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共和国編〜好きに生きる為に〜
155話
しおりを挟む先程、ユリアレーナさんが指示を出した冒険者の1人が慌てて戻ってきた。
「ユリア様!カロン様! 冒険者ギルドの前で暴動が起きてます!!」
皆あからさまにゲンナリした顔になった。
カロンは何かを考え質問をし始めた。
「構成は?」
「豪商人と1部の元貴族と他国から来ていた貴族が騒いでいます」
「ふーん? 内容は?」
「街脱出の護衛及び無理なら強い冒険者を沈静化に向かわせろと喚いています。
それに同調しだした民が冒険者ギルドに詰め掛け暴動になり
冒険者達は皆、呆れて商業ギルドに向かったり他のギルドで対応の確認や物資の確認をベテランが指示を出して行動を始めました」
カロンはウンウンと頷くと一言。
「あーもうめんどい!冒険者やーめたっ!!」
そう言ってギルド証を首から外した。
それに影響されたのか全員がまさかの離反……終わったな冒険者ギルド。
そんなことを思っていると遂に誰かブチ切れたのか冒険者ギルドの方から火柱が上がった。
「内紛になるんじゃね?」
俺がそう呟くと皆苦笑いしていた。
そんな報告を聞いて疲れていた時にこちらの孤児院に向かってくる集団があった。
先頭を歩くのはネロだ。
その隣にはラーゼンが子供達を連れて歩いて来た。
ふむふむ……なんぞや?
「ケビン……悪い。兵士や何か偉そうな連中がスラム街に来て
ゴミは魔物を倒しに行けとか言い出して子供達を狙って引っ張って行こうとしたから避難所に使わせてくれないか?」
ここで冒険者……あ、元Sランク冒険者達の表情が消えた。
「俺は構わないけどさ? ここの結界の条件は変えられない。俺にとっては既に孤児院に所属する子供達は家族だからな?」
そう言うとネロは説明する。
この孤児院は結界が張ってあり、中で悪意を持つと外に弾き出されると。
そもそも悪意を持つ者は入れないと。
少し狼狽えた気配はあったが皆兵士達や大人達が相当怖かった様で頷き緊張しつつも入っていく。
全員、入れた様で良かった……タビは簡易宿泊所を作ると去っていった。マジ有能。
「ん? ラーゼンさんはお嬢様は良かったのか?」
そう言うと本気で忘れていた様で「お嬢様ぁぁ」って叫びながら走り去った。
ボケでも始まったか? あの爺さん。
今度はさらに2つの集団が近付いてくる。
俺は何だ? なんだ? と顔を顰めるといつぞや料理教室に通っていたおばちゃん集団が荷車を引っ張りながら
家財では無く買い物帰りの主婦の感じで食材と調理道具を持って来ていて
その後ろには商業ギルドのギルドマスターが食材を運んで来ていた。
その周りには今回の騒動に嫌気がさした冒険者達が護衛でくっついて来ていた。
おいおいおい。何故許可も無くここを拠点にしようとしてんの!?
ニコニコ笑顔で来られても……やばい……めっちゃ怖い。
俺はにっこりと笑顔を見せてどぞーとスルーした。
おばちゃん達の集団は炊き出しには大戦力なので有無を言わずに通した。めっちゃ怖かった。
何か違った力を感じたよ……
その後に来た商業ギルドマスターは俺達の前で馬車の御者台を降りて
「すまん、ケビン君。物資が安全に置ける場所がここしか思いつかんかった!」
なるへそ~。目の前で暴動起きてりゃそうなるか……
「そう言う事情でしたら結界通れる人は全員どうぞ?
その代わり少しでも悪意や敵意を発した瞬間に結界に弾き飛ばされますから」
そう伝えると何人かは怯えたが……やはり今の所暴動を見て
生命線となる物資を守りたいという使命感の方が強く全員入れた。
そして冒険者ギルドへと向かおうかなぁと思っているとタビが転移してきて俺を拉致った。
拉致った先は……俺が気合いを入れて作った礼拝堂で
一応、全員分の神の台座が置かれているスカスカの礼拝堂だった。
「僭越ながら、私が戻って来た理由はケビン様はお忘れの様ですが成人を迎えられたことをお祝いする為です。
簡易でも良いので成人の祈りを捧げてください。
少しでも主の安全を高めるのも私の仕事ですので……」
「あ~……忘れてた。俺もう15歳になってたのか」
俺は他の教会では創造神の像は武神の像だが真ん中に少年姿の本物の創造神像、その右に魔法神エスト様
左に破壊神のクロの像を視界に入れて祈ると何か引っ張られる感覚があった。
◇
目を開くと、そこは懐かしの神界だった。
ムスッとした顔をする、多分クロ、初めてちゃんとした顔を見たので後で像を直しておかないと。
元魔王の親族ってことで似せて作っていたけどちょっとイメージとは違う感じだった。
『おい! ケビンよ。自分の成人の日を忘れるか普通?
こちらはお前のことを首を長くして待っていたのだぞ!』
説教を始めようとしたエスト様の顔をずいっと横にズラしたのはクロだ。
『クソ鰻にやられるなんて何て情けない奴なんだ!
お前は負け癖が着きすぎだぞ! もっと修行しろアホタレ!』
俺はシュンと落ち込むと2人揃って
『『あ、すまん。今日は祝い事だったな……始めようか』』
息ぴったりね?
そう言うと2人が俺に手を前に出して光を放つ。
エスト様は青と緑の光でクロは黒い光という謎現象。
俺は直感的に膝まづいて祈りを捧げる様に沙汰を待つ。
『『汝に銘を授けよう』』
『魔法神エストの名において魔導王と』
『破壊神クロイツァーの名において愚者と』
『『汝ケビンには2柱の神から愚者の魔導王と名乗ることを許可する』』
俺は反応することが出来なかった。今なんて?
そして俺の反応は無視と2人から放たれる光が俺に吸収される。
「ふへ? ぐ、愚者とは酷くない!? あれ?
もしかして愚者が着くから賢者になれないとか言わないよね!? ね?」
その反応に2人はため息をつく。
『お前そこまで頭良くないだろ? お前の強みは知識を詰め込んでも結局その場の対応力だ。
そしてこの世界の常識外のことをするんだから傍から見たら愚者だろ?
それとも賢者になって周りに集られるか?』
グググ、クロの言うことは一理あるな……頭が真っ白になっても最近は勝手に体が動くもんな。
『ケビンよ。お前の魔法には科学も含まれているし、トアとかネロと言った準弟子も居るじゃないか。
魔を導く者の王ということで魔導王だ。
それに世界とは逆行してるお前に賢しいとは言えるわけ無いだろう?
貴族を拒否。ギルドが気に食わないと脱退。
傍から見れば立派な愚者だ!』
「グハッ!!」
ダメージを受けて落ち込んでいるとふと、2柱の遠い背後に誰か倒れてる?
俺の視線に気付いたクロとエスト様がニヤリと笑った。
『気付いたか? 目を付け俺がこの世界に連れてきた人間にふざけたことをしたから折檻した』
うんうんと頷きクロが追従する。
『我が弟子を殺そうとした罰に消してやろうと思ったが……創造神に止められたから精神的にボロクソにしてやった!』
神が精神的にボロクソって怖っ!
そんなことを思っていると俺の体が光だした。
あ、終わりかな? 帰んのかな?
そう思った時に2柱は面倒なことをぶっ込んできた。
『そうそう、我が弟子よ。今回の禁忌はお前の持つそこのアホタレの義骸を狙った嫌がらせで起きた。
神罰を恐れぬと言いたいが、忘れている様なので今回はド派手にすることにした』
なぬ!?
『今回の設定は人口と強者の数で決まる。なんか知らんがお前の居る街だが何故かSランク冒険者が10人以上居るから気を付けろ』
「なんで今それ言うのぉぉぉぉ」
2柱はくつくつと可笑しそうに笑っていたのが最後に見た顔だった。
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