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最終章:知識の街
252話 水仙国王視点
しおりを挟む各国、各自関係各所との交渉や交流も盛んとなり
我らが水仙国も表に出ると決めてから好調だった。
最近までは自分が強いからと周りの国を落とそうとする
愚か者達が多かったが今のこの状況に安心していた。
人族やエルフ族にも我らに匹敵する……いや我らの上を行く化け物達が居ることを
映像記録魔道具で教えてやると顔を真っ青にして
手のひら返しで柔和策に賛成を始めた。
そんな安心しきっていた日々を送り執務をこなしているとノックもせずに宰相が入ってきた。
慌てている時の悪いくせだの?
「宰相、入室確認くらいせよ」
「すすす、すみません陛下。
しかし、国境近くのダルマイン辺境伯の寄子の男爵家3家と子爵家ひとつが陥落しました!」
我は顔を顰める。
辺境伯はどこの国でも屈強な軍を持つ領地でしかもその周りを固める貴族も実力主義で成り上がった者達で固めていた。
国境近くの男爵家、子爵家となると……
「む? Aランク冒険者2人とSランク冒険者が治める土地ではないかっ!?」
そして次の瞬間に更に顔が険しくなる情報が……
「しかも全員殺されず、強者のみ紐で吊るされ『雑魚』と張り紙されていました。
賊は2人で急に屋敷に現れ、蹂躙していったそうです。
住民には一切危害がありません」
むむむ? それは完全に水仙国に対して喧嘩を売っていないか?
「面白い、そのまま厳戒態勢で居ろ。
どうせ目的は我か我に連なる高位貴族であろう」
1人の文官が慌てながらも入室許可を求めてきたので許可すると
「陛下! サンジェルマン伯爵、ドミトリー伯爵家領地陥落。
ここの領主達の張り紙は『雑魚・重税強いるアホ。国無能』と書いてあったそうです」
我の額に血管が浮いたことが自分でもわかる。
「宰相よ? 確認してこい!! 重税で民が苦しんでいた等と我が許すと思うなよ?」
そして言いづらそうな顔をする文官が立ち去らないので
「まだ何かあるのか?」
「その……賊は炊き出しを各地で行っているのです……それも同時刻に次々と」
「はぁ? そんなの無理であろ……いや出来るか? 強力な空間魔法の使い手ならな!?」
そして何か書面を見つけたようで差し出してきて説明を続ける。
「身長が大小の者がどちらも転移してるとしか思えない程の現われ方だと?」
むぅ? ケビンの奴が脳裏にチラつくがあやつはこの国に取り込まれたくないと
拒絶しておったから流石に自ら騒ぎは起こさんだろう。
「フハハハ!」
「へ、陛下??」
文官が怯えているので笑うのをやめる。
「すまんの、心躍る心地とはこのことだな。
我が国が周りに周知された証拠でもあるだろう。
今まで幻の桃源郷と呼ばれておったわけだからな」
古代魔人族の国から魔道具や知識を得てきた我らの文明は他の国よりも良いと思っていた。
どっかの化け物の誰かが『カレー』なんて文明誌に残る偉大なる発明さえしなきゃだがな?
快適だし、豊作でもある。
緑や農業だけでなく上下水道完備の我が国で飢饉は有り得ぬ。
しかしまさか建国の英雄の勇者様の語録にもあるカレーが再現されてるとは思いもしなかった。
それに今の時代、人族の国の薬師ギルドに頼めば
それなりの量を作ってもらえるとは思わなかったわ。
そんなことより今の喫緊の問題は侵入者だが……罰するか? 無理であろうな。
炊き出しをしてる時点でその人物は民のことを思って行動してる。
統治者教育を受けているか、良い土地、領主の元で育った者だ。
辺境伯の所は精強だが荒くれ者も多い、それが仇となったパターンだな。
◇
数時間後、我らは頭を抱えていた。
報告を受ければ、真っ黒なことが多すぎた……
「それで? サンジェルマンとドミトリーは民に重税をかして
馬鹿な子供達や領主本人は街の娘を漁っていたのだな?」
我はその言葉に殺気が乗ってしまう。
全員が戦闘者では無い者ばかりなので顔が真っ青になってしまう。
我も息子、娘どちらも居るので両親達の悔しさが分かってしまう。
こやつらは独身者が多いのでその気持ちはまだまだ分からないだろうがな。
「すぐに召還命令を王命で書く、軍事部に回し確保して参れ!!
絶対に許すなよ? 侵入者は気にするな。
多分このまま我の元に文句を言いに来るかもしれんが我はそのまま民……
または他国の意見としてその意見は重要な案件として扱う。
各自、行動に移れ!!」
「「「「「はっ!!」」」」」
はー頭が痛いぞ? クソ伯爵2人は処刑だな。
ガキも盛りやがって……許せん。
我の国ではその様なことがないように監視していたはずなのに……
暗部にも裏切り者が居るのかもしれんな。
全員鍛え直しだな、はっはっは!!
その考えに顔が勝手に口角が上がる……そして魔力と怒りが膨れ上がるのであった。
「勇者様の言葉に『油断大敵』や『慢心が油断を生む、油断が過失を生む』だったか……」
勇者様の国の言葉はそう言った含蓄のある言葉が多く我ら統治者達には物凄くタメになる言葉ばかりだ。
それに帝国も勇者様と同郷の者が開いた国だったはず……
今回の召喚者達も勇者様と同じ国の子供達だったか?
ケビンに頼んで、派遣をしてもらおうか?
我らの国も見てもらった方が良いかもしれんな。
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