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最終章:知識の街

242話

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 全く理解の出来てない式典を終えて俺は報告を受けて驚いた。

 俺が冥界に行って戻って来るまでに1ヶ月かかっていたからだ。
 その間、エルフ族は正式に水仙国に知識供与の条約を結び
 植物に関する知識を得てその対価に精霊の力や世界樹の力を貸すことにしたらしい。

 今まで謎に包まれていた竜人族の里も人族の食物や酒に興味を持ち貿易を開始したらしい。

 そして知識の街と兄弟都市となったクロス領と貿易をしたい水仙国王の3つの長達が条約を締結した。

 今、俺は会議室にそのままドナドナされた。

「まずはケビン様には無事戻って来てくれてありがたいです。
 それと前に計画していた物は新しく人が入都しない限りは終わっています」

 商業ギルドマスターがそう言う。
 周りの人は首を傾げていたが、知識の街に定住すると決めた人達は全員理解していた。

「ケビンよ? お前何を計画していたのだ?」

 親父がそう言うので俺は普通に答える。

「この都市に居る定住している全員の戸籍を作った。
 これは住んでる場所が変われば手続きが必要になる」

 更に首を傾げていた親父だけれど召喚者達は馴染み深いので頷いていた。

「これがあればこの都市に定住者が何人居て、1時住居者が何人居るかもわかる。
 それと犯罪にしてもこの街のルールをよく知ってる人と知らない人がどんな罪を犯すかもわかる」

 そこで商業ギルドマスターがぶっ込んで来た。

「統治方法はどうしますか?」

 俺はそこは考えていたので普通にスラスラと答えることが出来た。

「下院、上院と分けて下院は108席を無作為に戸籍から選ぶ。
 これは種族、性別、職業問わずに成人してる全員が対象になる。
 対象外なのはここに定住する意思のない人とそれと病気・影響が強すぎる人だけだ。

 上院は商業・冒険者・薬師ギルドマスターと役所のトップ、兵士のトップは固定で複数の商人や農家を持ち回りで選出する。
 下院議員で出た議題を予算や税収の観点から見て上院で精査した後に無理な物は無理と説明した上で進めよう。

 そしてこれから立ち上げる教育産業や技術産業のトップは必ず現場の人間を立たせること」

 そこで召喚者達から手が上がる。

「それは選挙と何が違うんですか?」

 いい質問ですねぇと言いたいがジェネレーションギャップとかだったら悲しいから止めておこう。

「これの利点はやりたくない人や野心のある人が出てきても割り込めないことだ。
 どれだけ影響があっても新たに外から来た奴らには"定住して1年"が経たないとこの都市の政治に割り込めないと言うことだ。

 それにこれからこの都市の子供達は必ず学校に行かせることになる。
 学びの場を平民にも作るんだよ、そうなれば……」

「隙が年々狭まるということですか? でも上院でやられたら意味がないですよ?」

 俺はそこで辞書くらい厚い紙の束を取り出す。

「これは俺と商業ギルドマスターで各国の法律を精査し添削付け加えをして尚且つ上院による独占的政治が成されない様に作った。

 そして今から呼ばれる者達は政治介入を禁止している。
 元・現Sランクギルド員、1度でも宗教思想を持ち出した宗教家、孤児院創設者ケビン」

「「「「おいっ!?」」」」

 ん? どした? どした? 何にもおかしくなかろうがい?

「俺はここに拠点を置くが留まるつもりはないぞ?
 めぼしい宗教家がいなくなり好き勝手しているせいで孤児院なんて無くなったり闇の販路になってる。

 俺はそれを周り世界に孤児院を作る予定だからだ」

 俺はニッコリと笑いそのまま会議室を出てきた。
 そして孤児院に転移をするといきなり全身黒ずくめに襲われた。

「む? ここに入れるのに攻撃出来るだと?」

 俺の設置結界は完璧だ、子供達に敵意を見せるような奴は入れんはずだが……
 俺は黒ずくめの頭巾から見える髪の色を見てふと思い出す。

 そういやコイツも名前も前世風で黒髪ということは魔人族だった可能性あるな。
 それにしても強くなったよなぁ……

 黒ずくめは気の発露と魔力融合というネロですら余りやりたくないと言っていた技術を普通に使っている。

 使ってる武器を見て

「ブフォッ!? ど、どこでその武器手に入れた!?」

 それは俺がドワーフに昔チラッと伝えて試作品を作ったクナイや短刀と言った武器だったからだ。


 投擲されたクナイを掴み見ると持ち手に輪っかも着いていて完璧だ。
 俺は影属性を使いワラワラと触手の様な影を沢山だす。

「!!? ひぃ」

 ニヤリと笑う、この真っ黒な影の触手俺も最初嫌悪感を抱いたからな。

 俺はクナイを返してやるために投げると黒ずくめは避けるが……

「あーあ……終わりだな?」

 クナイの輪っかには影がくっついていてそのまま後ろに刺さると同時に捕獲の為に1本の紐の様な影から無数の影が出て黒ずくめを捕まえた。

「本当に強くなったもんだな? サツキ。それと幻影や幻術は俺に効かないぞ?」

 そう言い黒ずくめの口元を隠す布を取ると顔が真っ赤なサツキが居た。

「仕方ないじゃないですか……幻術で隠さないと目立つんですよぉ」

 むむっ、確かに大きくなったな身長は伸びてないのに……
 俺に抱きついて来るけど身長は伸びず全てそちらに栄養が行ったようだ。

「あーサツキズルいですぅ!」

「抜け駆け禁止!!」

 そう声をかけてきたのは懐かしきムゥ、メロと……すっごい冷ややか笑みを浮かべるトアとメルだった。

 キャロの護衛をしていたと聞いてたからコイツらも居るだろうとは思っていたけどな。

 修羅場になる前に逃げねば、気配を消しフェードアウトしようとすると

「どこに行くのですか? ケビンさん?」

 トアの謎の超感覚……いや違う!?

「『暗愚の月』テメェ楽しんでんじゃねぇ!!」

 空に本気の斬撃を放つと何も居ない空中で斬撃が爆発して何か落ちてきたのでそのまま地面に思いっきり打ち付けた。

『クボラッ!? ふっ、貴様もやるようになったな……げふっ』

 龍神さっさと帰れよお前……

 こうして何故か孤児院に成人が増えた……ちなみに数時間後グロリアスが孤児院に押し掛けてきた。

 アイツはほぼ居候だから良いか。狙いはタビだしな。

 修羅場は連鎖することを俺は未だ知らずわちゃわちゃ出来てる今を楽しんでいた。
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