210 / 296
世界樹を救え?
209話
しおりを挟むあれから数日で外縁部分の間伐や土壌改良を行ってきたが……1つだけおかしな点があった。
「エルフの国に入る正規ルートが見つからないんだが?」
カイナも慌てていた、カイナの知る正規ルートの場所に行ってもそこに道は無く鬱蒼とした森しか無かったからだ。
それに世界樹も森への魔力の供給を止めるつもりは無いらしい。
寧ろ、間伐のおかげで各樹木に渡せる魔力が増えて森自体が俺達の侵入を拒む様にも見える。
世界樹と言った神話の生物に魔力制御で勝てたとしても魔力量でゴリ押しされたら意味無いから接続自体を切ろうとはしてない。
そして先程から甘い匂いが漂い始め、俺の周りに居る闇の精霊達が慌ただしく動いている。
「ふむ? 何が居るのかな? 十中八九アイツだろうなぁ」
ぐんぐんその匂いの発生源に向かうと樹木の中に女性の様な奴が居てそのまわりにはウツボカズラの様な巨大な植物系魔物がひしめいていた。
「そんな甘い匂い出した所でこんな奥地に入ってくる魔物や生物はいないんだけどな」
コイツらは本来は虫系の魔物を引き寄せ食べる植物なのにね。
『君らどうしてここに来たの?』
あ、ドライアドって精霊に近しい魔物だっけ?
人型だけあって流石に言葉は交わせるか。
「ん? 世界樹やエルフが間違った知識を使って無駄な魔力を使ってるから正しにきたが、現状拒否されてるしエルフ族も敵対するだろうからぶっ飛ばしに来た」
ドライアドの女性は手を横に振ると周りに居たウツボカズラみたいな多分プラントが離れていった。
『君と君が誘引の耐性が高過ぎる。他の人は防御してるからその内勝てるけど貴方達は無理』
指をさされたのは俺とグロリアスだ、薬師に植物系の状態異常は効かないぞ?
幼少期から状態異常にかかる薬物を扱い耐性を付けるのが当たり前の職業だしな。
俺の場合は漏れ出てる魔力を勝手に吸っては状態異常をガードしてくれる精霊が居るからな。
『世界樹、疲れてる。でも私達世界樹の派生。逆らえない、生き物居なくなった。森広げられない』
シュンとするドライアドに俺はどう答えたら良いのか分からなかった。
「いやワーム呼び込むまでぐちゃぐちゃになった土壌では植物もその内枯れるだろうさ」
『ダメ、ゼッタイ! それだけは……』
そんなこと言われてもなぁ?
「んで? ドライアドはなんて言ってるさね?」
グロリアスはそう俺に問いかけてきた。はて? 普通に話してるじゃないか?
「はぁ……あんた土竜の時もそうだったけどアタシ達には全く言葉を交わしてる様に見えなかったよ」
言語理解の理不尽さを目の当たりにした気がするよ。
「状態異常に俺とババアがかからないことと、世界樹の疲弊が酷いがドライアド達も聞き入れて貰えないらしい」
そう言うとグロリアスはポーチから1本の瓶を取り出しドライアドにぶっかけた。
最初は驚いた顔をしていたドライアドだったが……
『これ! 凄い美味しい! 好き! 仲間になる!』
俺はそのままグロリアスに伝えるとグロリアスに契約の魔法陣を書けと言われる。
「はぁ? 契約の魔法陣なんてしら……うわぁこの感覚気持ち悪いなぁ」
口に魔法陣の名前を出した途端全く無い知識の筈が頭の中で魔法陣が浮かんだのだ。
嫌な顔をしつつも俺は魔法陣を書く、そしてお互いの契約の条件を翻訳して互いに魔力を注ぐと
「アドちゃんさね! これで世界樹の縛りからは抜けられたね? さて! 行くよ!」
俺は魔法陣を消し1つ疑問に思ったことを聞 いてみる。
「ババアは何で契約の魔法陣なんて知ってたんだ?」
少し渋い顔をした後にグロリアスは話始めた。
「昔は契約の魔法陣は婚姻に使ったり奴隷に使っていたんだよ。
それにこの契約の魔法陣はお互いに納得した状況じゃないと使えないし
今の奴隷の様に隷属の首輪も使わないから信頼関係のある者同士でしか使わないものだったんだよ。
それに隷属の首輪は先に契約がされていると上書きできない特性もあったからね。
そもそも隷属の首輪は契約の魔法陣の劣化品なんだよ。
手っ取り早いからと主流になってしまったんだけどね」
「へぇ、めんどくさい。これは本当の話を俺がミスして話さなきゃいい感じだな」
まぁ、2日もすれば忘れるだろうしな。
俺は都合の悪いことや面倒事に関しては鳥頭で居ようと心がけている。
下手に関われば厄災は俺に降ってくるのだからね。
違法奴隷商や裏の人間にはヨダレものの話だからな。
ドライアドとプラント型の魔物がめちゃくちゃ有能だ。
同じ植物系魔物だけあってトレントのいる場所が分かるらしい。
陽の光が射し込む状況をドライアドに見せると驚いていた。
『木が元気になった? 何故?』
「木が必要な物はな? 陽の光と空気と水と土の中の栄養だ。それを魔力で全て補っていたんだ。
それが無くなれば世界樹の負担は消えるさ」
それに俺達どころかカイナですら迷いかけていた森の中をドライアド達は迷うことなく進んでくれる。
それから更に数日が経ち、半分位の森の間伐が終わり休憩しているとプラントとドライアドが同じ方向を見て震え始めた。
『バケモノきた……』
表情豊かだなぁなんて思うほどドライアドの顔は真っ青になっていた。
「「ケビンさん」」
トアとミアは立つことすらキツいらしい。
俺はあのアホ龍神の経験があるのでそこまで気にしてなかった。
「トア、ミア。自分の身を護りたいと願いながら魔力を循環させろ。龍達も俺達みたいなちょっと魔力が出てる存在を気にしない。
正し、他の連中には言うぞ? アイツらはプライドが高いから敵意だけは持つな」
物凄い魔力の塊を結構遠くにぶつけてるのがよく分かる。
その度に地中に張り巡らされた魔力線に魔力がグンッと流れるのを感じる。
龍神は元凶を止めるより現状維持を狙ってる……?
「ん? もしかしてアイツ……俺に任せようとしたな?」
ちょっと仕返ししたろ!
「トア! 厄介事ばかり持ってくる龍神様なんて大嫌いって心で念じてみ?」
「え? あっ!はい!」
遠くで『グハッ!』という空耳が聞こえた気がする。
「神に喧嘩を売るなんてあんたぐらいだよ……」
失礼な。多少舐めてるだけだ!
------あとがき------
ウツボカズラを知らない人に対しての補足です。
ウツボカズラは筒状になっていて中から甘い匂いを出して虫を食べる食虫植物です。
あまり思い浮かばないという方はポ○モンの植物みたいなウ○ボ○トを思い浮かべてください!
※感想でご指摘? 助言があったのであとがきを訂正しました。
ハエトリソウは食虫植物ですが。
ラフレシアは食虫植物ではありません甘い匂いに惹かれて真ん中には虫だらけですけどね……
15
お気に入りに追加
2,524
あなたにおすすめの小説
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
転生5回目!? こ、今世は楽しく長生きします!
実川えむ
ファンタジー
猫獣人のロジータ、10歳。
冒険者登録して初めての仕事で、ダンジョンのポーターを務めることになったのに、
なぜか同行したパーティーメンバーによって、ダンジョンの中の真っ暗闇の竪穴に落とされてしまった。
「なーんーでーっ!」
落下しながら、ロジータは前世の記憶というのを思い出した。
ただそれが……前世だけではなく、前々々々世……4回前? の記憶までも思い出してしまった。
ここから、ロジータのスローなライフを目指す、波乱万丈な冒険が始まります。
ご都合主義なので、スルーと流して読んで頂ければありがたいです。
セルフレイティングは念のため。
好色一代勇者 〜ナンパ師勇者は、ハッタリと機転で窮地を切り抜ける!〜(アルファポリス版)
朽縄咲良
ファンタジー
【HJ小説大賞2020後期1次選考通過作品(ノベルアッププラスにて)】
バルサ王国首都チュプリの夜の街を闊歩する、自称「天下無敵の色事師」ジャスミンが、自分の下半身の不始末から招いたピンチ。その危地を救ってくれたラバッテリア教の大教主に誘われ、神殿の下働きとして身を隠す。
それと同じ頃、バルサ王国東端のダリア山では、最近メキメキと発展し、王国の平和を脅かすダリア傭兵団と、王国最強のワイマーレ騎士団が激突する。
ワイマーレ騎士団の圧勝かと思われたその時、ダリア傭兵団団長シュダと、謎の老女が戦場に現れ――。
ジャスミンは、口先とハッタリと機転で、一筋縄ではいかない状況を飄々と渡り歩いていく――!
天下無敵の色事師ジャスミン。
新米神官パーム。
傭兵ヒース。
ダリア傭兵団団長シュダ。
銀の死神ゼラ。
復讐者アザレア。
…………
様々な人物が、徐々に絡まり、収束する……
壮大(?)なハイファンタジー!
*表紙イラストは、澄石アラン様から頂きました! ありがとうございます!
・小説家になろう、ノベルアッププラスにも掲載しております(一部加筆・補筆あり)。
テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
転生王子の異世界無双
海凪
ファンタジー
幼い頃から病弱だった俺、柊 悠馬は、ある日神様のミスで死んでしまう。
特別に転生させてもらえることになったんだけど、神様に全部お任せしたら……
魔族とエルフのハーフっていう超ハイスペック王子、エミルとして生まれていた!
それに神様の祝福が凄すぎて俺、強すぎじゃない?どうやら世界に危機が訪れるらしいけど、チートを駆使して俺が救ってみせる!
【味覚創造】は万能です~神様から貰ったチートスキルで異世界一の料理人を目指します~
秋ぶどう
ファンタジー
書籍版(全3巻)発売中!
食べ歩きだけが趣味の男、日之本巡(ひのもとめぐる)。
幻の料理屋を目指す道中で命を落としてしまった彼は、異世界に転生する。
転生時に授かったスキルは、どんな味覚でも作り出せる【味覚創造】。
巡は【味覚創造】を使い、レストランを開くことにした。
美食の都と呼ばれる王都は食に厳しく、レストランやシェフの格付けが激しい世界だけれど、スキルがあれば怖くない。
食べ歩きで得た膨大な味の記憶を生かし、次から次へと絶品料理を生み出す巡。
その味は舌の肥えた王都の人間も唸らせるほどで――!?
これは、食事を愛し食の神に気に入られた男が、異世界に“味覚革命”を起こす物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる