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共和国編〜好きに生きる為に〜

160話 サマール視点

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 私はこの街の兵士長のサマール。

 最近は事件が連続で起きて休む暇もなくイライラしていたが
 それが落ち着き始めてようやくゆっくり休めると思った所で
 ギルドからの急報があり『神罰』による天変地異か何かしらの厄災が起きるので備えろと通達があった。

 叫び怒鳴り散らしたい衝動に駆られたが何とか我慢したが次に起きたのは冒険者ギルド前での街民による暴動だった。

 現場に向かうと反対側の商業ギルドはもぬけの殻でがっちり封鎖してあり看板が立っていた

『戦闘を支援する為の物資を搬出中。業務を停止しているので危機に対応したい者は喜んで対応する』

 つまり人のことを考えない連中には一切時間をかけないということだ。
 それを見る限り時間がかなり限られているということであろう

 住民の言葉は聞くに耐えない言葉ばかりであった。
 普段バカにしたり、嫌悪してる癖に冒険者ギルドに対して守れと言うのだ。

 住民が押し寄せるせいで先程から何名もの斥候が冒険者ギルドを確認しては去っていく。

 頭を抱えながらも抑えようと必死に声をかけていると我々が来た方向とは
 逆から人の波が別れて数人の冒険者達がやって来た。

 あれは確か……孤児院経営者のケビン君か。

 ギルドマスターまで出て来て2、3言葉を交わすと周りに居た人達が何かをギルドマスターへ投げ渡し帰っていく。

 すると何名もの人がそれに追従していくのだ。

 それでやっと気付いた。あれはギルド証を叩き返したということに。

 そして追従した連中が住民に怒鳴り散らしながら歩いてくる。

『俺達バカだもんな? 暴力的で粗暴で嫌われもんだからよぉ? 街を守れ? 税金払ってるだろ? だぁ? 
 それはそこのお前らを注意してる兵士の仕事だろうが!
 お前らが幾ら文句を付けようと俺達は自由を掲げてる組織の人間だったんだよ。

 金も、薬も持って来ないで街の為に死ねとはいいご身分だな?』

 そして1人の男性の胸倉を掴み持ち上げ

『お前そういや俺達みたいなゴロツキには一切関わらないし助けも要らんみたいなことを大声で飲み屋でバカにして来た奴じゃねぇか?

 道場で3段とか言ってたろ? ほら魔物が来るぞてめぇも門から出て戦えよ?』

 そう言うとケラケラ笑いながら門へと向かっていった。

 ようやくヤバいことに気付いた住民は我先にと食料の買い占めを始めた。

 ようやく冒険者ギルドへ入り我々と冒険者ギルドの合同軍で北門を、スラム街や孤児院がある南門をケビン君達で守る様だった。

 籠城戦も視野に入れるということで北門に全員を集めようとした所で私は発狂しそうになった。

 今は国、街の危機で大変な時に冒険者達は低ランクのもの達も外に出ても同じということを聞いて出撃用意をしてる最中。

 私の机の上には大量の辞表と退職金を出せと詰め寄るアホども。

 何を考えて居るのだろうか? 普段は適当にヘラヘラ外壁の上で周りを見て酒を飲み遊んで楽してる連中が対応を迫ると途端罰が悪そうに辞表してくる。

「特記事項その4だ。国の緊急事態に恐れをなして辞める者に退職金は出ない。
 普段、税金を貪り食ってる連中が働かないで逃げるのを阻止する為の法律だ」

 そう言うと来ていた連中は

「なら武器は貰ってくぜ」

 といって出ていった。何らならず者と変わらないでは無いかと呆然としたが
 素早く編成を整えて門の外へと出撃したが……


 遠くから蠢く影の様に見える大軍にから笑いが出てしまった。

 耳に聞こえるは冒険者ギルドマスターの口上で檄を発していた。

「冒険者ギルドに負けてはおれぬぞ! この街の防衛は我ら兵士の腕の見せ所と心得よ! 隊列構え!」

 各、兵士軍、冒険者ギルド軍共に最初の攻撃は魔法で開戦の狼煙となるのであった。


 何時間経っただろうか? 既に冒険者ギルドは1体の魔物に低ランク冒険者10人以上で対応しないといけないランクの魔物しか出ていない。

 兵士軍も今までDランク冒険者並みの実力はあると踏んでいたが疲労も重なり同ランク帯の魔物でも複数人で処理をしていた。

 何より助かったのはBやAランクの魔物を冒険者ギルドマスターと副ギルドマスターが屠ってくれることだった。

 相当力を酷使するのであろう、1体倒すと必ず他の魔物には手を出さずに撤退していた。

 そんな時、逆側から竜の咆哮が聞こえかなり遠くから聞こえたが体が震え上がった。

 ヤバいか? と思ったが近くに居た冒険者ギルドマスターが声をかけてきた。

「大丈夫だ、竜はこちらにさえ来なければ反対の南門は面子を見たが全員単独討伐出来る!」

 目眩がしそうになった。
 戦力の振り分け失敗してないだろうか?

 こちらは離脱者が冒険者を合わせて100名を超えていて南門には10名位しか人が居ないのだぞ?

 竜を単独討伐出来る者は戦争時に言い方は悪いが『一騎当千』『一騎当万』や『戦略兵器』と呼ばれる。

「いささか、戦力が偏り過ぎでは無いだろうか?」

 私はそう苦言を呈するとギルドマスターは落ち込み。

「ギルド本部の不誠実な対応により全員がギルドを脱退したのだぞ?
 どうやってこちらに呼び込むのだ? それに私よりもほぼ全員強いのだぞ?
 ケビンの周りに居た大人達は1人を除いて全員がSランク冒険者で残る1人もそれ位の戦力だ。
 ケビンにしろネロにしろほぼAランク冒険者と戦力は変わらないかそれ以上だ。
 力づくで行けばこちらが滅ぼされかねんよ」

 その言葉に絶句したのは私の方だった。

 そして外壁の上に立ちそろそろ夜になろうという時に偵察隊が戻って来たが何か空気が変だった。

「報告します……」

 暗い表情で何があったのだろうかと焦りが出るがしっかりと報告を聞こう。

「奴ら南門防衛の連中は山の様な大きさのスライムを爆発させ倒し。楽しそうにカレー食べてました。羨ましいぃ。
 あ、後スラム街の人達は完全に後方支援になり補給部隊になってました」

 泣きながら報告する兵士に私は呆れたがそれにしても羨ましいのは同意するぞ!

 山の様に大きいスライムと言えば『キングスライム』か『スライムエンペラー』か?

 一応、報告に立ち会いして貰っていた冒険者ギルドマスターが慌てた様に

「色は何色だった?」

 兵士が不思議そうに答えた。

「黒っぽかったですね? でも爆発で吹き飛んでましたよ?」

 それを聞くと音が鳴るくらいドシンと椅子に座るギルドマスター。

「良かった……こちらに来なくて良かった。
 サマール殿。そのスライムは『グラトニースライム』でSランク上位の魔物だ。

 こちらに来ていたら全員食われていただろうな。奴らの捕食は恐ろしいぞ。
 粘液の中に入っても呼吸が出来てじわじわと溶かされるのだ」

 それを聞いて天幕に居た全員が顔を青くした。

 その他の魔物についても偵察隊は知らない魔物ばかりだったがあちらは既にAランク魔物が中心になっているらしい。

 お、恐ろしい方々の集まりだった様だ。
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