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共和国編〜好きに生きる為に〜

165話

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 ケビンが双子狼を接待している頃大陸全土でも混乱を極めていた。

 正確に言うと……ケビンが関わったことにより混沌を極めていた。

~旧皇国→精霊神国~

 妖精王が率いる神罰隊は困惑していた。

 妖精が姿を見せ襲おうとすると国民全員が膝まづいて祈り始め
 更には『歓待だ』と祭りとお菓子を大量に用意し始めたのだ。

 そしてそこらかしこに精霊が居て力無き者として“正しい行動“をし始めたのだ。

 神界に管理されている妖精界は神に贈る果物の世界でありお菓子というのは現世に行き来が簡単に出来た頃以来のご馳走である。
 妖精王は耐えたが若い個体達は我慢が出来ずに食べ始めてしまった。

そこに1人の女がやってくる。

「初めまして、ようこそおいでになりました。私は精霊神国の一応代表のコレットです。
 お名前をお伺いしても宜しかったでしょうか?」

 妖精王は代表という言葉が気になり答えてしまう。

『うむ、我は妖精王だ。名前は契約者にしか教えられないので通称妖精王で良い。
 ここは国であろう? 何故そなたが代表なのだ?

 王が居るはずぞ? 我を軽んじてないか?』


 コレットと言った代表は膝まづいて祈る様に言葉を発する。

「いえ、この国は数年前に悪魔によって国の王や腐敗した上層部全てが死に絶えました。
 今は精霊様達のおかげで復興も出来ましたので国名も変えて再出発を始めたばかりです」

 妖精王はそういや少し前にもしもの時に備えて出撃準備を賜ったことがあったな? と納得し街並みを見ると
 数年前にボロボロだったとは思えないほど理路整然とした景観になっていた。

 街中には花や木を植えて精霊が過ごし易い様に川を引いたりと中々考えられている。

『そなたらは精霊の好みがよくわかっているようだ。
 最近はエルフは自然に任せて樹木を広げれば精霊達が喜ぶと思っているからな。
 精霊達も妖精も元々は同じ存在。果物は好きでも人族が作り出した菓子はもっと好物ということが分かっておらぬ。

 やはり人間は面白いな。短命が故に本質を理解せずとも本質に近い行動を勘で引き寄せる。クックック』

「なら良かったです。妖精王様はお菓子と紅茶の他にお酒はお飲みになられますか?」

『うむ、夜の宴には果物から出来た酒が好ましいの』

「かしこまりました。精一杯おもてなしさせていただきます!」

 妖精王は満足げに頷き神罰の命令書を1枚取り出し署名する。

『皇国改めて精霊神国は神罰を与えるに適さない 妖精王』


~帝国・ノース辺境伯~

 ノース辺境伯では魔の森からどんどんと魔物が溢れ出てそれを防ぐのが毎日だったが……

 ココ最近では大量の蛇系魔物が溢れ出てくる。

 斥候を出して報告を受けたゴウドリットは頭を抱え始めた。

「すまん。もう一度言ってくれるか? 神罰が始まって初日が終わりかけ安堵していたんだが……」

 全員がそう思いたかった。領兵、騎士、冒険者が一丸となって領の危機、国のいや世界の危機に立ち向かって『やっと1日が終わった』所だった。

「はっ! 確かに斥候部隊は多頭の蛇を見たと報告が上がってます!」

「いやそこは別に良い。首が幾つあったかが大事なのだ」

 文官は戦闘に出たことが無いが為に全員が深刻な顔している理由が分からない。

「はっ! 12と書かれておりますが……ゴウドリット様?」

 空気が澱んでいることにようやく気付いた文官。

「マジかよ……ヒュドラって7までしかこの地では確認されてないんだぞ?」

 思わず素が出てしまうゴウドリット。

 冒険者ギルドマスターが手を挙げ発言する。

「辺境伯様。当時Aランクで今Sランク冒険者が相対したヒュドラの首が9なのでその位の戦力差とお考えください」

 そんな時にドカドカと鈍い足音が聞こえ、会議室の扉が乱暴に開けられる。

 それはドワーフ族だった。

「おう、辺境伯。武器は納入した。それと聞いたんだが……ヒュドラが出たってぇ?」

 ゴウドリットとドワーフ族は酒飲み仲間なので言葉遣いなど気にしないし。
 基本的にあちらの方が歳上なので誰も何も言わない。

「あぁ。頭の数が12だそうだ」

 そういうとドワーフ族のお爺さんは顎に手をやり髭をさする。

「んだぁ。蛇王かよ。なら俺が帰ってもらう為の相手をするか?
 こっちは他の魔物で忙しいんだろ?」

「やめろ!死ぬ気か? ならこの地の頭として俺が行く! だから命をかけるな!」

 ゴウドリットとして幼き友に託されたこの一族に危険なことはさせられないと声を荒らげる。

「辺境伯は何言っとるんじゃ? 坊ちゃんから言い物貰ったんだ、それを渡せば帰ってくれるわ!」

「そ、そんな話聞いたことないぞ!デタラメを言うな亜人が!」

 冒険者ギルドマスターがそう声を荒らげ指を指すとその指をゴウドリットが握っていた。

「おう? 俺の友達に今なんつったゴラぁ? あ゛ぁ?」

 会議室内に無機質なボキャという音が鳴ると同時に悲鳴が上がる。

 ゴウドリットは気にせず窓からギルドマスターを捨てた。
 冒険者達はまさか自分達の長が3から捨てられるとは思っておらず呆然としていた。

「人か人じゃねぇかなんて関係ねえんだよ。
 俺の領地で仲良く話せて酒を飲み会える仲間ならくだらねぇこと言ってんじゃねぇぞ!」

 その剣幕に驚くのは普段遠くでゴウドリットを見ている奴だけだった。

 冒険者達は『伝えたい相手多分死んでるぞ?』と心の内で全員ツッコミを入れていた。

 そんな怒鳴り声の中、ドワーフ族の爺さんは軽い声で話しかけた。

「おう、辺境伯。それだ、それ」

「はぁ? 何がだ?」

「だから酒だ酒。蛇王も酒好きだ。美味い酒に肉渡せば帰る。
 そもそもヒュドラは頭が7でそれ以上増えると蛇王と呼ばれ、頭が8からだ。
 アイツらは頭が8になると自動的にガルーダや不死鳥と同じ神に近いしい種になるのだ。

 今回出てきたのも神罰の為だろう。ここの魔の森に強制的に運ばれて知らず知らずのうちに
 うちの酒に惹かれてこっちに来てるだけだろうに」

「「「「酒ぇぇぇ?」」」」

 そんな間抜けな声が上がるのであった。
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