上 下
154 / 296
共和国編〜好きに生きる為に〜

153話

しおりを挟む

 アームさんが孤児院に身を寄せる様になってから2週間経ったある日の夜。

 俺は夢を見ていた。

 何故か夢を見てるとわかる不思議な感覚。辺りを見渡しても真っ暗。

 あの4年間居た精神世界に近い気がして声をあげる。

「クロか? 居るんじゃないのか?」

 するとクロとは違う腹にずっしりとした感覚を与える声が空間中に鳴り響く。

『汝、世界の規定を破り捨てる禁忌を犯し者を戒めよ』

「は? それはいつ起きるんだ?」

『戒めよ、許すな滅せよ』

 ここで俺は強制的に目が覚めた。

「はぁ……勝手だよな神って奴は。つまり本当のことをストレートに言えないって確か神託前世では言われてたよな?
 参ったなぁ、どうしたもんかなぁ」

『戒めよ』

「ひょえっ!?」

 俺は周りを見渡し誰も居ないことを確認した所で怒りが湧く。

「ふざけんなっ! 夢で伝える所までは100歩譲って許すけど……
 起きた瞬間に声がするのはホラー真っ青な展開だろ!
 ジャンル考えろ! ん? 俺は何を言ってるんだ全く……焦ったよ。ホラー苦手なんだよいきなり系は」

 俺は心臓がバクバク鳴る音が永遠と聴こえるのが嫌で先程の声でかいた冷や汗が気持ち悪く

 廊下に出て庭を見ると不思議な光景があった。
 ナギ、アームさん、それに子供達が庭に居るのだ。

 ナギとアームさんは何故か完全武装だった。
 俺は横着して『テレポート』を使い庭に出る。
 子供の1人が気付き声を掛けてくる。

「あ!ケビンお兄ちゃんおはよう! なんかね~ピリリとしてるの?」

 俺はそこで初めて空気が脈動している様に偶にピリッと刺激する様な空気が出ていることに気付いた。

「うむ、ケビン。お前さんは気付いたのか?」

 俺は今さっき気付きましたと言えずに頷く。
 だってアームさんの目がキラキラしてて小さく『流石は実力者だ』とか言ってんだよ? 訂正しづらいわ!

 ナギに腕を引っ張られ少し離れると

「ねぇケビン? アンタかなり魔力持ってるからどうせ気付いて無いんでしょ?」

 ジト目で睨まれた上に呆れられて更には気付いてないことも看破されてた。

「うん、って言うより夢で『禁忌を犯した奴』が居てそれを滅せよって言われて飛び起きた」

 うん、知ってた。めっちゃくちゃ胡散臭いよね?
 そんな訝しげな目で見られても本当のことだし。

「寝惚けてたんじゃ?」

「いや、起きてボーッとしてたら背後から最後に『戒めよ』ってもう1回言われたから。
 じゃなきゃ朝からこんなに汗だくになってないさ」

「そ、そうね。そもそも子供達も違和感を感じているってことは……かなりヤバいことが起きそうよね?」

 俺は首を傾げつつも

「『禁忌』の内容がわからんからな。そもそも俺の龍神ぶっ飛ばしたのだってとある種族から見たら禁忌だしな。
 でもそれなら俺に直接来ないし、多分俺に来たと言うことは……魔法神様か破壊神様のどちらかの関係者からの言葉だと思う」

 ナギは少し考えた後に

「魔法神様だったら何か封印を解いた系かしらね? 破壊神様って実在してたんだ……」

 うん、それ約10年前に既に俺がやってしまってます。テレテレ。

「何、変な動きしてんのよ!」

「ぶふぉ! 痛いわ!」

 照れてたらナギにチョップされた。

 ん? ふと俺の結界の近くに反応があり魔力感知を使う。
 おぉ、お客さんがヒーフーミーよー……ん? 6人多くね?

「ナギ、アームさーん! 門に客が来た! 多分6人。子供達は中に入って朝食の準備しろーい!」

「あいわかった!」

「「「「準備だぁぁぁ~!!」」」」

 ん? え、ショック……1人普通に結界通り抜けてきたんだけど。

 ナギが急に凹んだ俺を見て驚いてる。

「どうしたのよ? ケビンも普通の人と同じで落ち込むのね? 」

 早く人間になりたーいじゃねぇよ!

「結界1人抜けられたんだよ……」

「えぇっ! 一大事じゃない! 行くわよ!」

 抜けられた理由はすぐにわかった。 

「ケービーンさーまー!」

 爆走してくるイケメン執事風のタビが戻ってきたのだから……
 そういやハビスとコイツは結界幾ら頑丈に難解に張っても通り抜けて来るから忘れてた。

「タビお前……結界簡単に抜けてきたらショックと警戒心で禿げちゃうだろ!!」

「気にするのそこなの!?」

 やべぇ……ツッコミ役が居ると楽だな。

「ふむ、執事として当たり前の技能です!」

「えっ!? 執事ってそんなに特殊な仕事なの!?」

 デンッと胸を張るタビに驚愕するナギ。

「いや、お前元帝国最凶の諜報部隊員だろうが!」

「えっ!? この人『黒影鬼』の人なの!?」

 何その厨二病な部隊名は?

「俺達は影としか呼ばないから知らないぞ? タビ?」

「ケビン様。敵や他国が勝手に当主様になぞって鬼の裏に居る影として通称として使われているだけですよ。我々に名はありませんでしたよ?」

 やっぱり怖いわ。
 諜報部隊員なのか使用人なのか判断つかない奴とか普通に領地には居るからなぁ。

「タビそれで? 一緒に来た連中は?」

「あ、カロン様と薬師ギルドのギルドマスターの女性とエルフの人と他数名ですね」

 他数名って誰だよ……まぁ行くか。


しおりを挟む
感想 74

あなたにおすすめの小説

転生王子の異世界無双

海凪
ファンタジー
 幼い頃から病弱だった俺、柊 悠馬は、ある日神様のミスで死んでしまう。  特別に転生させてもらえることになったんだけど、神様に全部お任せしたら……  魔族とエルフのハーフっていう超ハイスペック王子、エミルとして生まれていた!  それに神様の祝福が凄すぎて俺、強すぎじゃない?どうやら世界に危機が訪れるらしいけど、チートを駆使して俺が救ってみせる!

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜

ちゃぶ台
ファンタジー
彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。 社内の人間からも取引先の人間からも一目置かれる彼だったが、不運な事故に巻き込まれあっけなく死亡してしまう。 せめて「男」になって死にたかった…… そんなあまりに不憫な近藤に神様らしき男が手を差し伸べ、近藤は異世界にて人生をやり直すことになった! もらい物のチートスキルと持ち前のビジネスセンスで仲間を増やし、今度こそ彼女を作って幸せな人生を送ることを目指した一人の男の挑戦の日々を綴ったお話です!

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

転生したらチートでした

ユナネコ
ファンタジー
通り魔に刺されそうになっていた親友を助けたら死んじゃってまさかの転生!?物語だけの話だと思ってたけど、まさかほんとにあるなんて!よし、第二の人生楽しむぞー!!

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

処理中です...