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世界樹を救え?
212話
しおりを挟む溢れ出た魔力はたちまち人型を象る。
緑色の魔力は粒子を放ちかなり綺麗だ。
そして先程までの戦闘でこの周辺には陽射しが入って来ていてその粒子に反射してかなり幻想的だ。
「まぁ、俺に対する敵意や殺気が無ければな」
俺も対抗して最大限の魔力を放つと黒色の魔力が俺を中心にして雷の様な火花を散らす。
連動して闇の精霊達も魔力を顕現させてるらしい。
『お前がナーを悲しませる奴か!』
そう言う世界樹の精霊に俺は笑ってしまう。
何千年、下手すりゃ何万年生きてるエルフに愛称で呼ばれてもな。
「ならお前はあれだな。世界を身勝手に壊そうとする世界樹の役目を放棄した愚か者だな?」
『違う! ナー達頑張った! でもそれを他の種族が壊した!』
俺は何言ってんのコイツ? ってなる。
「はぁ? それを言ったのは誰だ?」
『エルフは私の守護者、エルフがそう言ってる!!』
「なら俺は魔法神と破壊神の代行者とでも名乗っておこうか?
世界を身勝手に滅ぼそうとする奴を破壊しにきた」
先程からこの件に関して神が関わってると思う位に魔力や体の調子が良く、尚且つ処分しなきゃならない奴が選定が終わってるが如く頭に流れ込んでくるのだ。
『嘘を着くな! お前なんてキエロ! 『ユグドラシル・ブレス』』
そう言うと手のひらから圧縮された魔力球を俺に飛ばしてきた世界樹。
「うわぁ……森を管理して植物を繁栄するとか言って自分から壊すとかヤバいな『闇喰』」
精霊達が自分を使えと言ってくるので任せてみたが……
「くっ、結構キツイか?」
魔力を吸収してるがかなり押されている。
俺も破壊属性の魔力で分解し吸収しやすい様にしてるが永遠と言える位に魔力が尽きねぇ。
『ふーん? ピンチー?』
俺の肩に手を乗せて語りかけて来たのは黒子だった。
「あぁ、めっちゃピンチだ。助けてくれない?」
『いーよ!その代わりハンバーグが食べたい!琥珀もそう言ってた!』
「OKだ!行くぜ」
ハティの黒子が俺の両肩に手を置くと不思議と通じ合う様な感覚になり思考内に声が聞こえて来る。
「『我らは深淵を求める者なり、幾霜月の時が経とうと変わらず暗い喰らい牙を向くだろう、故に全てを取り込む者なり【月狼牙喰】』」
先程まで闇喰が起きていた闇精霊達が狼の姿に変わる。
真っ黒な狼だ、そして魔力を吐き出すと巨大な牙を持つ口になった。
世界樹が放った魔力球を真っ向から噛み付き吸収なんて生易しい表現では無く噛み砕き始めた。
『そんなっ!? 』「ヒィィィ!」
世界樹の精霊の驚愕と巫女の悲鳴が響く。
俺の周りには巨大な黒色の狼が居た。
頭を擦り付けてきて甘える所を見て黒子だとすぐにわかる。
「黒子、お前カッコ可愛いな!」
『ふふん! でしょでしょー!琥珀も後で褒めてあげてね?
手持ち無沙汰になった龍達がここを破壊しようとしてたの潰してたから』
おい!龍神話が違ぇじゃねぇか!(何も会話してない)流石に龍複数体相手とか無理だぞ?
コイツらの食欲によって世界が救われたなんてな……グッジョブ前世の俺! 良く料理してた! と全て自分の功績風に言ってみたが似合ねぇな。
全部俺1人じゃいつも出来ねぇことばかりだからな。
そういう意味じゃこの世界に来てからの俺はやっぱり愚者かな?
『君は愚者な時もあるけれど、それでもその愚者の行動に救われた人は多いんだよ?
もっと自信を持たないとねー?』
はははっ、前世から俺のことを知るこいつに言われるとは何か変な気分だよな。
世界樹の精霊は魔力を吸収し終わった変質した闇精霊達によって拘束されていた。
俺は巫女と世界樹の精霊の頭を掴む。
巫女は怯え、世界樹の精霊は困惑している。
「お前らとりあえず着いてこい。『ロングゲート』」
先程吸収した魔力を使いノース辺境伯の更に北にある魔の森へと転移した。
俺達が来たことにより弱い魔物や生物は慌てて逃げ、そこそこ強い魔物は実力をはかろうとする。
そして強者の魔物は身を隠した。
『ここは……?』「え? え?」
2人とも周りを見渡し驚いている。
「お前らが管理する森に比べてどうだ? 魔の森は世界樹の魔力なんか一欠片も要らないし使わなくてもこんなに繁栄している。
そもそもお前らの知識が間違ってんだよ……ここの森を見ろよ?
太陽の光が無けりゃ植物は育たないし魔力が足りなくなるだろうよ」
そう伝えると巫女は震える手ですぐ側に生えている良薬草を摘む。
「そうか……私達は間違っていたのか。それも数千年も」
えぇ……しゅごい。数千年あの草も生えない土地になってる森を世界樹の魔力だけで維持してきたのかよ。
『ねーねー? 君達世界を破壊しそうになったことちゃんと神界に謝りに行った方が良いよ?』
黒子……何と常識的なことを言えるようになったんだ。
俺はそれだけで目頭が……ぶん殴られた。
そういやまだ魔力パス繋がってるから思考読み取れるんだった。
「痛っ! 悪かったって! さて、戻るぞ黒子!」
項垂れた世界樹の精霊と巫女を連れて再び世界樹の森へと転移するのであった。
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