180 / 296
共和国編〜好きに生きる為に〜
179話
しおりを挟むスラム地区改革計画書は商業ギルドマスターが諸手を上げて賛成した。
朝から2人で構想を練っていると孤児院に客人がやって来たと通達があり門に向かうと
兵士長のサマールと冒険者ギルドのギルドマスターだった。
門の前まで行くと突然兵士長が土下座した。
「すまなかった。私の統率が甘かったが故にこの国にとっての英「おい、勝手に美談にするなよ」……そうだな」
俺は英雄と言う勝手な称号を呼ぼうとしたサマールに釘を刺した。
この街だけなら何とでも言えば良いが、結局人は言いふらし周りの人間が利用しようと近寄ってくる。
英雄ならーーなんて枕詞をつけて。
この世界の英雄は破格のお人好しだ、どんな物語や史実を見ても無償で国難に立ち向かえと言われている様な物もある。
頭がイカれてるとしか言えない、貴族の席や報酬すら用意されてないし
その頼んだ国難で命を懸けて救い同じく命を散らした話ばかりだ。
たまに国難が終わったと同時に暗殺した?って聞きたくなるくらいの話もあるのだ。
「私は兵士長を辞することにした」
俺は頭がおかしくなりそうだった。
正直な話、これも美談を加害組織が被害者に言ってるだけにしか聞こえないのだ。
さぞかし本人にとっては頭の痛い話で大変なんだろうけどさ……
解決策すら無くトップ変わります宣言されても困るのだけれど。
「だから?」
全ての感情や意見を集約した結果の言葉だった。
「へ?」
えっ!? なんでこの人こんなに困惑してるの?
俺がおかしなことを言ってるみたいじゃんか。
そんな時に隣にいた人物が声を荒らげた。
「お前は何をしに来たんだっ!! 人の時間を奪うならそれ相応の謝罪と補償を持ってくるのが当たり前だろうがっ!」
商業ギルドマスターだ。突然大きな声を出したので驚いたが俺の言いたいことは代弁してくれそうだ。
「いや、その……」
「私達は今何を聞かされてるんだ? お前の自分語りがしたいなら広場にでも行って楽器を弾いて語ってくればよかろう!」
ほんとそれ、前世でも思っていたが全く内容の無い記者会見と一緒だよな。
組織の場合は悲しい顔して謝罪してトップが辞める。
観てる側からしたら『は? だから?』これ一辺倒だよな。
トラブルの経緯や改善案を聞きたいのに責任をとって辞めますは
ハッキリ言って『トラブルが起きてもう辛いので辞めてトラブルから逃げます!』って言う宣言と自分語りでしかない。
「アンタが兵士長辞めようが何しようが俺には関係のないことだ。
普通は同じ過ちが起きない様に仕組みを作りますなんてことを言うのがトップのあり方なんじゃ?
街にあるデカい組織のトップがこれだけ雁首揃ってるんだから
是正の為に私が議員になります位のことを伝えに来たと思ったんだが期待外れでしたね?」
そう、商業ギルドマスターに問いかけると苦笑いしていた。
この規模の街を回すトップなら頭が固く信念だけで動いてる奴の方が良くなるのだ。
この街、いやこの国では不正が横行し過ぎているからそういった人が1人でも居れば利がないと逃げ出す奴も居るが
目先の利益じゃなくても将来の利益を見てる奴は絶対に来る。
議員と言う職業には周りにはかなりの人がサポートに居るのだから。
「後は勝手に判断してくれ。俺達は俺達なりの考えで動く。街の人にも言っておけ、無償で施しを受けるだけの何かをしたのか?って」
そこで肩を跳ねさせたのは冒険者ギルドマスターだった。
俺はため息が出そうになるが何とか我慢する。
呆然としてるサマールは置いておいて次はこっちか。
「それで? 冒険者ギルドは何か用ですか?
それと俺は今商業ギルド所属なので何を言っても聞きませんけど?」
おい……泣くなよ? なんか俺が虐めてるみたいじゃないか。
冒険者ギルドの内情は多少聞いている、治癒師や錬金術ギルドにぼったくられてカツカツだってことも。
そもそも商業ギルドマスターに確認したが緊急事態発令中は
ギルドと言う括りで要請では無く強制出来るのに強く言えなかった連中が悪い。
まぁ、トップ2人が前線に出ていればそうなるだろうけれどな。
「まぁ、そんなに厳しく言わないんですの!」
「ユリアさんですか? 同族とは言えそこまで甘くしてられませんよ?
だって俺より相当年上ですからね」
「この子はエルフで言うとお子ちゃまですの~」
えぇ……エルフって何歳までお子ちゃま何だよ。
「なら尚更親の庇護下に入ってなきゃダメじゃないですか……」
「い、嫌だ! あんな堅苦しい家に居たくないんだ」
この人もしかして良家のお嬢様なのかよ!
そう思って居るとユリアさんは
「この子は8大氏族の族長の次女ですの!
エルフの国にはトップが女王、その下に8氏族長で国を回していますの」
うわっ人間で言う貴族じゃん。めんどくさ
「ならユリアさんが同族のよしみでオーク卸したら良いじゃないですか?
俺なんて街の連中から無償提供しろみたいな命令口調で言われたんで出したくないですよ」
「なら、ギルドマスター自体辞めたら良いんですの。私達のクランに入れば保護してあげますの」
「辞めます……もう無理いやぁ」
あらら泣き始めちゃったよ。ユリアさんが抱きしめて頭を撫でるその姿は何かイケナイ本になりそうだ。
文化侵食は止めておこう、前世で言われていた腐の力は恐ろしい程強くなるからな。
「さぁケビン君、この子の腕を治してあげるんですの!」
「えっ!? 知り合い価格で白金貨10枚で」
咄嗟に出た言葉だった。
「も、もう少しお安くなりませんの?」
目を泳がせてそう言うユリアさん、あれ? この人もしかして……
元Sランク冒険者なのにお金もってないのか?
後ろで手を揉んでる商業ギルドマスターの餌食になるのは時間の問題っぽいぞ。
6
お気に入りに追加
2,563
あなたにおすすめの小説

誰も要らないなら僕が貰いますが、よろしいでしょうか?
伊東 丘多
ファンタジー
ジャストキルでしか、手に入らないレアな石を取るために冒険します
小さな少年が、独自の方法でスキルアップをして強くなっていく。
そして、田舎の町から王都へ向かいます
登場人物の名前と色
グラン デディーリエ(義母の名字)
8才
若草色の髪 ブルーグリーンの目
アルフ 実父
アダマス 母
エンジュ ミライト
13才 グランの義理姉
桃色の髪 ブルーの瞳
ユーディア ミライト
17才 グランの義理姉
濃い赤紫の髪 ブルーの瞳
コンティ ミライト
7才 グランの義理の弟
フォンシル コンドーラル ベージュ
11才皇太子
ピーター サイマルト
近衛兵 皇太子付き
アダマゼイン 魔王
目が透明
ガーゼル 魔王の側近 女の子
ジャスパー
フロー 食堂宿の人
宝石の名前関係をもじってます。
色とかもあわせて。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~
名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

チートな親から生まれたのは「規格外」でした
真那月 凜
ファンタジー
転生者でチートな母と、王族として生まれた過去を神によって抹消された父を持つシア。幼い頃よりこの世界では聞かない力を操り、わずか数年とはいえ前世の記憶にも助けられながら、周りのいう「規格外」の道を突き進む。そんなシアが双子の弟妹ルークとシャノンと共に冒険の旅に出て…
これは【ある日突然『異世界を発展させて』と頼まれました】の主人公の子供達が少し大きくなってからのお話ですが、前作を読んでいなくても楽しめる作品にしているつもりです…
+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
2024/7/26 95.静かな場所へ、97.寿命 を少し修正してます
時々さかのぼって部分修正することがあります
誤字脱字の報告大歓迎です(かなり多いかと…)
感想としての掲載が不要の場合はその旨記載いただけると助かります

スキルが覚醒してパーティーに貢献していたつもりだったが、追放されてしまいました ~今度から新たに出来た仲間と頑張ります~
黒色の猫
ファンタジー
孤児院出身の僕は10歳になり、教会でスキル授与の儀式を受けた。
僕が授かったスキルは『眠る』という、意味不明なスキルただ1つだけだった。
そんな僕でも、仲間にいれてくれた、幼馴染みたちとパーティーを組み僕たちは、冒険者になった。
それから、5年近くがたった。
5年の間に、覚醒したスキルを使ってパーティーに、貢献したつもりだったのだが、そんな僕に、仲間たちから言い渡されたのは、パーティーからの追放宣言だった。

転生した体のスペックがチート
モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。
目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい
このサイトでは10話まで投稿しています。
続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる