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共和国編〜好きに生きる為に〜

199話

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「それで? 世界樹が枯れるってどういうことだ?」

 俺は最後にぶっ込まれたヤバい出来事に粗雑な質問をしていた。

「あのぅ……世界樹の周りには森があります。古代文明時代に人々の争いで
 世界樹周りの森は半径10km位しか残りませんでした。

 しかし私達の祖先は世界樹の力を分けてもらいながら植樹して行き国と呼ばれる程の森を作ったのです。

 しかし最近は植樹しても外縁部分の樹木は枯れ世界樹自体も枯葉が目立つ様になりました。
 国の長老達はそれを人族のせいだと言い出し前回の騒動時に争いを仕掛けました。

 しかし今回の神罰で森も滅茶苦茶になって長老達は人族に補償させろと言い出したので神罰功労者は国に顔が効くと思い全員に当たっていたのです」

 俺は話はわかったけど感想は『だから?』だった。
 推測話ばかりで他人様に責任押付けます宣言をしてくるエルフに頭が痛い。

「まず一言で言うぞ? お前らの自己責任だろ?

 それと森の維持を何故世界樹に頼ってんだよ?」

 カイナは首を傾げていてこの程度の知識量じゃあそもそもがお話にならない。

「森の中は陽が当たるか? 森の中に川は通ってるか? 植樹はどの様にして場所を決めて行ってる?」

 カイナの頭はプンスカプンスカと壊れかけの機械くらいの煙が出てる幻覚が見える程困惑と混乱していた。
 俺のする質問に偶に反応するのを見て大体掴めるかなーって位だった。

 そもそも森の中で陽が当たらない程木々が近い感覚で植えてあるってヤバくね?

「じゃあカイナ。1つだけ教えてやる。今回の件はエルフ族の自業自得だ。
 そして神罰で森を滅茶苦茶にしたのは多分意図的だ。

 そもそもこの地の近くにある植物は世界樹に頼ってるのか?
 植物にだってな、生きる力があるんだよ。

 陽の光と水、それに地面に生える草さえあればそれなりの年月が経てば循環するんだよ」

 そう言っても全く分からないみたいだ。

「はぁ……ユリアさんサリア? ババアどう思う?」

 2人は頭が痛そうに、ババアは美味しそうにクッキー頬張ってる。

「無理無理ー! 長老達の頭の固さとプライドの高さは数千年前から変わらないから。
 そのくせ生き意地だけは悪いから国がどうなろうが偉いんだから守れとか言うんだよねー」

 幻術を問いたババアはそう言って笑っていた。こいつ本当に何歳なんだ……?

「えっ!? 魔人族!? 絶滅した筈では?」

 カイナが驚く、いや至高の文明を築いた種族が絶滅する訳ないじゃん。
 してたら多分ほかの種族も死んでるぞ?

「そして森の中に籠ってる癖に自分達の情報や知識が正しいと思ってるアホの子達だよー

 知識なんて調べる人が居てこそなのにね? そしてその殆どが魔人族の聞きかじりの知識を再現しようとした中途半端品でね?

 それを自分達が発明したんだーってこちらに知識を盗んだ奴が居るとか騒いだ奴らも居るらしいよ?」


 ケラケラと笑う魔人族はマジで栄華を極めていたんだな。
 そもそもほぼ魔法を使わないエルフが魔人族に魔法から作った技法を盗んだというのがどだい無理な話だな。

 笑われるな確かに。

「カイナお前……まずはここで農業をしろ」

「「「???」」」

 カイナ、ユリアさん、サリアがキョトンとしている。

「あー……それは良いかもねぇ! コイツらエルフの国は植物との共生を大々的に言ってるのに植物のことを全く知らないからね。

 それに……精霊頼みの農業をしてたけどアンタらの行動を見てると農業も上手くいって無いでしょ?」

 かなり落ち込んだ表情をするカイナ。

「ははっ、そもそも精霊の方が生物として神に近しい種族としてエルフより上なのに
 それを忘れて精霊に命令される位の扱いされてるなら言うこと聞かないよな。

 それに精霊って果物よりお菓子の方が好きだぞ?」

 俺のそんな言葉にカイナは顔を青くし自分の光精霊を見てパクパクとクッキーを食べてる様子を見る。

「そんな……」

「だからお前らは知ろうともせずに長い間一緒に過ごしてるんだよ。
 最初期精霊がこの地に降り立った時、精霊をエルフ族は神の使者として崇めていたらしいぞ?

 それが逆転して命令する立場とはな……何とも皮肉だよな?」

 そういった過去の文献にもエルフ族の傲慢さを書いてる文献もあったりする。

 魔人族が魔人王種族が居なくなりまとまりが無くなって崩壊しなきゃここまで傲慢にはなれなかったんだろうなぁ。




 街の中でガタガタと震えながら爪を噛む1人の青年が居て目が血走っていた。

 先程ケビンに馬鹿にされ精霊を奪われた阿呆のエルフ族の男性だった。
 何かアイツに嫌がらせしようと思っていると遠くの広場に子供達が沢山居た。

 そこには女性と子供しか居らずに女性はふんわりとした空気感を持つ綺麗な女性だった。

「ヒヒヒ、あの女下等種にしては綺麗じゃねぇか……
 俺様に御奉仕させてやるよぉぉ!」

 そう言うとエルフ族の男性はエルフ族の中では忌避される魔法を使っていた。
 そもそも光精霊が言うことを聞かなくなっていた理由はこういった性根にあった。

 しかし精霊にとって契約とは自分の命よりも重い物があり今回はケビンが行った屈服による契約の上書きに喜んで飛び込んだのだ。

 上級魔法と思われる火の大玉の散弾が上空から降り注ぐ。
 女性は気付き子供達の目の前に立つと手から光を放つと結界を張る。

「ほう? 結界を2重3重に張れるのか? 益々欲しくなった。アヒャヒャヒャ! 『ゲノムポイズン』」

 街中では絶対に使わない様な魔法を人族を下に見るエルフ族の男性には気にならなかった。

 街の遠くから怒り狂った鬼がやってくるとは知らずに……


「アヒャヒャヒャヒャヒャ! あ゛? 結界に浄化だと? 生意気だな?」

 そう言うと剣を抜いていた。

 しかしそこに上から声が降ってきていた。

「『炎鬼・走狗』人の嫁に何しようとしてんだテメェ……」

 紫の炎を纏う赤髪の男が目の前に飛び込んで来たのだ。

「下等種が上位精霊と契約だと? 生意気だ寄越せ。
 俺様に仕える栄誉を与えてやろう。それにお前の女も献上させてやるよぉぉ?」 

 ニチャニチャと笑うエルフ族の男性の顔は既に壊れていた。

「ネロ? あの人怖い」

 エルフ族の男性は目の前でネロと呼ばれた男性に近づくのが気に入らなかった。

「テメェ俺の嫁にしようとした女に近づくんじゃねぇ!」

 ネロと呼ばれた男性はため息を吐いたと思ったら目の前から消えていた。

「はぁ……お前に対して人の嫁に欲情してるからムカついたが弱すぎて怒ることすらばかに思えて来たわ」

 エルフ族の男性は憤怒の表情をして後ろから聞こえる男性の声に振り返ろうとした時に何故か倒れる。

「はぁ……まだ気付いてないのか? 脚と腕を斬られて気付かないとは弱すぎるぞ?

 俺達はこの間までSランククラスの魔物やその上の魔物と戦ってたんだよ。お前クラスの戦力はゴロゴロ居る世界なんだよ」

 そう言うと赤髪の男性は急に殺気を出し上から圧力をかけてくる……そして耳元で

「下等種と俺達を貶してくるがお前が1番下等で井の中の蛙だったな?
 おノボリくん。田舎から出てきたのに君の人生はここで終わりだよ」

 そう言うと軽く蹴飛ばされた。
 対抗しようとも手も足も出ない……いや無かった。

「アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ」

 只管笑い続けるエルフ族の男性はすぐに気持ち悪いと住民に通報されて兵士に引きづられながら地下牢に連れていかれた。

 数日間笑い続けた男性は4日目に消えていったのであった。
 兵士の牢獄がある近くには変な怪談噺が出て笑い男と有名な場所になるのであった。



 そんな様子をナギはずっと遠くから見ていた。

「ふーん、弱者と見ていた連中に負けて精神が壊れるなんて弱いなぁ。
 まぁアタシもケビンに負けた時にかなり痛かったけどな」

 そう言ってエルフ族の男性の遺体を引き取るとすぐ側にタビが転移してきた。

「タビさん、エルフ族の男性は死んだよ? 遺体はどうする?」

 そうナギが問いかけると涼しい顔をしたタビはクスッと笑い片方の口角だけを上げて

「ならエルフ族の国に返してやりましょう。
 人族を下等種と呼び一般人に襲いかかったアホとして。ナギさん、映像記録魔道具は使ってましたね?」

「あぁ、ケビンが一応国からの使者だから何かあったら使えと言われていたからな」

 そう言って出すとタビはほくそ笑んでいた。

「では私はエルフ族の国にこのアホの死体を返してきます」

 そう言うと魔道具と遺体を連れて消えていった。

「あのエルフ族、喧嘩売った相手が悪過ぎるよなぁ。
 負けたネロが超越者の中じゃ1番下なんて聞いたら発狂しそうだよな……ふふっ。
 アタシもかーえろっと!」

 そう毛伸びして消えていったのであった。
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