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世界樹を救え?
204話
しおりを挟む俺達は全力で駆け抜けていた。
ある程度の実力者になると馬車や馬を使うより自分の身で走った方が速い。
俺は少し疲れた表情をしているミアとトアを見ながらも2人とも成長したなぁと感じていた。
2人は後衛職でそもそも全力で走り続ける機会等無い。
撤退戦だけだろうな、まぁそうならない様に計画を立てないといけないんだけど。
今はアサダ州跡地を抜けて帝国に忍び込んでいた。
帝国の関所を転移魔法のゲートですり抜けた時は全員に呆れられた。
ユリアさんの提案でカロンが普通に関所を通り北の辺境伯に直接向かい
ドワーフ族へ金属加工の話を聞きに行く工作もした。
冒険者証を返却したと言ってもカロンは共和国トップクランの一員で何と商業ギルドのランクもSらしい……化物かよ。
軽く騒ぎを起こしてる間に俺達が関所をすり抜けて遠くに離れろという作戦だ。
半日も過ぎると東の辺境伯と南の辺境伯の領地の境目に着いていた。
今回は帝国に入るにあたり、全員のギルド証を商業ギルドに切り替えている。
俺は特殊ギルド員とCランク商人、トアとミアはFランクの新人商人としてユリアさんの補助として行動していることになっている。
商業ギルド全面協力の元、最初に辿り着く街で特殊依頼の手紙運搬をする為に街に入る手筈になっている。
問題はカイナだったりする、商業ギルドの通信水晶の連絡網でエルフ達は好き勝手やったお陰で今現在かなり立場が悪いらしい。
他国の使者ということでエルフの国に賠償金を払うか犯罪奴隷に落ちるかと選択を迫っている最中という馬鹿さ加減だ。
「カイナがたまたま、まともだったのかそれともまともな奴程出国していると見た方がいいのか……」
カイナは俯いてしまう、ユリアさんは頭が痛そうだ。
野営を1日挟み俺達は全力で走りきり出発して2日目の夕方には東の辺境伯領の首都スティアにやって来ていた。
え? 到着が早すぎるって? そんなもん連続でゲートを発動して移動していたのだから当たり前だ。
潤沢所か余りまくってる使い所の無い魔力をここに使わなければいつ使うのだろうね。
そうやって道中の距離をグッと5分の1程に縮めていたのだ。
スティアで俺達は門番にギルド証とカイナの身分証明証代わりの商業ギルドマスターの書状を渡し通過して商業ギルドに入る。
するとメガネをかけたお馴染みのあの人が待ち構えていた。
「ご立派になられましたねケビン様?」
「うわぁ懐かしいなぁ。アレンサリーナさんは変わらないですね?」
そう挨拶すると微笑み幼い頃によくその美貌でからかわれていたことを思い出した。
「お姉ちゃん!!」
「あら? 久しぶりですねカイナ。貴方は何故ここに?」
多分、俺が動くと聞いただけでここに来たであろうアレンサリーナさんに少し笑ってしまった。
「入口で話していると嫉妬の視線が痛いから個室に行きません?」
「あら? それはホテルの個室ですか?」
そう言ってツンツンしてくるアレンサリーナさんに俺はタジタジだった。
するとトアが俺の腕を取り、アレンサリーナさんを牽制する。
「おぉ……あの小さかったケビン様がモテモテだとは」
やめてほんとに……嫉妬の視線が害意や敵意に変わり始めてるからさ!
「あの、やめません? この国の貴族にいい思い出無いんでね?」
確かうっすらぼんやりと思い出される辺境伯の選民意識バリバリのバカ息子が洗礼式に居た気がするんだよ……
そして東の辺境伯は寄子を一切助けないことを有名だし男爵子爵子息令嬢が大変な思いをしたことを思い出していた。
「もう遅いようですよ?」
「狙ってやってません? 俺らの経路や入国情報握ってますよね?」
この人絶対こちらと揉めさせて邪魔者排除しようとしてないか?
俺達が入口から離れようとした時に大声でぶっくり太った青年が入って来た。
どこかで見たこと……無いな。
「おい、そこの亜人共。俺様の嫁にしてやろう光栄だろ?」
「馬鹿だな、いや馬鹿すぎる……」
俺はため息が出そうになるのをギリギリ我慢する。
亜人なんて差別意識バリバリの言葉を吐いて嫁とはそんな人居るなら乗っ取り目的以外無いだろうに……
「お前ら聞いてんのか、フゴォッ」
俺達が完全無視してることに憤り怒鳴り声をあげた瞬間に鳴った不意をつく豚鼻の音に吹き出してしまった。
「ぶっ、はっ!? やっちまった!」
全員、顔を背けている。
ベテラン商人は流石だ、鉄仮面でも被ってるのかという位無表情だった。
「貴様!俺様はサルバン子爵家嫡男だぞ!!」
ん? サルバン……? あれこいつ……
「調教してやろうか!?」
俺がふと思い出したことを威圧しながら言うとサルバン子爵家嫡男様は顔を青くする。
「だよな? お前あれだろ? 騎士団に徹底的にボコボコにされたあの時のバカ子爵令息だよな?」
「ヒィィ、あの時の高位貴族の子息様でしたか……
申し訳ありません、すぐに目の前から消えます。
では!」
そう言って転びながら出て行った。
「結局アイツ何しに来たんだろうな?」
その後、個室に移りイースティア辺境伯領では貴族の権力が強く困っているらしい。
まぁ昔ながらの体制で徐々にだが衰退してる様だ。
小規模、中規模商人は他の領地に移り住み土地勘の利を使い店舗無しの馬車商人で連合を組んで仕事をしてる様だ。
「さて、カイナがここに来た理由やケビン様のご事情は理解しましたが……
とある男爵家を助けてあげたいのですが何かアイディアはありませんか?」
えぇ……知らんよ。
「「ケビンさん……」」
トア、ミア。そんなうるうるした瞳で見つめないで……
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