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共和国編〜好きに生きる為に〜
166話
しおりを挟む~帝国・クロス領~
クロス領では突如として現れた亜人型の魔物のスタンピードが起きていた。
クロス騎士団が先頭を走り……いやまさかのクロス伯爵が先頭を走り
敵を殲滅する姿に冒険者や兵士達は胸を震わせる者や口をあんぐり開けている。
「おい、見間違えか? ゴブリンキングが騎士団長から逃げ回り、クロス伯爵様からゴブリンロードが逃げ回ってるぞ?」
冒険者達は今までゴブリンジェネラルが出ただけで嬲られると恐怖に震えていたのに
その上位種相手に逆に追いかけ回して『逃げんじゃねぇ!それでも玉ついてんのかコラァ!』と賊も震え上がる程の怒声が戦場に響き渡る。
そんな時だった。
『カッカッカッ! おい、豪の者よ。そんな矮小な小物を殺しても何にも糧にならぬだろう? 我と遊ぼうではないか?』
2m程の角の生えた人型がクロス伯爵の目の前に現れる。
「き、鬼人!?」
それはゴブリンやオーガの最上位種になる種族で現れて敵対すると魔王と呼ばれる種族であった。
ニュアンスの違いが気に障ったのか? その角の生えた男は不本意だと声をあげた冒険者に小石を投げるとその男の頭は冗談みたいに爆散した。
『うぬ? 我は鬼神ではあるが既に人は捨てたぞ? 一応矮小ではあるが神の域に入った鬼じゃな』
そう話している最中に既にクロス伯爵は剣を振り下ろしていた。
『カッカッカッ! 急くな急くな。お主と我の戦場はもう少し遠くでやろう。ん? それは悪手ではないか? 近しい種族の翁よ?』
鬼神はいつの間にか現れたハビスの腕を掴みぶん投げていた。
「ハビス!! 俺はいい。騎士団長!他を殲滅! 俺がこいつをやる」
『うむ? 行こうかの。まずは一撃返すぞ? ほれ』
無造作に蹴りあげられ吹き飛んでいくクロス伯爵。
「「「「「ご当主さま!」」」」」
血を吐きつつも遠くに飛んでいく姿にブチ切れ襲いかかろうとするも鬼神の姿は既に無かった。
騎士団長はすぐ様判断して命令を出す。
「当主様を助ける為にはまずは殲滅だ。行くぞぉぉぉ」
吹き飛ばされたアレクサンダーは冷や汗をかいていた。
軽くけっただけで内蔵がやられ上級ポーションを使っていた。
それを面白そうに眺め待つ鬼神。その姿にふつふつと怒りが湧いてくる。
ーー野郎、舐めきってやがんな?ーー
その感情を素に気の発露が急速に行われ奇しくも鬼神とアレクサンダー・クロスの姿は遠目に見ても違いが分からぬ形になった。
『カッカッカッ。流石は我が見込んだ男だ。
鬼の源流を汲む者よ。名を聞こうか?』
紅く炎の様なオーラが湧き出て居るアレクサンダーは剣を捨て鎧をも捨てる。
意味が無いからだ。
「あぁ? 俺はここの領主。アレクサンダー・クロスだ。テメェは?」
『カッカッカッ。我は鬼神、鬼神の温羅だ。
ここは肉体派が多いらしいと聞いて立候補したのだ。
剣は要らぬ拳のみで語り合おうぞ』
2人同時踏み込み示し合わせた様に殴り合いが始まる。
その拳の衝撃波と音で騎士団長やハビスは一応アレクサンダーの無事を知る。
~獣王国・ビスト~
獣王国では1つの施設が壊滅的な被害にあっていた。牛族の乳製品工房だ。
神罰と言えどもそれは召喚された神に近しい種族に全任せの為に
大型魔物を追い込み襲わせたり直接目にした後に神罰を決める種族もいた。
ビストは小型のそれも大群のネズミ達によって食料や建物に穴を開けられまくっていた。
そんな中、強者にいち早く気付き戦闘態勢で1人の女性が誰もいない場所に殴り掛かると壁は壊れずその場から拳が動かせなくなった。
「お前だれ? 私プラテリア」
そこで初めて1人の獣人風の少女らしき者が視認出来るようになる。
『タラテクト。私は今忙しい。ここのちーずは美味。牛族は貰っていく』
「させない。この国の食べ物は全て私の物」
言葉少なに会話するこの2人。
言っていることは獣王国民に聞いたら総ツッコミの嵐である。
2人の戦闘は最初は爪や拳で互角に戦っていたが……
プラテリアがラチがあかないと神から借り受けている風の力を使う。
「『嵐爪』『虎波導』」
風の刃の嵐と獣のアギトがタラテクトに向かうも
『むぅ? 邪魔。ビリビリ』
パァンと爆ぜる音と共にプラテリアは膝を着いた。
「雷?」
空を見ても快晴で認識外から攻撃が来た理由が分からなかった。
そこで初めて毛が逆立つ、タラテクトからの殺気を受けて獣の本能が顔を出し始めるも耐える。
「負け……ない。私は強者、この国の王!!」
『あなたは弱い弱者。上には上が居る。数千年前の神罰では手も足も出なかった』
タラテクトは顔顰める。前回は運が悪かった。
集落を築いていた地竜に連なる竜人族が相手で雷をいくら放っても
『あ~そこそこ!痺れるぅ。もう1回』
と子供にまでせがまれ神に近しい種族としての矜恃や自信をボロくそにされたのだ。
前回の神罰は『滅ぼし・奪い尽くせ』という命令だったのに1人も倒せないという未だにバカにされているのだ。
するとタラテクトは獣王国の国民全員に雷の鞭や紐を使いパチパチと音を鳴らし空中に浮かばせた。
周りから悲鳴が上がる。
全員の毛が逆立ち、動けずこれから来るであろう『死』を予感して泣き喚いていた。
「やめろ。やめて。お願い……します。国民はやめて」
屈辱的な状況にプラテリアは必死に懇願するも……
タラテクトはニヤリとその口角を上げて1人の子供を殺そうとした時だった。
手に持っていた料理を落としタラテクトの顔に落ちたのだ。
見ていた全員が『終わった……』と感じるほどのできごとだったがタラテクトはその料理を掴み食べる。
『気が変わった。お前。これ作れるか?』
それはチーズフォンデュだった。
「出来る」
プラテリアはそんなことは出来ないが誰かに任せようとするのであった。
プラテリアにとっては正面戦闘と盤外戦術どちらも一緒にやられどちらも負けたのは初めてだった。
他のSランク冒険者はぶつからないしぶつかって本気の戦闘になれば国際指名手配という賞金首になる。
そして獣王国では姫という立場から常に敬われる存在だった。
全ての力で負けたプラテリアは無意識に服従のポーズをとりそのお腹はタラテクトに撫でられていた。
「ふ、フニャァ」
顔が赤くなるのが分かる。
『ふっ、国民全員の前で服従のポーズ。後でお前も食ってあげる』
恐ろしいはずのその言葉も何故か背中がムズムズするのであった。
「鼠のクセに」
『その鼠にお前は負けた。猫の癖に。それに口答えおしおき』
ピリっとシッポに痛みが加わる。
「フニュ!!」
そんな声を全員に聞かれるという屈辱的なのにプラテリアは何故か変な高揚感を味わうのであった。
『ふふふふ。私が居なくなっても耐えられるかな? かな?』
そう耳で問い掛けられるが為す術なく王城に連れていかれるのであった。
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