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世界樹を救え?

224話

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 アホな自滅を聞いた翌日の朝。
 偵察部隊の報告に面白いことが書いてあった。

・徴集兵の脱走

 そして軍法会議の判決と見せしめの処刑時に
『何もしてくれない、自分達ばかり良いもん食べてお前ら貴族の駒と遊びのせいで俺らは死ぬんだァァ』
 と最後の言葉はあるかの問いで発狂して処刑が止まる始末。

 平民の徴集兵が恐慌状態に陥り身内で揉めてるらしい。
 偵察部隊はその間に色々と事実と嘘を混ぜこみ離間工作を決行した。

 それは『本来昨日、潰走した軍の平民は士気上げの為に酒や料理が振る舞われるはずだったが貴族が横領。
 労うこともせずに特攻予定捨て駒にすることを画策している』という噂を流したのだ。

 そして離間した人を使い更に離間を勧誘させては精霊や黒子と琥珀にお菓子を対価賄賂に協力を求めて安全に国に帰している最中とのこと。

 詳しい話が聞きたくて偵察部隊の1人を呼ぶとドヤ顔で報告してるけどこれ最早戦争になるか?
 勇者が表に出てくるかそれとも自称大賢者が出てくるんじゃないか?

 なんかあの自称大賢者は自らの力を使いがって無い気がしている。
 梟の姿をしている時点で元人族か何かしらの術で憑依してるんじゃないかと予想している。

「大本を叩けるって考えたらアリなのかもな」

 俺もその間抜けな軍や貴族、自称大賢者を見てみたくなってきたので出兵の準備だけを頼んで視認転移で上空を散歩する。

『わー人がいっぱい!』『でも何か変だねー!』

 うん、俺もそう思う。
 何かしらの暴動が起きてるのか? 魔法が尻を叩くように軍の後続に飛んでいる。

 そんな中、一際目立つ少年が居る。
 平気で人を殴ってる所を見るとかなり面倒なやつだな。

 そして確実に勇者と分かる点があった。
 この世界、変身の魔道具があって髪や瞳の色は変えれるけど染色技術は無い。

 横暴に振る舞う少年は金髪に根元が黒の髪色をしており言うならばプリンなのだ。

「あれはダメだろ?『アポート』」

 俺は抜剣して人を斬ろうとした勇者の剣を空間魔法で奪った。
 剣を見てみるがあまり品質は良くないなぁ。


「要らねー……ほら返すぞ?」

 武器がなくなり驚く勇者君に俺は上空から剣を投げるのではなく落とした。

 勇者の5m位離れた所に上から剣が落ちて来て地面に刺さり腰を抜かして驚いていた。
 しかし魔力で強化し軽く重力魔法をかけた剣は地面に深く刺さりこれが抜ければ聖剣!

 みたいな感じになってしまった。
 ふと、変な気配が近付いて来るのを待っていると

『ふむ? 不思議な魔力を感じて来てみれば貴様の様な奴がどうしてこんな所に居るのだ?』

 尊大な態度を取る梟が居た。態度と姿形が合ってないよ。ワイズマン気取りですかい?

「あっ! お前が自称大賢者か? 何者なんだ?」

 少し殺気を持ったが不毛な争いは避けるらしい。
 すると梟から影が噴出して全てが黒の漆黒の人型を象る。

『ふむ、我はヤマト・タチバナと言う君達の世界で言うなら転移者だ。
 勿論神に大賢者というスキルを貰ったのさ!

 この世界の危機を救ったのにも関わらず神は我を見捨て国も裏切った。
 我はその時の憎悪で人を超越したのだ!』

 ふぅん? でもさ? 神様に力を貰ったら帰れないだろにね? 
 地球の神に力を貰ったなら出し入れ自由だろうけど
 他の世界の力に干渉出来る様な自由さは神に無さそうだし。

 下級神ですら現世に来てしまうと手出し出来ない位不便なんだよ。

「へぇ? ヤマトね。俺はケビンだ。お前らから見たら敵かもな。
 世界樹の守護者の協力者だ。それにしても野営でカレーを食うわ、士気上げの食料横領するわ少しは戦う気あんの?」

『うぐっ、何故この世界にはロクデナシしか居らんのだ!』

 俺は笑ってしまった。

「いや正確に言ってくれよ? 自称大賢者さん? 操りやすい奴の中にはだろ?」

 おっと? 怒らせ過ぎたかな?
 殺気が1段階上がったな。

『勇者と我が損耗なく世界樹に辿り着けば良いのだ!』

 ん? どういうことだ?

「ふーん? なら自称大賢者さん1つ聞きたいんだけさ?
 勇者って鍛錬した? 危機的状況ですら無い今は多分鍛錬しないとゴミのままだぞ?」

『はははは! そんな訳なかろうが! 勇者だぞ! 
 邪龍を討伐した時の勇者や大賢者、剣聖は最初から最強格だった!』

 あらら? 確かに魔力はかなり多いが多分弱いと思うんだよなぁ。

『怯えるが良い。我らが死の贈り物を渡しに行くその時までな!』

 そういうとちっぽけな大賢者は梟に戻り帰ろうとした。

『トリニクー?』『美味そう』

『『じゅるり』』

『我は食肉では無いわっ!!』

 かっこよく帰る所か逃げ帰ったな。

「戻るか。行くぞーい!『ゲート』」

『『ほーい!』』


 俺達が砦に戻ると歩兵、弓兵、賑わし隊、斥候、精霊兵と並んでいた。

 兵士達の目の前の壇上にはアラレオさん、今代の巫女、世界樹の精霊、そして助っ人参加の俺達の仲間がたっていた。

 そこに俺達が上空から降りてくる。

『ぜんたーい敬礼!』

 冗談で教えた敬礼や隊列の組み方を一糸乱れず動くエルフ族。

 そしてそんなエルフ達の目の前には勇猛な気配を常に発露させドンと構えているエルフ族の戦士。

 ポカーンとしているのはアラレオさんにしごかれていたユリアさんやカイナ、トア、ミアだ。
 驚いているのはグロリアスだけだ。

 俺をかなり見ていて口を動かしているな。

『後で話がある』

 ふーん何かしら気付いたんだ……まぁのらりくらりかわそう。

 そして全員が俺の方を向いているので仕方ないからキャラを作ろうっと。
 声に魔力を含ませ一言だけ告げる。

『直れ』

 エルフ族達は敬礼を取りやめ気をつけをする。

『さて、諸君らの練度の高さを見て俺は安心したぞ。
 敵の士気はダダ下がりだ。諸君らの先制攻撃が効いた形になるな?』

 俺はニヤリと笑い全員を見渡すように視線と顔を動かすと斥候・偵察部隊が誇らしげだ。

『だが、敵にも強大な力を持つ者居るだろう。
 しかし……そんな時は守りたい者を、信じる存在・仲間を思い出し声をあげよ。

 願え・叫べ・お前らの望みは何だ!!』


『『『『我らの願いはこの森の安定!安寧! 子供たちの幸福のみ!』』』』

『良かろう、行くぞ!』

『『『『『『『うぉぉぉぉぉ』』』』』』』

 たった数百人とは思えない程の咆哮が響き渡る。
 まぁ実際は精霊達も集まってきて声を上げていたので数倍に膨らんでるだけどね。

 そして今回の総指揮のアラレオさんに渡す前に何故か決起集会が終わってしまった。
 厳しめの鬼軍曹キャラを演じていたらそのまま終わってしまった。

 俺はチラリとアラレオさんを見ると目に涙を浮かべ顎が外れんばかり驚き集会が終わったことを悲しんでいた。

 ごめんよ……今日は俺のスペシャリテを出すから許してくれ!

 決起集会という名のバカ騒ぎの宴会が目的だ。
 昼から夕方まで食べて飲み明日に備えるのだ。

 今日見た限りでは強行軍として来ても開戦は明日じゃないと無理だからだ。
 既に3分の1離間やマヌケの代償になってるんだけど帰る気はないらしい。

「私は要らない子? ねぇねぇねぇ!?」

 こう拗ねる酔っ払いのアラレオさんが目下1番の難敵だったりする。
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