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共和国編〜好きに生きる為に〜

163話

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 ーーSランク冒険者は人間ではないーー

 誰かがそう言い、現代にまで続く冒険者内の暗黙のルール。

『人間離れした実力』と一言で言い表せない程のAランク冒険者との開きがあった。
 しかし、その冒険者も人間に見えてしまうほどの凶者が現れれば更に自分が矮小に見えた。

 俺は今、根源的本能が感じる恐怖と戦っていた。

 しかし周りに居る人間は等しく光っている。
 戦乙女と呼ばれる髪の色が変わったカロン、いつの間にか弓を持ち緑の羽衣を肩にかけて天女の様なユリアさん。

 地竜が人型を象った様なアースさん、9本の炎の尾をユラユラと揺らめかし羽織をはためかせ剣を構えるレンカ。

 紫色の翼と尻尾を生やし空中で威嚇を行うナギ、周りに呼応する様に紫色の炎の鎧を纏うネロ。

 あれ……? 皆なんでそんな「ふふふ、私の戦闘力は」とか言いそうな宇宙人の最終形態があるの?

 しかも半分は人外系だよ? 有能イケメン執事に至っては何か角生えてるんだけれども?

 俺なんて魔力を纏ってパチパチパチ音を鳴らし
 貰った称号の『魔導王』の新たなる技で保険かけてる始末なんだけれど……

 魔導王の固有スキルは『遅延魔法』ディスペルマジック『魔法陣』の2つだ。

 魔法とは魔力を流せば勝手に発動してしまう為どうしてもラグが出る。
 遅延魔法とは発動状態で維持、特定条件での発動も可能な条件付き魔法みたいなものだ。

 これに魔法陣を組み合わせて体に貼り付けることもできる。
 魔法陣は本来物質に直接刻み混んだり魔法発動時のみに組み込み使えるものだが

 遅延魔法のお陰で体に貼り付けたまま維持出来てる。

 俺は不用意に瞬きをした瞬間、視界から1人消えた。

『まずは1人!』『抵抗も無かったねぇ』

『『竜は傲慢だから嫌い!!』』


 アースさんが吹き飛ばされた。四肢が爆散したかに見えた……

『狐の癖に生意気』『我らに近しき種が怯えるな』

『『孤狼の咆哮』』

『『グルギャアアア』』

 レンカの炎の尻尾をいとも簡単に引きちぎり最後に残った尻尾を掴み猫じゃらしを振るが如く軽く地面に何度も叩きつけて上に飛ばし咆哮をする。

 孤狼ってお前ら双子やんか。そんな意味の無い突っ込みをする。

 その余りにも違い過ぎる実力差に動けなかったのは俺とネロだけだった。

 カロンが槍を構えハティとスコルと名乗った少女2人に迫る。
 援護射撃と言わんばかりにユリアさんが矢を放った。

『ボク達は無敵』『ハティが矢』『スコルは槍』

『『むむむ、君たちは中々強いから後!』』

 その瞬間、転移したと見間違う位のスピードでネロに接敵して両側から拳を振るう。
 ネロが身にまとっていた紫の炎の鎧は一撃二撃と続くとすぐにボロボロになり砕け散り空中でグッタリとなった。

 次は俺だと思い魔力を高める、壁があるのが分かるがそこを乗り越えなきゃ死ぬ。
 龍神との戦いを思い出せと心に薪を焚べる。

 1度通った道だったからなのか簡単に入れたが笑えた。

「地上に秘密裏に来ていた龍神より強いんじゃないのか?」

 そんな相手の圧倒的な力を感じ取り笑ってしまう。

「「ケビン!!」」

 ナギとカロンの声が重なった時には既に俺の腹にはスコルと名乗った少女の手が刺さっていた。

『この子』『この子だ』

『『この子だけ神の力を使ってない。自力でここまで来てる。だから最後だね。それまで瀕死で居てね』』

 その言葉の次には俺は物凄い圧力を感じていた。
 いや、胸を蹴られて腕と足を引きちぎられたのがわかった。

 しかし、俺はほくそ笑んでいた。
 今、空中を吹き飛ばされているのだ。

「くくく、発動してるよおい! 『固定』と『復元』まさか血まで固定してくれるとはな」

 俺が体に貼り付けていた魔法陣は2つ。
『固定』と『復元』但し固定とは肉体を貼り付けた状態を固定するという条件にしている。

 条件なしで術者本人を『固定』すると銅像になってしまう所か解除出来なきゃ死んでしまう。
 何故か人単体を指定すると空間まで固定してしまうのだ。

 最初に試して意識を失わなかったことに感謝だ。
 あそこで死んでたら笑い話になっていただろうな。

 2キロ程空中にいる間に俺は復元が終わるとふつふつと怒りがわいてくる。

「完全に遊ばれてたな…… って言うより俺の力ってクロが教えてくれたから神の力入ってると思ってたんだけど」

 だからこそ龍神の力を感じ取れたと勘違いしていた。
 俺はその扉を限界の扉をこじ開けていたんだと。

 前世の俺なら間違いなくこう言うだろうな。

「人生ハード過ぎてワロタ!」

 つまり俺って何? 前世のイメージと屠ってきた魔物からの吸収した魔力と知識だけでここまで来たの?

 あ、でも確か成人までは幸運という頭のおかしな強力な支援があったな。

 2キロも離れた地点に居るのに戦いの轟音や力の波動を感じ取れる。
 このとある扉を超えると普通の人が感じ取れなくなる理由がよく分かる。

 精神構造上もたないのだ。
 人が死の恐怖を目の前にストレスで白髪になったり、老けてしまったりと絶対的未来を感じとってしまうと
 苦痛から逃れる様に死を本能で選んでしまうのだ。

 だからこそ感じ取れない様になっているのだと理解した。

 タスク魂時代、神界での勉強に神代の話は無かったな。

『魔法とはイメージ。イメージとは創造である』

 これを最初に教わった。
 魔法は創造と破壊に帰依する。


「無から有に有から無に」

 その取っ掛りはあるのに道が見えない。
 魔を導く王ね……愚者だけれど。

「ハティとスコルね。月や太陽を追う愚か者。日蝕月蝕の原因されていた伝承を持つ狼で前世では神獣だったり最早神として扱われていた」

 行き詰まった時こそ声に出して情報を整理配置していく。


「あそこまで戦闘能力に差があるとは思わなかった。
 故に正面……正道からの突破は寿命を1秒以下にする愚策」

 俺は多分傍からみたらあくどい顔をしている。
 現代社会で生きる人は戦闘に関して言うと常識が既に邪道だった。

 遠距離からのミサイル攻撃に威嚇、領空領海侵犯等搦手バンザイである。

 こちらの世界では個人が有り得ない位の戦力を持っているが為に力押しの人間が多かった。

「弱者で愚者の力を見せつけてやるよわんコロ共め!」

 まず俺はミンチ肉を混ぜ始めるのであった。

 引くなよ? 良いか? 引くなよ?

 LET'S  Death Cooking Time だ!



­­~お知らせ~

お盆中に軽く読める作品を書きました。
いつも通り、気が向いた時に気分転換で書いた作品です。

よろしければそちらもお読み頂けると幸いです。

赤井
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感想 74

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