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共和国編〜好きに生きる為に〜

187話

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 話し合いの次の日俺はネロと一緒に農業区画で外壁を作った。

 勿論、遊びの部分も作り侵入できそうで出来ない造りにした。
 現段階では誰にも配って無い、認識票が無いと罠にかかるパターンの物を作った。

 これの作り方は既に保証契約を済ませていて魔法陣の図解と作り方も事細かに資料に載せている。

 魔法陣の識別番号は適当に振っておいた。
 あからさまに0001なんてしていたら確実に狙われるからだ。

 最大8桁まで組み込めるので実質分解出来ないと読み込めない様になってる。
 魔法陣を刻み込んだミスリルに鉄をコーティングしているので偽造はほぼ不可能に近い。

 自分で作ってて思ったが、ギルド証も同じ原理で動いているのでは? と感じて魔法陣による解析を行うとその通りだった。

 ギルド証に関しては古代文明の物や、神からの贈り物という認識の為に
 新たに保証契約した所で全くもって問題は無かった。

 それから1週間後遂に罠にかかる連中が居た。
 そもそも認識票があるから鍵すらかけていなかったのでバリバリ普通に侵入出来る。

 甘い誘惑香につられた虫の様に見事に罠にかかってる4人を見て俺とネロは呆れていた。

「おやおや? これはこれは代表者様の側近ともあろうかたが勝手に街に侵入して更には盗賊行為ですかな?
 それと1人はこの間うちで働きたいと亡命して来た方ですね?」

 そう言うと側近の男は喚き散らし始めた。
 隷属をかけているのに裏切った男は苦痛に顔を歪めている。

「貴様らぁそれを寄越せぇぇ」

 うわぁ……もはや発狂に近いな。
 それとあちらの物資の中にも種芋だったり野菜の種だってあるんだけれど。

 それにこいつら何でこんなに顔腫れてるんだ?
 汚れまくってるのは散々外側から侵入しようとして失敗したのに入口の鍵が開いて居たからだろうな。
 そう思いつつも俺とネロはニヤニヤしながらトマトをかじり味の品評会をしている。

「むむっ、少し糖度が高すぎるな。これじゃ料理には向かないかもなぁ。塩かけてみるか?」

「あぁ。頼む。青い方が美味いかもしれん。酒のアテに良さそうだ」

 何こいつ渋いこと言ってるんだ?

「酒のツマミと言ったらジャーキーだろうに?」

 俺はマジックボックスからオークジャーキーを出して食べネロにも渡す。

「このトマトとジャーキーを合わせて食べたら美味いな」

「ここに塩気の強いチーズを挟むともっと美味いぞ?」

「ぐぞぉぉぉぉ」

 落とし穴の中でガンガンと頭をぶつける側近の男。

「お前らうるさいぞ。『ショックボルト』」

 俺は魔法で気絶させた後、ネロにこいつらを牢屋に引渡しに行ってもらった。

「ケビン兄。今日も頑張る」

 ネロと入れ替わりで来たのはセラリウムだ。

「よっし、今日も収穫するぞ。トウモロコシからだな。1番上のトウモロコシはこっちの籠に入れて、2番目の方はこっちな?」

「わかった」

 2人でトウモロコシとヤングコーンを収穫していく。
 麦は風魔法で根元から刈り取りマジックボックスへ。

 選別は農家の人達がやるからな。
 4時間程作業を続けてセラとトウモロコシの収穫を終えると

「さて、セラよ。お主には素晴らしい知恵を授けようぞ?」

「ほんと!?」

 俺はBBQセットを農業区画の端っこにセットして火を焚き金網をセットする。
 トウモロコシをそのまま剥かずに焼き始める。

 それに驚くセラ。
 だんだん黒く焦げていく葉っぱにドギマギしている様だな。

 俺は黒く焦げた葉っぱを剥いてやるとぷりっぷりの実が付いたトウモロコシが現れる。

「ほら食べてみろ? 貴族が美味いもん食べてるなんて半分しか正解じゃないからな?」

「む? もう半分は?」

 俺はニヤリと笑い

「冒険者や農家や漁師の人達が鮮度抜群の美味しい食材を食べてる」

 そう言うとトウモロコシにセラはかぶりつく

「甘い……美味しい」

 俺はここで秘伝のアレを取り出すぜ!
 前世の日本人なら誰しもが知ってる焼きとうもろこしだ。

 今度は剥いたトウモロコシを焼き、それに醤油を刷毛で塗って焼くを数回繰り返して行く。

 俺は物足りないので焼きおにぎりも作る。

「美味。神秘を見た」

 なんか妹の何かやべえ扉を開いた気もするが気にしないでおこう。
 農業貴族令嬢になったって住民は感謝するだけで困るのは親父だけだからな。

 それに男爵位なら普通に畑で鍬持って耕してるなんて有り得るしな。

 その後はネロも合流して食べてはセラに知識を与えて農業体験は終了した。

 今回急成長させた野菜や穀物達は上手くいったのだけはやり方を記録に残して
 同様のやり方で味が大味になった物はリストだけ付け加えた。

 さて最後に1つ言いたい。

「あれ? 何で俺が普通に領地経営並みのことしてんの?」

 こんな言葉を呟いた時、商業ギルドマスターとタビとハビスがニヤリと笑っていた。

「煽てられてやり過ぎたぁぁぁ。俺は魔法を研究したいのに」

「おやおや? ケビン様? 農業魔法はきっちりの確立なさったではありませんか?」

「む? 確かにそう言われるとそうかもしれん。まぁセラが農業貴族令嬢になったかもな。頑張ってハビス」

 煽てられて乗せられ、最後に軽く仕返しをする。立派な愚者だと思うなぁ。
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