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共和国編〜好きに生きる為に〜

168話

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 俺とタビは今心の内でほくそ笑んでる。

 双子狼の神罰はほぼ収まったと思ってるからだ。

 精神年齢低めに感じたのでケチャップソースのハンバーグを渡すと双子はナイフとフォーク片手にじゃなくてフォークを両手にハンバーグを食べ始めた。

『うみゃい!』『うまうまー』

『『ねー』』

 上機嫌である。コイツらとフェンリルやケルベロスは同族では無く下僕な為にやられても大した不快感は無いらしい。

 街? 俺の結界は壊れてないから多分大丈夫だと思う…… 
 他の連中はもう切り捨て対象なのであまり興味がなかったりもする。

 聖人君子では無いし……そもそもSランク冒険者だって無理なら無理と撤退を認められてる。
 力があるなら全てを助けろなんて横暴だと思う。力ある者が目に見える範囲の人を助けることは善意であって
 だから全部を救えとは悪意であると思うな。

 英雄譚なんて聞こえは良いが誰かが多くの人を救った話ばかりなのにその英雄に祭り上げられた人間が後世に何かを遺したという話は聞かない。
 つまり、人の欲は深く次の困難に駆り出されたか消されたのだろう。
 そもそも名前が残ってるのにその子孫が居ないんだよ可笑しすぎるだろ。

 俺は我が身が可愛いし、それに護りたいと思った連中は全て結界に入ってもらったしな? これも善意だろ? 何が善意で悪意なのかは主観でしか無い。

 2人にはアレコレカロンやユリアさんが談笑ついでに事情聴取してるから俺達はひたすら料理を作るだけで良い。

 この精神年齢に効く料理とは? ハンバーグと来たら次はオムライスと言ったお子様ランチプレートだろ?

 月と太陽の旗作るのなんて簡単だ。だてに錬金術や木工細工をしてたわけじゃない。

 おい、カロン……そんなキラキラした目で見るな。
 何か琴線に触れる物があったらしいが知らんよ。

「んで? ハティとスコルを相手取り魔物を殲滅すればこの神罰は終わりだったのか?」

『んーん?』『ちがーう!』

『『ハティとスコルは種族名だよ?』』

 知らんがな……
 そんなキラキラした目で俺を見るなよ。

『君なら出来る!』『お兄ちゃんなら出来る!』

『『んー当てたら神罰終わり!』』

 急転直下の出来事とはこの事である。
 何故俺がこいつらの名前を知り得るんだよ……

 ん? 待てよ……? こちらに来て犬の知り合いなんぞ居ないということは。

「お前らもしかして昔の俺を知ってるんか?」

 俺が前世の記憶持ちということを知らない人もいる為にそうぼかして質問する。

『知ってるー』『黒い服着てたー』
『『ボサボサー』』

 ぐふっ。止めて過去の黒歴史を掘り返さないでくれ。
 地味な服=汚れづらい服は黒なんだよ。
 確定した、黒い服とは私服と学ランでボサボサは寝癖そのまま生きているタイプだったからだろうな。

 狼ねぇ? いや犬か…… ゴールデンレトリバーか? いやアイツは老犬だったし違うな。

 それに俺が名前を着けたのか? うーん双子ねぇ。阿吽、ん? 阿吽?
 双子が片方口を開けて片方が閉めている様子を見てふと阿吽を思い出した。

「あ…… 琥珀に黒子?」

『『あったりー!!キャハハハ!』』

 ふっざけんなよ!! 俺が琥珀に黒子って名付けたのはあれじゃねぇか!
 廃れた神社の狛犬にふざけて着けた名前じゃねぇかよ!
 いつも1人で心が荒んでいたのが廃れた神社に入ると不思議と落ち着いたんだ。

 だから貧乏で自分の食べるものが少なくなったとしても少しでもとお供え物をしていた。
 まぁ、いつも腹減って給食だけがオアシスだったからな。
 余ったパンは全部俺の物位の勢いだったし周りの子供はパンに興味は無くておかずのおかわりが大好きで
 女子なんてダイエットとか言って俺に流してくれたからな。

 食のありがたみをもう少し感じて欲しいと自分と周りの子の差を理解して良く絶望したもんだ。

 つまりこいつらは狛犬か付喪神から派生してこっちに来たということだ。
 それにしても……ここまで地球の流れを汲むこの世界はどうなってるんだろうな?

 そんな考えを読んだか2人は答えてくれた。

『 あの世界は』『暮らし辛い』
『『だからスカウトー』』

 そ、そうなのか……現代社会において昔は恐れられていた物が急速に消えて行っている。

 そういった者は消えたり隠れたりするのでは無く世界を渡り逃げて居たらしい。

 それでも昔から指定されている禁足地の解明は俺が生きていた頃ですら未だにされてなかった。
 まぁ、入ったら確実に死ぬと言われている場所に入る人も居ないよな。

 そういうと何かあれだな。
 全ての資源が出尽くし無くなっていく現象に似てるなぁ。

「ケビン様? 何語を話しておらっしゃるので?」

 タビに問われて俺は初めて気付いた。
 この2人との会話が誰にも理解出来てないと。
 まぁ、気を使った可能性もあるか。
 なぜなら全員がポカンとした表情をしていた。

 俺は双子をジト目で睨むと

『気付かない方が』『おかしい! 普通言語変わったら気づく!』

『『ねー』』

 迂闊だった、転生特典なのか何なのか知らないが言語を理解出来てしまう為に全て同じ言葉に聞こえるのだ。

 エスト様辺りが俺が外国語の習得が絶望的なのを知ってつけてくれたんだろうけどな。

 これの何がヤバいって独自言語の暗号文ですら普通の会話に聞こえるのだ。但し隠語は別だけどな。

 やっちった! と思ったけどまぁいいや。

「ん? 言語理解があるから普通に会話出来るけど?」

 こう言っておけば成人を迎えたスキルと勘違いするだろうってね

「へぇ? そんなスキルがあったんですの?
便利ですわね!」

「まぁ、ユリアさんが思ってる程便利じゃないですよ。
 全て俺自身は同じ言語にきこえてるんですからね」

 そう返事を返すとやはり驚かれた。え? 何?

「お、驚きましたわ……古代エルフ語に精霊言語まで理解できますのね」

 なんじゃそりゃ? この言語理解を俺は音声言語のみと勘違いさせている理由は

 バレたら捕まるだろ? 古代の魔人族の繁栄した時代の書物は数多く残るものの理解出来る人が居ないんだからな。


 この街の神罰は終わった……が大陸全土の神罰は終わらなかった。

 神罰の1つが終われば他の地域からの厄災が雪崩込んでくるなんて簡単に分かると思うのにね。

 人々の災難は未だに続く。
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