上 下
205 / 296
世界樹を救え?

204話

しおりを挟む

 俺達は全力で駆け抜けていた。

 ある程度の実力者になると馬車や馬を使うより自分の身で走った方が速い。

 俺は少し疲れた表情をしているミアとトアを見ながらも2人とも成長したなぁと感じていた。

 2人は後衛職でそもそも全力で走り続ける機会等無い。
 撤退戦だけだろうな、まぁそうならない様に計画を立てないといけないんだけど。

 今はアサダ州跡地を抜けて帝国に忍び込んでいた。
 帝国の関所を転移魔法のゲートですり抜けた時は全員に呆れられた。

 ユリアさんの提案でカロンが普通に関所を通り北の辺境伯に直接向かい
 ドワーフ族へ金属加工の話を聞きに行く工作もした。

 冒険者証を返却したと言ってもカロンは共和国トップクランの一員で何と商業ギルドのランクもSらしい……化物かよ。

 軽く騒ぎを起こしてる間に俺達が関所をすり抜けて遠くに離れろという作戦だ。

 半日も過ぎると東の辺境伯と南の辺境伯の領地の境目に着いていた。

 今回は帝国に入るにあたり、全員のギルド証を商業ギルドに切り替えている。
 俺は特殊ギルド員とCランク商人、トアとミアはFランクの新人商人としてユリアさんの補助として行動していることになっている。

 商業ギルド全面協力の元、最初に辿り着く街で特殊依頼の手紙運搬をする為に街に入る手筈になっている。

 問題はカイナだったりする、商業ギルドの通信水晶の連絡網でエルフ達は好き勝手やったお陰で今現在かなり立場が悪いらしい。

 他国の使者ということでエルフの国に賠償金を払うか犯罪奴隷に落ちるかと選択を迫っている最中という馬鹿さ加減だ。

「カイナがたまたま、まともだったのかそれともまともな奴程出国していると見た方がいいのか……」

 カイナは俯いてしまう、ユリアさんは頭が痛そうだ。

 野営を1日挟み俺達は全力で走りきり出発して2日目の夕方には東の辺境伯領の首都スティアにやって来ていた。


 え? 到着が早すぎるって? そんなもん連続でゲートを発動して移動していたのだから当たり前だ。

 潤沢所か余りまくってる使い所の無い魔力をここに使わなければいつ使うのだろうね。

 そうやって道中の距離をグッと5分の1程に縮めていたのだ。

 スティアで俺達は門番にギルド証とカイナの身分証明証代わりの商業ギルドマスターの書状を渡し通過して商業ギルドに入る。

 するとメガネをかけたお馴染みのあの人が待ち構えていた。

「ご立派になられましたねケビン様?」

「うわぁ懐かしいなぁ。アレンサリーナさんは変わらないですね?」

 そう挨拶すると微笑み幼い頃によくその美貌でからかわれていたことを思い出した。

「お姉ちゃん!!」

「あら? 久しぶりですねカイナ。貴方は何故ここに?」

 多分、俺が動くと聞いただけでここに来たであろうアレンサリーナさんに少し笑ってしまった。

「入口で話していると嫉妬の視線が痛いから個室に行きません?」

「あら? それはホテルの個室ですか?」

 そう言ってツンツンしてくるアレンサリーナさんに俺はタジタジだった。
 するとトアが俺の腕を取り、アレンサリーナさんを牽制する。

「おぉ……あの小さかったケビン様がモテモテだとは」

 やめてほんとに……嫉妬の視線が害意や敵意に変わり始めてるからさ!

「あの、やめません? この国の貴族にいい思い出無いんでね?」

 確かうっすらぼんやりと思い出される辺境伯の選民意識バリバリのバカ息子が洗礼式に居た気がするんだよ……

 そして東の辺境伯は寄子を一切助けないことを有名だし男爵子爵子息令嬢が大変な思いをしたことを思い出していた。

「もう遅いようですよ?」


「狙ってやってません? 俺らの経路や入国情報握ってますよね?」

 この人絶対こちらと揉めさせて邪魔者排除しようとしてないか?

 俺達が入口から離れようとした時に大声でぶっくり太った青年が入って来た。
 どこかで見たこと……無いな。

「おい、そこの亜人共。俺様の嫁にしてやろう光栄だろ?」

「馬鹿だな、いや馬鹿すぎる……」

 俺はため息が出そうになるのをギリギリ我慢する。
 亜人なんて差別意識バリバリの言葉を吐いて嫁とはそんな人居るなら乗っ取り目的以外無いだろうに……

「お前ら聞いてんのか、フゴォッ」

 俺達が完全無視してることに憤り怒鳴り声をあげた瞬間に鳴った不意をつく豚鼻の音に吹き出してしまった。

「ぶっ、はっ!? やっちまった!」

 全員、顔を背けている。
 ベテラン商人は流石だ、鉄仮面でも被ってるのかという位無表情だった。

「貴様!俺様はサルバン子爵家嫡男だぞ!!」

 ん? サルバン……? あれこいつ……

「調教してやろうか!?」

 俺がふと思い出したことを威圧しながら言うとサルバン子爵家嫡男様は顔を青くする。

「だよな? お前あれだろ? 騎士団に徹底的にボコボコにされたあの時のバカ子爵令息だよな?」

「ヒィィ、あの時の高位貴族の子息様でしたか……
 申し訳ありません、すぐに目の前から消えます。
では!」

 そう言って転びながら出て行った。

「結局アイツ何しに来たんだろうな?」

 その後、個室に移りイースティア辺境伯領では貴族の権力が強く困っているらしい。
 まぁ昔ながらの体制で徐々にだが衰退してる様だ。

 小規模、中規模商人は他の領地に移り住み土地勘の利を使い店舗無しの馬車商人で連合を組んで仕事をしてる様だ。

「さて、カイナがここに来た理由やケビン様のご事情は理解しましたが……
 とある男爵家を助けてあげたいのですが何かアイディアはありませんか?」

 えぇ……知らんよ。

「「ケビンさん……」」

 トア、ミア。そんなうるうるした瞳で見つめないで……
しおりを挟む
感想 74

あなたにおすすめの小説

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

転生5回目!? こ、今世は楽しく長生きします! 

実川えむ
ファンタジー
猫獣人のロジータ、10歳。 冒険者登録して初めての仕事で、ダンジョンのポーターを務めることになったのに、 なぜか同行したパーティーメンバーによって、ダンジョンの中の真っ暗闇の竪穴に落とされてしまった。 「なーんーでーっ!」 落下しながら、ロジータは前世の記憶というのを思い出した。 ただそれが……前世だけではなく、前々々々世……4回前? の記憶までも思い出してしまった。 ここから、ロジータのスローなライフを目指す、波乱万丈な冒険が始まります。 ご都合主義なので、スルーと流して読んで頂ければありがたいです。 セルフレイティングは念のため。

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

転生王子の異世界無双

海凪
ファンタジー
 幼い頃から病弱だった俺、柊 悠馬は、ある日神様のミスで死んでしまう。  特別に転生させてもらえることになったんだけど、神様に全部お任せしたら……  魔族とエルフのハーフっていう超ハイスペック王子、エミルとして生まれていた!  それに神様の祝福が凄すぎて俺、強すぎじゃない?どうやら世界に危機が訪れるらしいけど、チートを駆使して俺が救ってみせる!

【味覚創造】は万能です~神様から貰ったチートスキルで異世界一の料理人を目指します~

秋ぶどう
ファンタジー
書籍版(全3巻)発売中! 食べ歩きだけが趣味の男、日之本巡(ひのもとめぐる)。 幻の料理屋を目指す道中で命を落としてしまった彼は、異世界に転生する。 転生時に授かったスキルは、どんな味覚でも作り出せる【味覚創造】。 巡は【味覚創造】を使い、レストランを開くことにした。 美食の都と呼ばれる王都は食に厳しく、レストランやシェフの格付けが激しい世界だけれど、スキルがあれば怖くない。 食べ歩きで得た膨大な味の記憶を生かし、次から次へと絶品料理を生み出す巡。 その味は舌の肥えた王都の人間も唸らせるほどで――!? これは、食事を愛し食の神に気に入られた男が、異世界に“味覚革命”を起こす物語である。

異世界に転生をしてバリアとアイテム生成スキルで幸せに生活をしたい。

みみっく
ファンタジー
女神様の手違いで通勤途中に気を失い、気が付くと見知らぬ場所だった。目の前には知らない少女が居て、彼女が言うには・・・手違いで俺は死んでしまったらしい。手違いなので新たな世界に転生をさせてくれると言うがモンスターが居る世界だと言うので、バリアとアイテム生成スキルと無限収納を付けてもらえる事になった。幸せに暮らすために行動をしてみる・・・

処理中です...