変人奇人喜んで！！貴族転生〜面倒な貴族にはなりたくない！〜

世界樹を救え？

228話

　俺は邪龍を観察してるが……強いか？
　確かに脅威的な技を含んでいるが、結局謎は深まるばかりだ。

　それにアイツが魔法陣に組み込むならば使えない属性でも扱えるという
　仮説も本当なら危険性があって広めるべきでは無い技術になってしまう。
　試してみるか？

　俺は使えない死属性のネクロマンスを魔法陣で使ってみると俺の魔力が魔法陣を通って変質して行きなんと発動できていた。

「そうか……これがアイツが隷属を使えた訳か」

　奴の知識の源泉はここの世界では無く神によって齎された物なのでそんな常識も知らなかったのだろう。
　これだから異世界の人間は厄介なんだ。

　出来ないことを無意識に常識を打ち破り可能に変えてしまう。
　理を破壊してしまうというより理の緩みや隙間を通ってくる感じか？

　使えない属性を無理に使うと反動が起きて酷ければ死ぬし怪我をする
　それをさせない為にカッチカチに固めてしまうと反動が恐ろしいことになり
　1発で命の危機に瀕する位の罰になるのだ。

　そういった形にならないように態とたゆみを持たせていたのが仇となったパターンだ。

　しかし、俺が使ったネクロマンスは不安定でこちらの言うことは聞けないらしい。
　敵意を見せたので消したらあっさり消滅した。

　つまり大賢者の隷属とやらもかなり不安定と見た。
　男の方が乗り気で女の方がビクビクしていたのは恐怖で縛ったんだろう。

　彼ら彼女らは命令されるとやらなきゃいけないような気がするという時と
　やらないといけない強制感がある状態の2種類がその時々で起きるんだろうね。

「笑い声がうるせぇな『レイ・レイン』」

　俺は反対属性の光で巨大な体を穿つがあんまり効いてないな。

『痒い痒いわ！ 貴様らなど我の息ひとつで死滅させてやろう【死の吐息】』

　やべっ！ 普通そういう1番ヤバい技は先に使わねぇだろうに……

「逃げろぉぉぉ！『暗愚の月』吹きとばせ」

　俺は魔力大鎌より漆黒の斬撃を放つ。
　一瞬、抵抗した後ブレスが2つに別れそのまま消滅しこの戦場を〇で囲む様に息が放たれた。

　煙の様なブレスが消えるとその場は悲惨と言うしかなかった。
　世界樹の森が抉れていた、何とか真っ二つにしたお陰で世界樹は逃れたがそれでも相当ヤバいな。

　既に死んでいた人族の兵士はミイラになり更に今死んだ連中も干からびていた。

『ふん、あれを斬れる技があるとはやはり貴様は危険だな？』

　俺を睨むその気配はかなり強まった。
　そんな時に唸り声と咆哮が辺りに響き渡る。

『『グルゥゥゥゥ』』

　10m級の大きさの白と黒の狼が俺の周りに降り立つ。

『『ワォォォォォン！！！』』

　2人の咆哮がビリビリと鳴ると世界樹の周りに結界が張られる。
　ん？ ハニカム構造ってこいつらそんなに頭良かったのか？

『蜂の巣、食べようとすると硬い』『だから真似した！』

『『でも噛み砕いて美味しい！』』

　ズッコケるわ！！ それにしてもこのふざけた邪龍はどうしたもんかなぁ。

　そんな時に上空から何かが落ちてくる。
　俺はそれを『アポート』で引き寄せると漆黒の大鎌だった。

　大鎌を握った瞬間に俺の体には漆黒のローブが現れ、髪は真っ黒と銀髪のハーフになった。
　何か前世でこういう髪型昔流行ったよな？
　チャラい若い人が右から見ると金、左から見ると黒髪ぃぃとかやってはっちゃけてるの何回か見た事あるぞ？

　この大鎌は死属性対抗神器らしい。
　つまりこの邪龍が暴れた時に使っていた武器を送ってくれたということは神々ですらこれは問題と考えてるようだ。

　正しく死神と言える様な風貌になったけどこのイメージって前世風味なんだよなぁ。

　この世界の死神ははっきり言いたくないが幼女が旗持ってる。
　前世で言うならバスガイドさんチックだ。

　迷える魂を導く者として扱われていておどろおどろしい感じでは無く可愛い導き手と奴だ。

　多分俺が大鎌を好んで使うからだろうね？

『くっ、貴様ずるいぞ！ ハティとスコルなど邪龍に匹敵する化け物ではないか！』

　その化け物に成り上がったお前に言われてもな……
　それにこの大鎌が来た理由が2つある。

　触った瞬間に指令書が来るなんてブラック過ぎるだろ。

・こいつを倒すと自動的に邪龍が復活
・こいつは魂の状態で逃げれる可能性

　を考慮して死神の神器をこちらに渡してきたわけだ。
　逃がさないという神々の意思表示でもある。


　創造と破壊、邪と聖、生命と死の様に死=破壊では無いのが救いかな？
　ハティとスコルも月と太陽だからな。

　しっかし参ったぞ？ 勇者に寄る封印を勇者を取り込むことで破ったがこちらには聖属性の特化は居ないんだよなぁ。

　チクチク削るしか無いのだ。
　今は黒子と琥珀がガンガン攻めて俺が邪龍の魔法陣を破壊して攻撃を潰しているが
　20m級ともなると通常物理攻撃ですら脅威なんだよね。

　エルフ族の戦士達は片腕や片脚が無い人が多い。
　最初に勇者が放った攻撃で触れた瞬間に死ぬのでは無くじわじわと侵食してくることに気付いて先程のブレスを受けた瞬間に判断し切り落としたのがよく分かる。

　どこかに聖属性の武器ないですかね？
　神様頼んだ！

『ソーラーレイ』『ルナティックブレイドォ』

『『複合陰陽消滅』』


　えぇ……化け物級の攻撃が鱗1枚割れただけって

『ぎゃああああ！ 貴様らぁぁぁ』

「うわぁぁちっさ。そこはきっちり龍族の特性を持ってるのかよ！！
　じゃあ追加で『暗愚の月』」


　鱗1枚が人で言う毛1本無理やり抜けて痛っ、って感じらしいけど怒るなよ。

　最強種故に痛みに慣れて無いし、大賢者さんも長年魂的存在だから痛みに弱いとかね。
残念過ぎる。

　ん？ 痛み？

「『呪・痛覚異常』」

　俺の手から紫色の光が邪龍へと向かうと

『ぎゃあああああああああ』

　効くんかい！
　でもダメージないんだよねこの呪い……どうしよう。