203 / 296
共和国編〜好きに生きる為に〜
202話 カイン・クロス視点
しおりを挟む父上が他国に視察に行ってる間、私が当主代行をしている。
最近頭を悩ませているのが……
バァンと扉が開かれる。
「カイン様、キャロリーナ様が脱走されました!!」
使用人の1人が慌てて執務室に入ってくる。
「はぁ……慌てるのはわかるがノック位はしてくれ」
どうしてこんなにも我が妹はお転婆になってしまったんだ……
セラも我が実妹ながら会話は面倒臭いと単語でしか話してくれない。
2人にもクロス領の子供を執拗に狙う貴族が居るから外出は控えるようにと言っても聞きやしない。
机の上にあるハンドベルを鳴らす。
これは魔道具でこれを魔力を込めて鳴らすと連動して各地にある鐘が鳴る仕組みだ。
ほぼ毎日鳴っているので捜索隊や関係各所に迷惑をかけていると頭が痛いよ。
そして領地の人々もあまり私を歓迎していない雰囲気がある。
前回の神罰では父上と騎士団の大活躍があったが、私は何も出来なかったというより首魁に見向きもされなかった。
本来なら只管修行をしたいのだけれどそれをしたら更に民に白い目で見られてしまうだろう。
そして1枚の書類を見てため息が出てしまう。
「どうして騎士団の決済書が領主の執務室にあるんだ……難解過ぎるぞクロス家!」
1時間後、ようやく書類作業が終わると同時に部屋にノックがされたので
「どうぞ」
そう答えると扉が開く。
自分と同じ金髪の髪を綺麗に整え結っている妹が入って来た。
「お兄様!セラばっかり旅行に行けて狡いです!」
その両手にはこの間の神罰で勝手に独断行動して使役してしまったスライムを抱いている。
セラの指針も珍しかったがキャロは比類のない程珍しい運命神の指針だ。
キャロが言うには基礎能力に超直感が付いて成功率の低い使役や状態異常系の魔法が相手に掛かりやすいらしい。
「はぁ……キャロ? 神罰騒動の時に独断行動を勝手にした上にもうすぐ学園入学の為に帝都に向かうから今回は行けないことになったじゃいか?
それにまた孤児院近く屋敷に出入りしてると聞いたよ?
あそこはクロス家の持ち物じゃないから立ち入ったりするのは良いけどちゃんと手土産を持って行ってね?」
そう注意するとキャロはぷくーっと頬を膨らませる。
「しかし執事達はあそこの屋敷の管理費は我が家から出ていると聞きました。なら我が家の物でしょ!!」
「キャロ!!」
私はついつい怒鳴っていた。それだけは言ってはならないことなのだ、アイツがもう戻って来ないとしてもだ。
「我が家はあの屋敷の主に大変失礼なことをしたのだ。
訴えられたら負ける程にな。怒ってこちらに感情を向けたならまだ良かったが……
呆れられて国を出ていってしまったのだ。
なのにあの屋敷の使用人の給料は未だに支払われてるのだ。
お節介で屋敷の主不在の間に我が家が勝手に報告を差し止めたりしたせいで
敵対したと思われたりして使用人達も自死しようとしたのを必死に止めたのだ。
絶対にそのことを彼女達に言ってはいけないよ?」
商業ギルドクロス領支部に頼み口座から引き落としにしていたことを
ケビンは4年間も眠っていたので全く覚えてない上に
口座も見ない為、支払ってること自体気づいてないとは誰も気づいてなかった。
「もう!知らない!! 行こっ!スムちゃん!」
キャロが出て行くと笑えてきてしまう。
最近キャロは前世の記憶が蘇ったことを明かしたがケビンとは違い記憶を知識として思い出した為に人格の変貌は無かった。
しかしボードゲームの商品開発でココ最近誰かと争ってるらしく上手く行ってないと報告が上がってきていた。
それでも文字覚えの知育玩具で儲けて居るので私よりかは資産は既に多かったりする。
実妹のセラもハビスのお手伝いをしてはお小遣いをせびっていた。
そんな優秀な妹達の突き上げに焦りや嫉妬が吹き出そうになるがあの日の誓いを忘れる訳にはいかない。
執務が終わると私は真剣を持ち訓練場に向かう先ずは体を動かし走り気の運用を使い体術の訓練を始める。
最近は騎士団でも上の方の人達しか相手にならないので今は残ってる上位の騎士達は領内の巡回に出払ってる。
周りの領地や現在の領内の情報が欲しいが影の使用は許可されてないし帝国各地に潜入して神罰被害の全貌掌握をしている。
「随分と荒れてますな?」
声のした方を見るとワクロだった。
「ワクロ総隊長、巡回は終わったのかい?」
「はい、無事終わりましたが多少のならず者が入り込んでいるので監視体制を組んで作戦行動中です。
ではお相手させてもらいましょう」
ワクロと剣を合わせる。
「剣筋がブレブレですよ? キャロ様ですか? それともセラ様ですか?」
「さぁね?」
私は剣を当てて気の発露でワクロの不意をつこうとしたが百戦錬磨の騎士団総隊長には余裕で対応された。
「カイン様……気の発露で水の気が出たのですから豪の剣を使うなら気の扱いをもっと鋭くしないと意味がありませんよ!」
そういうワクロ総隊長は火の気の発露でどんどん私の気を乱していく。
「それにケビン様達のことを言われても精神的に崩されていたら意味がないですよ!」
その一言でグラァっと視界が歪む。
あの優秀な弟は大問題ばかりを起こす。
やはりケビンに対して吹っ切れたと思っていても劣等感に苛まれる。
「ほら簡単に乱れた……はい。終了です!」
「カイン様は剣の技よりも心、精神統一の修行をしましょう。
ケビン様もダンジョン騒動では相当精神乱れて動けなかったらしいですよ」
ワクロのその言葉に固まってしまった。
アイツにそんなことがあったなんてな。
神罰闘争では目の前で冒険者達のバラバラになった物が空から降ってきて私は吐いてしまった。
そんな無様な様子から下位の騎士団からはバカにされていたりした。
ケビンの失敗談で喜ぶなんて酷い兄だと思うが私の精神統一の糧になってくれケビン。
2
お気に入りに追加
2,533
あなたにおすすめの小説
幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
転生王子の異世界無双
海凪
ファンタジー
幼い頃から病弱だった俺、柊 悠馬は、ある日神様のミスで死んでしまう。
特別に転生させてもらえることになったんだけど、神様に全部お任せしたら……
魔族とエルフのハーフっていう超ハイスペック王子、エミルとして生まれていた!
それに神様の祝福が凄すぎて俺、強すぎじゃない?どうやら世界に危機が訪れるらしいけど、チートを駆使して俺が救ってみせる!
悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜
ちゃぶ台
ファンタジー
彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。
社内の人間からも取引先の人間からも一目置かれる彼だったが、不運な事故に巻き込まれあっけなく死亡してしまう。
せめて「男」になって死にたかった……
そんなあまりに不憫な近藤に神様らしき男が手を差し伸べ、近藤は異世界にて人生をやり直すことになった!
もらい物のチートスキルと持ち前のビジネスセンスで仲間を増やし、今度こそ彼女を作って幸せな人生を送ることを目指した一人の男の挑戦の日々を綴ったお話です!
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
異世界転生!俺はここで生きていく
おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。
同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。
今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。
だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。
意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった!
魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。
俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。
それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ!
小説家になろうでも投稿しています。
メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。
宜しくお願いします。
転生したらチートでした
ユナネコ
ファンタジー
通り魔に刺されそうになっていた親友を助けたら死んじゃってまさかの転生!?物語だけの話だと思ってたけど、まさかほんとにあるなんて!よし、第二の人生楽しむぞー!!
称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる