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最終章:知識の街
254話
しおりを挟む辺境伯領から移動して王都に近い伯爵領に入る。すごい栄えている様に見える。
「ケビン兄? 何で顔を顰めてるの?」
セラが俺の顔を見て不思議に思った様だ。
「うん、凄い栄えているよ? でもさこんなに大きな街なのに居ない人がいるんだよ」
セラは魔力感知をすると気付いたみたいだ。
「子供?」
「そうだね、子供も居ないけど貧困層も居ないのはおかしいでしょ?
どんなに潤ってる街でも他の街から優秀な人が流入してくるんだから貧困層というのは無くならないんだよ。
常に1つの席を奪い合っているのにその席は他の人から見たら興味も関心も無い席なのだからね」
そうして街を歩いていると蹴飛ばされている少年少女が居た。
「ほんとに使えねぇな! 雇ってやってるんだから働けよゴミ共が!」
俺はお節介と分かりつつも少年少女の思考を読み取ると
1日中働き銅貨数枚程度の賃金しか貰ってない。
わざと出来ないことをやらされ罰金、罰金で給料が無くなってるらしいな。
「なぁ、あんた。そんなに使えない子供なら俺にくれないか?」
「ケビン兄?」
セラの雰囲気が厳しくなるのを感じるが今は抑えてもらいたいので手で制した。
「ふん! なら俺のこいつらが居なくなることでの今日の損失分を払えば良いぜ」
そういうので店主だか商会員に銀貨1枚を渡してやる。
「は? 足りねぇ足りねぇな兄ちゃん」
ニタニタと俺に近付いてくるアホ。
俺は既に魔力大鎌を出してるのに気付きもしない。
大鎌の棒の部分で肩と首をポンポンと叩いてやる。
俺はニコニコとしながらそいつに近付き耳元で
「俺は記憶を読み取る力があってね?
人の妹を奪う為にフッかけようなんていい度胸だな?
相手見てちゃんと判断しないと体とおさらばすることになるぞ?
少女少年も銅貨数枚程度で働かせていたんだ数日分だろ?」
大汗をかいて頷きまくるそいつを見て銀貨を渡して俺は少年少女の目線に合わせる。
記憶は読み取ることができるが本当は心のガードが緩い子供や酒に酔ってる人の記憶が読めるだけだ。
「俺はケビンだ。君達はこの街に詳しいかな?」
「カークルだす! です!」
「マリアです! ありがとうございます」
かなり切羽詰まっていたみたいだな。俺は2人に浄化魔法をかけて綺麗にしてやる。
彼らの服には足跡がついていてそれと多少の傷もあったので治しておいた。
2人に街を案内して貰いながらこの街の現状を教えてもらい呆れた。
この街は重税を払える者だけの楽園で払えなければゴミみたいな扱いをされるらしい。
待遇を聞くとこの街の貧困層の大人は隠れているか既に死んでるらしい。俺は2人を撫でてやる。
「じゃあこの街の案内が終わったら俺が住んでる街に来るか?
君達位の子供達は皆無料で学校に行くことも可能だぞ?」
「行く!」
「行きたい……ですけど……」
マリアの顔がシュンとなる。仲間かな?
「ん? 俺言ってなかったかもしれないけど孤児院のオーナーだから子供なら幾らでも受け入れるし
あと少しで成人の子は就職先も作ってやれるぞ?」
そう言うとマリアに連れてかれて俺は子供達の前でブチ切れそうになった。
全員がボロボロだったり四肢のどこかを欠損していたのだ。
「マリねぇねぇ! カー兄!」
片目を潰された少女がマリアに抱き着く。
セラは衝撃的過ぎて混乱してたがその代わりにふつふつと怒りが沸いてきたみたいだった。
「マリア、カークル。子供はこれで全員か?」
そう言うとマリアは頷いたので俺は魔力を解放し全員を優しく包み込み
「『再生魔法』オールレンジだな」
子供達は自分の異変に気付き、少し驚いたり狼狽えたりしてたけど次の瞬間に泣き出した。
そしてセラが俺の手を握り魔力を寄越せと催促してきたので渡してやる。
転生者特典なのかは知らんが俺の魔力は周りに分け与えてもそこまでロスがで無いらしい。
そして目の前にゲートが出来上がる。
「マリア、カークル。この門を潜ると俺の孤児院がある。この手紙をメルという院長に渡してやってくれ。
ケビンからのお願いって書いてあるから」
そう言うと小さい子達はセラに質問しまくっていた。
「ねーねー魔法使えるの? どうしたら使えるのー?」
「ふふ、努力すれば皆使える」
「なら私も行くー!」
1人の勇敢なんだが、無謀な突撃に皆慌ててあっちに行って魔力感知で誰も居ないことを確認したら……
「さぁセラ? おしおきの時間だぜ?」
「クソ領主、許すまじ!! フンス!」
俺はそんなにセラにイタズラする。
「あーそんな汚い言葉を使うなんて母上に言いつけるぞ?」
「ん? それはダメ、したら適当な婚約者候補の子が可愛いって言ってたって義母上に教える」
「それは勘弁だ」
「なら2人とも秘密ね!」
俺達はフードを被り上空に転移して堂々と伯爵家邸の屋根に降り立つのだった。
おいおい、伯爵邸の屋根に登った時点で本来なら警報が鳴らないとおかしいのにそれすらない。
「油断しすぎだろ……ここの貴族は」
俺は呆れて物も言えないけれど今回に関しては楽になるのでまぁ良いかと納得するのであった。
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