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共和国編〜好きに生きる為に〜

176話 ネロ視点

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 何でアイツはいつもこんなに敵が多いんだ?

 こんな意味のない自問自答が繰り返される。
 次々と向かってくるオーク達の多さに顎に力を入れ過ぎて奥歯が鳴る。

 何がオークの侵攻はそろそろ終わるだ……カロンさんやユリアさん達がオークキング3体倒したことで完全に油断した。

 目の前に広がるオークの軍勢に見て分かる限り10体のオークキングにオークキングを超えるデカさのオークが居る。

 剣を抜き、魔力と気力を込める。

「マリウス! やるぞ! 絶対に俺達がアイツを護るんだ!『精霊・憑依』」

『最近のケビンは滅茶苦茶強かったけどね。
あれは酷いよ……護るべき側からの攻撃なんて』

「言う必要ない。あれらは敵だったってだけだ。俺はアイツらを許さない……」

 そんな怒りに目の前が見えなくなりそうな時に心の中から優しい力が体に溢れる。


『だ~め!また間違いを起こすの? ケビンが起きた時に俺達が助けたぞ~って言ってやろうよ!』

 そんな光景を思い浮かべると笑えてきた。

「ははっ、この街に来てからズタボロに言われていたからな。やってやるぞ!」

「『行くぜ!』」

 俺は構えを取る、2~3mクラスのオークの上位種がどんどんと攻撃しようと向かってくる。

「『炎舞・鎧羅ガイラ』からの『炎鬼・金剛腕』」

 俺はケビンの親父さんと修行をして1つの結論に至った。

 気は内側の強化、魔力は外側の強化に適している。
 同時に操るならその操作を精霊術で行えば良い。

 昔は3点からどれが優れているとか言われていたらしいが……
 全部使える俺からすれば全ての欠点を補える最高の術だと思う。

 昔の人は精霊憑依をすることか出来なかったかかなり稀だったのだろう。
 俺なんかより火や炎を根源とする精霊に炎の扱いで勝てるわけないのだから。

 精霊憑依すれば互いの思考はリンクされる。
 精霊術はあくまでも魔力を精霊に渡し代行してもらう技術なのだから俺は気の運用だけで良いのだ。

 1人じゃない……これだけはアイツにも聞かせないと行けない言葉だった。

 何故だかは知らないがアイツは1人で戦いたがる節が前からあった。
 まぁ学園生の時は相手が弱いという理由はあったけどな?
 そしていつも俺に対して『天才』と茶々を入れてきた。
 俺が天才で居られた理由はお前なんだけれどな。負けず嫌いが功を奏したよ……

 この術はかなり肉体に負担がかかるが……この数ヶ月かなり体を鍛え直したからな。

『ぶくぶくに太ってたのが良かったのか前より筋肉着いたよね!』

 全体的に2回り位大きくなったからそれには同意だった。

 炎の鎧とクロス伯爵直伝の鬼の様な角が吹き荒れる中に躊躇いなく迫るオークに俺達は剣を振るう。

「『まじか!これ一応ミスリルの剣何だけど!?』」

 オークの持つ鎧と盾に簡単に弾かれたことに少し驚いた。

「『なら体術で行くっきゃねぇな!』」

 この姿になると多少言葉使いがマリウスに引っ張られるのは頭の痛い所だが仕方ない。

 俺は思いっきり握った拳をオークの鳩尾にぶち込む。
 当たった瞬間にその体を包むように炎がまとわりつく。

『ぷぎゃあああ』

『ピギィィィ』

「『お? やっぱり熱さには弱かったな!』」

 精霊の使う精霊術は対魔法用装備には滅法強い。
 精霊の使う術は無から炎を出したりする魔法に似ているがその本質は自然の中で起きる火と同じなのだ。

 調子良く狩って行ってると突如バカでかい槍が投擲されてきた。

「『くっ、ケビンこれを弾いてたのかよっ!! ぐぬぬぬ。アイツに負けるかァァァ』」

 ケビンの魔力量は化け物だ。下手したら宮廷魔法師全員と同じ位の量がある。
 そんな奴と比べるのはおかしいかもしれないけどさ。

 負けたくないんだよ。本気を出さないアイツに。
 アイツは中途半端な精神を持っている。

 人と関わり嫌うか苦手と感じたら普通は離れるか逃げるが正解だけど
 アイツは無関心を貫く、それで毎回付け入る隙を与えているのだ。

 攻撃されてから消すなんて温すぎる。
 甘いよな? まぁ優しいとも言えるけどな。
 アイツは人と関わるのが嫌いじゃないけど本気でぶつかると
 自分と他人の差異が孤立する原因になるんじゃと思っている。

 だからこそ俺はアイツと同じ立ち位置でぶつかられても余裕をもって対処出来る様にならないといけない。

「『炎鬼・走狗』」

 先程までが腕力特化だとしたらこれは敏捷特化だ。
 脚に力を入れて踏み込むと地面が割れるが気にせず矢と同じ位のスピードで敵に突っ込み胴体部分の側面に蹴りを見舞う。

 ドゥンと腹に響く様な音が沢山鳴る。


 遠距離攻撃がほぼ無い気の運用を補うは精霊術だ。

「『炎舞・絶火』」

 轟音を鳴り響かせ迫る炎を盾を持ちスキルを使って護ろうと立ちはだかるがこの技は撃つだけでは無い。

「『包み込め』」

 球体状の炎弾が輪っかの様になり盾を持つオークを囲う。

「ちっ、流石に護りが厚いな」


 そんな時に肩に手を置かれた。

「悪い、寝坊した。手を貸そうか?」

 視線を向けるとニヤリと笑うケビンが居た。

「あぁ、頼む。俺達だけじゃ削りきれなさそうだ」

 さぁ、久々の共闘だ。
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