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共和国編〜好きに生きる為に〜

162話

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 狩りと敵対行為は思考の種類が違う。
 食欲と相手の粗を弱点を探し付け入ることが狩りで、敵対行為は純粋な悪意か悪意を向けられたことによる敵意がある。

 神罰開始初期は悪意や敵意、殺気だらけの敵対行為だったが夜になって質が変わった。

 相手の気配が消えた……しかし粘つく様な視線と悪寒はあるのだ。

 最初の咆哮は注目を集め警戒させることにより気配を分散させたように感じた。

 そして厳重に警戒をしていると意識が地上にばかりに行っていた。
 全く気配、魔力感知に反応がなく結構焦っていた。

「ケビン!!」

 急に現れた気配に全員が驚き誰かが声を出した。
 俺の目の前には上から口を開け今まさに噛み付こうとする白銀の青い眼をした3m位の狼が急に現れた。

「『プロテクト』『瞬動術』お前らの生態は嫌な位知ってんだよこのワンコ野郎!!」

 俺は避けるのでは無く体の周りに防御魔法を張り前へ踏み出し口に逆に突っ込んだ。

『キャイン』

 口に思いっきり硬いものが押し込まれてフェンリルは怯んで離れた。

 噛む力が強い動物はある一定の隙間がなければ力を加えることが出来ない。
 そしてそれは口の最奥では発揮出来ないのだ。
 犬に噛まれた時に腕を引っ張り剥がそうとすると逆に力強く噛まれ傷を負う。

 しかし反射的にでもいいので逆に押し込むと緩み、怯むのだ。
 その時の注意点は奴らは噛んだら本能的に噛みちぎろうと引っ張るので相手より早く口の付け根に物を押し込まないといけない。

「それにしてもまさかな……天を走ってくるとは盲点だったぜ
 あれ? フェンリルてめぇもしかして俺を1番弱いと見て攻撃してきてねぇか?」

 その事実にカチンと来る。
 こういう狩りをする種族は楽をする為に弱い奴から狙う。

 周りを見ると納得した。
 俺以外最初から全力で力を解放してた。

「いっけね! 癖で魔力しか練ってなかったわ!」

 俺が黒色の魔力を身にまといバチバチと全身に雷光が迸り始めると

『グルォォォォン』

 威嚇してきた。認識を改めて楽な狩りから的に変わったらしい。

『グルォォォォンオン』

 敵は王者、王者は蟻の1匹の反乱すら許さぬと言う様な態度と風格で咆哮をあげるとフェンリルの目の前には魔法陣が現れる。

 俺はすぐに解析を始めて少し顔が引き攣る。

「最初っから全力過ぎませんかね? 『火炎嵐』」

 俺とフェンリルが放った魔法は共に効果は真逆でも
 同じ周辺の熱に干渉する魔法で俺の目の前で炎が轟々と燃え盛り、フェンリルの目の前では吹雪がビュンビュンと吹き荒ぶ。


 まさしく環境破壊です!!
 しかし、俺は別の人達を確認しようとすると……カロンが三つ首の犬に槍をぶっ刺しては炎・氷・雷のブレスを避けてる。

 あ、アームさん……
 俺はアームさんが雷のブレスを受けたが見なかったことにした。

 アームさんは完全に油断してた。アムアムオルトロスに噛みつかれていたのに「フンヌ!!」とかやってるから。

 そして俺のとばっちりを食らってるのはユリアさんだったりする。
 熱波と寒波がぶつかり合いすごい勢いで嵐が起きてるからだ。

 風を主体にするユリアさんは

「ななな、なんですのー!」

 と叫んでいるけどあの人空飛んでね? いきなり起きた暴風に驚きスカートを抑えていると上昇気流に攫われていった。

 不思議だ、スカート中身が見えなかった。いや、覗いてなんかいないぞ? たまたま上に飛んでいく姿が見えて暗いから暗視の魔法を使っただけだぞ?(汗)

 それにしてもこいつだけやけに強いな……群れのボスはずる賢く尚且つ危険に臆病な程敏感じゃないといけないって聞いたことはあったが

 弱い奴を狙ってもこうして反撃に出られても余裕を見せるだけの実力はあるってことだ。

 奴は俺が堪えてないことに気付き、前脚を少し持ち上げ面倒臭そうに軽くじめんに振るった。

 不可視の斬撃が飛んできたので俺は仕込み杖を抜き剣に魔力を纏わせ飛ばし迎撃した。

 互いの魔法の効果が終わると同時に動き出す。
 俺は黒雷の魔法を身にまとい速さで対抗したが少し分が悪かった。

「くぅ、くそ速いなおい!」

 歯茎を剥き出しにして威嚇するフェンリルの牙の前には風? の魔法か何かのもう1つの牙がある。

 噛みつきを避けても入れ歯が抜ける様な感じでその風の牙が追って飛んでくるのだ。

 俺はその牙を防ぎ続ける道を選ぶ。
 俺の憎々しげな表情に余裕の戻ったフェンリルの勝ち誇った咆哮が木霊する。

『グルォォォォン、オォォォン』

「『マッドペイン』『硬化』『黒雷槍』」 

 俺はその勝鬨の咆哮をあげた瞬間ニヤリと笑っていた。
 フェンリルの踏ん張っていた足場は泥に変わり抜け出そうとした瞬間に持てる力全てで硬くした。
 右手から発射される黒雷槍を向けた時に言葉を発する。

「残念だったな。狩りや敵対をするのは獣だけだ。人間にはもう1つあるんだよ。純粋な悪意100%の手が。
 俺は俺の命が大事だから幾らでも騙し油断させてそして殺す『あばよ雑魚』」

 魔力を通した言葉は何故か高位の魔物には通じる。
 黒雷槍が発射された時、フェンリルは口を大きく開けてブレスを撃とうとしていたがその瞳は憎しみ怒りの激情に満ちていた。

 雷がバチバチと音を立てる槍は口に吸い込まれる様に発射されフェンリルを一撃で貫通した。

 力なく横絶えるフェンリルを俺はマジックボックスにしまった。
 1番乗りでSランク魔物を倒してドヤっていたが……

 内心では『あっぶねー初っ端から広範囲攻撃とか成人式で魔導王を貰って発動時間の短縮がなければ初手で負けてたわ!』

 と焦っているのであった。
 周りを見渡すと意外と苦戦しているのはカロンで何故か温存してる様にも見える。

 レンカは赤い羽織を肩がけしていて炎の剣で相手を翻弄していた。
 ネロはあぁ……まだそういや精霊憑依? だかの全力実践はしてないって言ってたから動きが合わずに苦戦していた。

 Sランク冒険者の悪い癖が出ていると思う。
 こいつらは全員が矢面に立ちはだかり弱い人達を護る盾にはなったことがあるが周りが強者で心配することがないという現状は稀有だ遊んでる雰囲気があるのだ。

 そんな時耳に笑い声が聞こえた。

『クスクス、お姉様フェンちゃんもケルちゃんも遊ばれてるよ?』

『クスクス、ならボク達が助けてあげないとね?』

『『ねぇー』』

「!!? 全員警戒! 撤退も視野に!」

『助けてあげない』とといった瞬間俺には今まで感じたことの無いような悪寒と恐怖を覚えた。

 何かが目の端で動いた様な気がした時には既に終わっていた。

「何!?」「嘘だろ……」
「全員力を全力解放しなさい! 一瞬で死にますわよ!」


 と声があがった。全員敵対していた魔物の首が落ちていたのだ。
 俺の目の前に現れたのは黒と白の獣人風の子供2人だった。

 黒の狼型の獣人は黒髪に赤目、白の狼型の獣人は白髪に金の目をしてそっくりな双子の様に見えた。

 視界に入った瞬間から『本能が警鐘が鳴らし』続けている。

『『はじめまして、神罰に抗う人の子らよ。ボク達は』』

 そこで猟奇的な笑みを浮かべ言葉を区切りこちらを見る。

『ボクはハティ』『ボクはスコル』

『『神罰の最終試練だよ!』』

『人の子よ』『強者は強者』『弱者は弱者の』『『試練がある』』

『『よってボク達が今から全員に試練を与えるね? 出来れば死なないで話したい子も居るから頑張って生き残ってね』』

 恐怖の試練が幕をあげたのであった。
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