普通の数百倍だ。
相手の権力なんて気にせずに死兵となりて襲いかかってくるぞ?
なんせ自分達の未来の子孫や今現在の子供を護ろうとする親や兄弟ってのは強いからな」
そう言ってセラを撫でるとセラはニッコニコだった。
それを見た水仙国王は頷き
「既にヤバそうな孤児達や貧困層の人は知識の街へと移住を申し出てケビンが送っている。
それとお前らに言っておくがケビンは種族進化して我らと同じ魔人族だ
安易に考えるなよ? それと周りを固める奴らもかなりの曲者で元Sランク冒険者達が
死に物狂いでこの国に報復しに来てみろ?」
そう言うと全員の顔が1人だけ真っ青だけど引き締まった。
うむうむ、やっぱりこの王様は良い賢王だね!
その後、ドワーフ達から仕入れた醤油で焼きおにぎりを作ってやると喜ばれた。
錬金術師におにぎりを作り水分抽出をしてお湯を入れれば兵站の素になると教えると更にその場の熱気は上がった。
軍部の人は……
「知識の街はこやつのテコ入れがあるということは絶対手出しの出来ない街だ。
それと技術の交換を行った方がかなり有効だな。
ケビン殿! 我らの子達でも知識の街の学校に入れますかな?」
そんなことを言っているので
「試験に受かるなら誰でも受け付けますよ?
それに武術担当は竜人族の元Sランク冒険者なんで強くもなれます。
そして貴族令嬢で本当は戦闘したいと考えてる子達にとっては楽園でしょうね。
しかし……気を付けねばならないのが……」
誰かの生唾を飲む音が聞こえた。
「快適過ぎて国に帰りたくないという子達が出ることを懸念してます」
内政担当の大臣や職員が全員膝から崩れ落ちた。
「陛下ぁぁ!! 我々にはこの者達の仰ってる意味がわかりませぬぅぅ!」
「うむ、我も帰りたくなかったから滞在をついつい長引かせてしまった。隠居の地はあそこと決めておる」
「「「「「「陛下ぁぁぁ!?」」」」」」
「視察は受け入れてくれるから行きたい奴が居れば交代で行けば良い。
最初の確定事項としては外務大臣はねじ込むぞ?」
「おっしゃあああ!!」
そんな会話にセラは
「男ってバカ?」
俺を含む全員に効いた言葉の槍がクリティカルヒットする。
セラは奥様方やメイドさん達と一緒にバカバカと言っているので俺は禁断の技を使う。
「ほーん? セラがそんな事言うなんてなら今日から泥は要らないんだよね?」
「む? それは困る。ケビン兄。泥全部出して」
この日、奥様方やメイドさん達によって泥パックフィーバーが起きた。
息子や娘を知識の街の学校へと送り込み泥を買ったり持ってこさせる準備に入った様だ。
そんな様子を見ていたら水仙国王が隣に座る。
「国、種別、宗教、全てが違う。しかしそんな違いから新たな交流が生まれるのだな。
今まで我ら魔人族の安寧を模索していたがこれはこれで良きかな」
俺はニヤリと笑い
「確かに全てが違えば問題やぶつかり合いも起きる。でもそれって本当にダメなことなのか? とも思うさ。
だから知識の街では全ての神を同一にして崇めている
神様の中でも眷属神や上級神とか階級はあれど皆仲良くやってるからな」
そう言うと水仙国王は驚いてこちらを見ていた。
「神に会える者等ほんのひと握りだな。好奇心で敵対しなくて良かったわ」
そう言って笑ってどこかに行ってしまった。
あー後は獣王国と帝国に文句言いに行くだけだなぁ。
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