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共和国編〜好きに生きる為に〜
161話
しおりを挟むグラトニースライムを倒した後『サイコキネシス』で核の中にある魔石を引っ張り出した。
いくら死んだ死骸だといえども強酸の粘液に手を突っ込む勇気は無い。
強酸という点にピーンと来て燃やして見たら鼻の奥がツーンとなるほどの刺激臭になり
周りに居た獣型の魔物が凄いスピードで離れていった。
グラトニースライム死んでも災害だ。
後でこの辺や通ってきた道全て中和しないと草木も生えない不毛な土地になるな。
いや? 待てよ? スライムロードとか名前付けて道にするのも良いかもな? なんて思考してると肩にタビが手を置き転移された。
拠点に戻るとタビが最終調整した料理がならび全員で舌鼓を打つ。
グラトニースライムが周りの魔物も捕食したおかげで休む余裕が……
俺達、いやトヤ達を除く全員が何か変な視線と気配を感じて上を見上げる。
「恐ろしい程に嫉妬の念が込められてるんだけど?」
大人達は皆、何故か納得している。
「若い子には経験が無いからね~ 戦場のど真ん中で料理作って笑って食事なんて凄いことだよ~」
ニヘラと笑いカレーうどんを啜るカロン。
カロンは初めて会った時、2度目に会った時、3度目に会った時と毎回性格が違う気がする。
どれが本物なのかは謎だな。
「ヤホ~」
そんな中空気をぶち壊しに来た奴が居た。
「「「「……」」」」
ババア姿でヤホ~は無いだろうに。
スクテロ驚きで噎せて鼻からうどん出てるぞ?
「え? 何この空気は……あっ! 物資を届けに来たさね!」
薬師ギルドマスターだ。
「「「「もう遅せぇよ(ですの!)」」」」
全員キッチリハモった。
そしてイケメン有能執事はマイペースに開封して
「薬、薬、薬と野菜ですね! まぁ妥当でしょかね。あっ、小麦粉もちゃんとありますよ?
少し塩が少ない気がしますが?」
その言葉に薬師ギルドマスターは悲しそうな顔をする。
「北門の負傷者が多過ぎてそちらに回した。
血を失い過ぎて居るから仕方ないさね」
その言葉に一番困惑したのは俺だった。
「倒した魔物食えば良くね?」
そう、タビが何故野菜に喜んだかというと肉はフレッシュな状態でいつでも出せるからな。
血肉を喰らえば不味くても血を作るには最適な栄養になるだろうに。
遊撃しながら魔物の素材を回収して解体までしてるんだぜ?
拠点では外壁に登り警戒する以外にやること無くなったスラム組が干し肉をせっせと作ってる。
その様子を薬師ギルドマスターに見せると呆れられた。
そしてもう1つ目に止まった物があった。
「ん? これなに?」
干し肉の横でモクモクと煙を上げる箱。
俺は額に汗をかく。
ヤバい完全に忘れていた。
燻製の実験中でどの木のチップが美味しいかスラム組に食べさせて実験してた。
美味しかった品に関しては既にチーズを燻製して褒美に安酒と共に渡した。
「それはこれを乗り切ったら始める事業の飯の種だから秘密だ」
「ふーん? ふーん…… 教えてくれないのー?」
この世界の燻製はまさかの港町で食される臭みの強い魚に使い地元民しか食べない。
「あぁ。ギルド員だからな」
ただ面倒という理由だけど、もっともらしい理由で貴方は一応敵対組織員ですよー? と伝えたのだ。
この人、この騒動が始まる前に辞めようとして引き止められて延び延びになった所に
今回の事件が起きている可哀想な人だけれど。
線引きをしっかりしないとこちら側に幾らでも踏み込んでくる図々しいタイプなのは既に分かってる。
そんな時だった。
『ウオォォォォォン』
「「!!?」」
俺達はすぐに警戒態勢に入る。
「さて、どの犬が出てくるかな?」
最悪なのはレッサーフェンリルが居たことから群れを率いて『フェンリル』が出てくること。
更に最悪なので言えばケルベロスやオルトロスが出て来たり共闘したりするのが最悪のシナリオだった。
獣型、しかも狼型の魔物の頂点は特殊で種族、いや系統別に頂点が居るのだ。
そして何故か奴らは理性的で協力して狩りを行う特性を活かし同型の魔物と共闘するのだ。
色んな種類のアンデッドが無差別に襲来するより厄介なのだ。
統率の取れたハンターが1頭でも強力なのに軍隊を引き連れて来るのだ。
『ブルォオオォ』
あぁ……最悪。違う咆哮が聞こえた時点でもう1種居ることが確定した。
俺とババア(仮)が慌てて皆の元に戻ると皆険しい顔していた。
「トヤ、トア、ミア、スクテロ。スラム組を連れて街に戻れ」
俺達全員が生き残れるかどうかの瀬戸際にこいつらの居場所は無い。
トアとミアは悲しげに言葉を飲み込み落ち込む。 トヤは憤慨していたが現実は見えてるらしい。
何度もパクパクと口を開けては閉じをしている。
「撤収作業開始!」
スラム組は半分は既に街に戻っていたので天幕はそのままで食料を中心に運んで行った。
ババア(仮)に引率を任せて全員撤退が終わると同時に皆、隠していた覇気や殺気を放出して牽制する。
こんな魔力や気、殺気を受けたら全員気絶するからな。
「さてさて~ フェンリルは確実だけれど……他は何来ると思う~?」
「オルトロスかケロベロスですわね! 先程の咆哮は多頭に感じたので1種なら幸運、2種以上ならここが岐路ですわ」
全員がわかっている。今までの戦闘が温すぎたのだ。
Aランク魔物以下が幾ら集まろと神罰にはなり得ない。
つまり強力な魔物の召喚? 制作? は時間がかかることが確定している。
「なぁ? 何処まで殺ると思う?」
俺はそんな質問をしていた。
予想している答えはあるっちゃあ有る。
「何処までって……SランクかSSランクの魔物が出て来たら終わりじゃないのか?」
やはりネロは素直だな!
俺はその言葉を否定し首を横に振った。
「神罰だぞ? しかも告知ありきの。そして強者の数に応じて魔物が出てくるんだぞ?
下手したらこの街周辺が最終決戦の可能性もある」
そんな時に何故か後頭部を掴まれた。
「んへっ?」
後方を見ようとすると靴が見えたが多分ユリアさんだ。
「ケービーンーくーん? その話はどこで聞いたんですの?
私、知らなかったですわよ?」
俺は背中に汗が吹き出るのを感じてカロンを見ると音も立てずフェードアウトしようとしてやがる!!
「逃がさねぇぞ!カロン! お前食事に夢中で話した内容の周知忘れたろ!」
「ギクッ! な、な、なんのことかなー、なー?」
「カーローンー貴方も同罪ですの! あ!待て!逃げるなぁ」
宵闇の戦闘が開始される前の暗い雰囲気はこの2人のお陰で明るく迎えられそうだ。
逃げた先で戦闘が始まりそうなのでフル装備に着替えるのであった。
俺のネロにした予想の答えは……最悪シナリオで『〇割の人口が死ねば終わる』最善シナリオで『神クラスの敵を倒したことにより試練の完了とする』だった。
地域、地域に区切られている気がするので強者がいる所は幸運で居ない所には不幸と『新たなる英雄』の出現をせつに願うしか無かった。
他人の命も大事だが俺は俺の目的を妨げるのが魔物であれ人であれ神であれ許さない。
人が人足り得る所以に何より自分の命が大切という残虐行為すら行える人間の業が見え隠れし始めるのであった。
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