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共和国編〜好きに生きる為に〜

202話 カイン・クロス視点

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 父上が他国に視察に行ってる間、私が当主代行をしている。

 最近頭を悩ませているのが……

 バァンと扉が開かれる。

「カイン様、キャロリーナ様が脱走されました!!」

 使用人の1人が慌てて執務室に入ってくる。

「はぁ……慌てるのはわかるがノック位はしてくれ」

 どうしてこんなにも我が妹はお転婆になってしまったんだ……
 セラも我が実妹ながら会話は面倒臭いと単語でしか話してくれない。

 2人にもクロス領の子供を執拗に狙う貴族が居るから外出は控えるようにと言っても聞きやしない。

 机の上にあるハンドベルを鳴らす。
 これは魔道具でこれを魔力を込めて鳴らすと連動して各地にある鐘が鳴る仕組みだ。

 ほぼ毎日鳴っているので捜索隊や関係各所に迷惑をかけていると頭が痛いよ。
 そして領地の人々もあまり私を歓迎していない雰囲気がある。

 前回の神罰では父上と騎士団の大活躍があったが、私は何も出来なかったというより首魁に見向きもされなかった。

 本来なら只管修行をしたいのだけれどそれをしたら更に民に白い目で見られてしまうだろう。

 そして1枚の書類を見てため息が出てしまう。

「どうして騎士団の決済書が領主の執務室にあるんだ……難解過ぎるぞクロス家!」

 1時間後、ようやく書類作業が終わると同時に部屋にノックがされたので

「どうぞ」

 そう答えると扉が開く。
 自分と同じ金髪の髪を綺麗に整え結っている妹が入って来た。


「お兄様!セラばっかり旅行に行けて狡いです!」

 その両手にはこの間の神罰で勝手に独断行動して使役してしまったスライムを抱いている。

 セラの指針も珍しかったがキャロは比類のない程珍しい運命神の指針だ。
 キャロが言うには基礎能力に超直感が付いて成功率の低い使役や状態異常系の魔法が相手に掛かりやすいらしい。

「はぁ……キャロ? 神罰騒動の時に独断行動を勝手にした上にもうすぐ学園入学の為に帝都に向かうから今回は行けないことになったじゃいか?
 それにまた孤児院近く屋敷に出入りしてると聞いたよ?

 あそこはクロス家の持ち物じゃないから立ち入ったりするのは良いけどちゃんと手土産を持って行ってね?」

 そう注意するとキャロはぷくーっと頬を膨らませる。

「しかし執事達はあそこの屋敷の管理費は我が家から出ていると聞きました。なら我が家の物でしょ!!」

「キャロ!!」

 私はついつい怒鳴っていた。それだけは言ってはならないことなのだ、アイツがもう戻って来ないとしてもだ。

「我が家はあの屋敷の主に大変失礼なことをしたのだ。
 訴えられたら負ける程にな。怒ってこちらに感情を向けたならまだ良かったが……

 呆れられて国を出ていってしまったのだ。
 なのにあの屋敷の使用人の給料は未だに支払われてるのだ。
 お節介で屋敷の主不在の間に我が家が勝手に報告を差し止めたりしたせいで
 敵対したと思われたりして使用人達も自死しようとしたのを必死に止めたのだ。

 絶対にそのことを彼女達に言ってはいけないよ?」

 商業ギルドクロス領支部に頼み口座から引き落としにしていたことを
 ケビンは4年間も眠っていたので全く覚えてない上に
 口座も見ない為、支払ってること自体気づいてないとは誰も気づいてなかった。

「もう!知らない!! 行こっ!スムちゃん!」

 キャロが出て行くと笑えてきてしまう。
 最近キャロは前世の記憶が蘇ったことを明かしたがケビンとは違い記憶を知識として思い出した為に人格の変貌は無かった。

 しかしボードゲームの商品開発でココ最近誰かと争ってるらしく上手く行ってないと報告が上がってきていた。

 それでも文字覚えの知育玩具で儲けて居るので私よりかは資産は既に多かったりする。

 実妹のセラもハビスのお手伝いをしてはお小遣いをせびっていた。
 そんな優秀な妹達の突き上げに焦りや嫉妬が吹き出そうになるがあの日の誓いを忘れる訳にはいかない。

 執務が終わると私は真剣を持ち訓練場に向かう先ずは体を動かし走り気の運用を使い体術の訓練を始める。

 最近は騎士団でも上の方の人達しか相手にならないので今は残ってる上位の騎士達は領内の巡回に出払ってる。

 周りの領地や現在の領内の情報が欲しいが影の使用は許可されてないし帝国各地に潜入して神罰被害の全貌掌握をしている。

「随分と荒れてますな?」

 声のした方を見るとワクロだった。

「ワクロ総隊長、巡回は終わったのかい?」

「はい、無事終わりましたが多少のならず者が入り込んでいるので監視体制を組んで作戦行動中です。
 ではお相手させてもらいましょう」

 ワクロと剣を合わせる。

「剣筋がブレブレですよ? キャロ様ですか? それともセラ様ですか?」

「さぁね?」

 私は剣を当てて気の発露でワクロの不意をつこうとしたが百戦錬磨の騎士団総隊長には余裕で対応された。

「カイン様……気の発露で水の気が出たのですから豪の剣を使うなら気の扱いをもっと鋭くしないと意味がありませんよ!」

 そういうワクロ総隊長は火の気の発露でどんどん私の気を乱していく。

「それにケビン様達のことを言われても精神的に崩されていたら意味がないですよ!」

 その一言でグラァっと視界が歪む。
 あの優秀な弟は大問題ばかりを起こす。
 やはりケビンに対して吹っ切れたと思っていても劣等感に苛まれる。

「ほら簡単に乱れた……はい。終了です!」

「カイン様は剣の技よりも心、精神統一の修行をしましょう。
 ケビン様もダンジョン騒動では相当精神乱れて動けなかったらしいですよ」

 ワクロのその言葉に固まってしまった。
 アイツにそんなことがあったなんてな。

 神罰闘争では目の前で冒険者達のバラバラになった物が空から降ってきて私は吐いてしまった。
 そんな無様な様子から下位の騎士団からはバカにされていたりした。

 ケビンの失敗談で喜ぶなんて酷い兄だと思うが私の精神統一の糧になってくれケビン。


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