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共和国編〜好きに生きる為に〜
154話
しおりを挟むタビを伴って門に向かう途中、ふと気が付いたことがあった。
「ん? 待て待て、タビお前なんて言った?」
「なんでしょう? あ! 薬師ギルドマスターが変装? 変身の使い手なのは最初から知ってましたよ?
ケビン様お忘れですか? 私もその手の魔法の使い手なのですよ?」
そう言うと、タビは爺になったり子供になったりと身長も違う変身の魔法を見せてくれた。
いや魅せてくれた! 俺は興奮して大声を出す。以前使っていたのは顔だけが有効範囲だったから魔道具だと思っていた!
「なんだそれ! 系統が分からんぞ! タビ!教えてくれその魔法今すぐに!って痛てぇ!何すんだよナギ!」
「客を迎えに行くのだろうが!この魔法バカが!」
そういやそうだった。
完璧な正論なので仕方ないと諦めて門に行くと
カロンと前に1度見たエルフのお姉さんと薬師ギルドマスター。
それに2人の人が後ろにくっついて来ている状態で訪問しに来たようだ。
「やぁやぁ、おはようケビン。清々しい朝には似合わない雰囲気がバリバリ感じるんだけどなんか知らない?」
冒険者の勘……いや戦闘者の勘というのはバカに出来ない程の的中率がある。
それは死線を乗り越えた数に比例して精度が上がっていくというから
ウチに居るSランクもそうだが流石は最高位の冒険者だと思う。
「俺もさっき目覚めたんだけど夢にお告げがあったよ。『禁忌を犯した』奴が居るとね」
子供達は感覚が鋭いからこそ気付いていただけなんだよな。
その俺の思案とは別に発した言葉に酷く狼狽したのは薬師ギルドマスターとエルフの女性だった。
「そ、それホントですの……?」
「マジか……なんでウチの生きてる時代にそんな伝承レベルの事件が起こるかねぇ」
エルフの女性が震えながらも言葉を発し、薬師ギルドマスターに関しては驚き過ぎて若者言葉が出てたぞ?
「俺は禁忌が何か知らないんだ。何が起こるんだ?」
カロンも俺もナギもアームさんも首を傾げて居るのだ。
「人族にはもう既に伝わってないのですね…… 禁忌の後に来るのは『厄災』つまり神罰がくだるのです。
その神罰が連帯責任ですの。 どこのおバカさんですの!?
禁忌を犯したのは……はっ!まさかあのクソババア共遂にスレスレの行為から超えたのでは?」
ブツブツ言ってるが全部聞こえてるよ……クソババアって。
「あの……大丈夫ですか? カロンこの人は?」
「ん……? そういや紹介してなかったわ!
ウチのクランのメンバーでSランク冒険者だよん!
2つ名は『黒薔薇』名前はユリアレーナだよ!」
「黒い薔薇? そんなの精霊術にあったっけ?」
そう言うとケラケラ笑いながらカロンが否定する。
「んーや、違うぞ! 黒い薔薇じゃなくてやり口が黒い腹だから「カーローンー? 貴方さっきから失礼ですの!おほほ、少々お待ちくださいまし。少しヤキ、コホン。お話し合いをして来ますので」
ま、待って待って君の折檻はマジで死ぬってあ~」
俺に説明してたカロンの後頭部を掴みユリアレーナさんが門の端っこまで連れていきヤキを入れていた。
正直、前世のテレビ番組だったらピンポンパンポーンの音と共に少々お待ちくださいの画面が出てるだろう。
「あらヤダ野蛮ね~私とほぼ同じ年数を生きてるエルフなのに。
さて、ケビン。前回の神罰は1000年以上前に起きたのよ。
大陸に住む、各種族綺麗に7割の人が死んだわ。
まぁ当時は冒険者ギルドも無くて戦争ばっかりでね。
戦える人も少なかったし防衛に回す兵士がそもそも戦争で出突っ張りでその間に街や国が壊滅したらしいのよ
私やエルフ、ドワーフの様な長命種にとっては祖母や祖父から聞ける話だけれど
人族は国がバラバラになるほどの壊滅で当時の記録が途切れたのかもね」
おい!ババア本当にお前何歳だよ……
そんな時だった。
リンリーン、リンリーンーー
黒電話の様なベルの音がどこからともなく響き段々と大きくなっていく。
ーー音の出処を探ると全員がギルド証を見ていた。
俺もそういやとマジックボックスから取り出すと何か光っていて数秒経つといきなり光
空中に文字を映し出した。
『全ギルド員に連絡する。大陸の西側より複数のダンジョンが崩壊。
そして跡地の魔素溜りから魔物が噴出している。
【緊急事態発生】、【エマージェンシー】
貧民、平民、貴族、立場や地位、種族等気にせず
戦闘技能を持つ者は戦闘や街を守る準備をせよ。
商業、生産系ギルドは支援物資の準備と格納庫より備蓄を放出せよ。命を守る為の行動をせよ
ギルド組織を大陸全土に広げた意味を……意義を理解し行動せよ。
略奪や力を守るべき人を対象に向けるものには速やかに排除せよ。
これは嘘でも何でもない紛れもない神罰が起きた。
神の名のもとに弱者を守る為の殺しは罪には問わない。一丸と成りて対応せよ。
魔法神・探求神エスト』
エスト様……マジか、ギルドには今も製造方法の分からない機器が沢山ある。
所謂オーパーツって奴で、古代文明はかなり進んでいてそれが何かしらの理由で滅びたってのが通説だったが
神が絡んでいたのなら有り得る魔道具ばかりだ。
「ギルド商ってこんな機能あったんだぁ……神からの警告ってやばくない?」
ババアの顔してその言葉使いヤメロや。
そして1つのギルドの長すら知らない機能ってさらにヤバいだろ。
ポカーンとしてるとユリアレーナさんとカロンが戻ってきた。
「ケイト、マロン! 貴方達はすぐに警備隊に連絡を! 防衛出来るかどうかの確認をしなさい!」
「「はい!」」
堅物そうな男性とゆるふわ系のお姉さんがユリアレーナさんに指示を受けると即行動で中々の速度で走り抜けて行った。
そんな時だった。
カタカタカタカタカタと俺はそういやこの世界に来てからこの振動と縁がなかったなと思っていた現象が起き出した。
そう地震だ、段々と揺れが大きくなったと同時にドカーンという轟音が街の外から聞こえた。
モワッと上がる土煙の方向を見ると初心者用ダンジョンの方から上がったのだ。
「お、遅かった……ダンジョンスタピードより厄介な崩壊なんて」
ダンジョン崩壊とはダンジョンが壊れると今まで貯めていた魔素が1ヶ所に集まり延々と魔物を排出する最悪な現象だった。
スタンビードはダンジョン内部の飽和に限界が来て魔物が外に出てくる現象だ。
2つの違いは主に魔物の強さだったりする。
スタピードはダンジョン内部から溢れ出てくるだけなので問題は無いが……
ダンジョン崩壊とは崩壊するダンジョン内部の魔物では無く。ランダムに出てくるのだ。
つまり実力不足の人が戦闘中にランク外の魔物に捕まるとゲームオーバーな状況になる事が確定してしまうのだった。
それが目の前で……いや起きそうになってるとは何か現実味がないなぁと思いつつも
そして街門へと向かうことが難しくなったと感じるのであった。
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