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共和国編〜好きに生きる為に〜

145話

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 俺と『無音』と呼ばれた冒険者の身体能力と武器を使った戦術は拮抗していた。

「ざっけんなっ!? てめぇ情報では貴族のボンボンの魔法使いだろうがっ!?」

 コイツは何時の話をしているのだろうか……?
 そりゃあね? 5歳を前衛にする冒険者は何処に居るんだ? ん? もしかして……

 剣戟を数回文句垂れながら繰り返し距離が空いたので質問してみる。

「なぁ? ひとつ聞きたい。お前のその情報って冒険者ギルドから買ってないな?

 初期登録情報を抜き取ったか、情報閲覧権限のある奴が知った情報だろう?」

 無音は一切答えずに斬りかかってきた。
 沈黙は是だとも言えるんだけどなぁ

 俺は冷静に魔力大鎌で対処してるのだが、先程からアイツの目がピカピカ光っててシュールなんだよなぁ。

「俺はお前みたいなボンボンでいい装備持ってる奴が嫌いなんだよ!!」

 へぇ。こいつ成り上がった系だな?
 俺はニヤリと笑い挑発してみる。

「だから? ならお前は何故違法依頼なんてしてるんだ?
 その位の実力があれば俺みたいに孤児院を設立して昔のお前のような同じ立場の奴を助けれるって言うのがなぜ分からない?

 それに金持ちや貴族が装備に金を掛けて経験を得て強くなることが分かってるならその環境を整えてやるのも先人の勤めだろうに」

 まぁ、俺は全部自前で用意したけどな? 前世の知識を使ったけど。
 それすらしないで貴族やその関係者を逆恨みして襲うなんて野蛮もいい所だとは思うんだけど。妄執に囚われた人間には何を言っても聞かないか……
 まぁ、恵まれた環境に生まれたことは運が良かったし享受したけどさ。
 それなら成り上がって街の改革なりギルド内部の改革に勤しむべきだろうに。
 
 奥歯を噛み締めた音がこちらまで聴こえる。歯なくなるんじゃね??

「それと何か魔眼系統の技を使ってるみたいだけど、一切効いてないぞ?
 目がピカピカ光ってて滑稽だから効果が無いならしない方がかっこいぞ?」

「バカにすんじゃねぇぇぇ」

 あ、キレた……対人戦では1に戦闘総合力、2に状況判断、3に冷静さ等の精神的強度がものを言う。

 近接戦闘の実力が拮抗して事前情報が違った時点でコイツは撤退戦をしなきゃ行けなかった。
 まっ、逃がすつもりはないけどな?

 俺の目の前に短剣を振りかぶった奴が居るが俺は動かない。
 何故か勝ち誇った顔をしていたが……『エアバースト』を使い斜め上に吹き飛ばす、ダメージは無いだろう。

「アホだなお前。魔法使い系統って情報持ってるなら今まで魔法使ってない事に違和感を持てよアホ」

 大事なことなので2回言いました!

「くっ……『ミラーミスト』」

「へぇ? 光学迷彩か……『熱源感知』」

 『熱源感知』はちっとばかし複雑で繊細な複合魔法なんだよなぁ。

 本来であれば水+風で氷属性を使いその後に更に風属性を使って冷気を周りに流して反応を確かめる。

 火属性と風属性だけでやる方も同じ魔法名なのだが……感知能力と使用難易度が桁違いだ。

 それに俺は生体を感知する為に、雷属性も使い微弱な電波も察知できる様に組み込んでる。

 この魔法は一瞬使っては出力を下げないと処理が追い付かず頭が割れるような頭痛が始まるので相当面倒な魔法なのだ。

「あ、いい情報をあげるよ。5歳の時に確かに魔法使いとして後衛登録したけど
 今は魔法剣士……いや剣ほぼ使わないから魔法戦士みたいなことをしてるよ」

 俺は身体強化の出力を更に上げると、黒い靄の様な煙が身体から立ち昇り始める。
 くっそー!多分クロが俺の体を使ってクソ龍を倒した事で魔力が莫大に増えたせいで身体から魔力が漏れる。

 本来は薄く黒いオーラに包まれる技なのに。
 攻撃時に1部分だけ制御を解いて力場を解放する技なのに!!

 正しくはベクトル制御と言った方が良いかもな。
 俺の種族が変わってから闇と空間属性の親和性が上がったと言うより進化した。

 契約もしてない闇の精霊が俺の漏れ出た魔力を吸い常に状態異常を弾く術を使って遊ぶ位なのだ。

 よく見ると多分薬師ギルドマスターの婆さん人が顔を真っ青にして結界を張っていた。グッジョブ!

 俺は傍から見れば、脈絡も無くとある場所に一瞬で近付き手を前に出して何かを掴み上げる様な仕草をして地に叩き付けた。

「ガハッ!? な、なんで……」

 地面が陥没して轟音が鳴り響く。
 今まで見えてなかった無音の魔法が解けて姿が見える。

「魔法の力量差、理解の深度の差とイメージ不足だな?」

 さて、終わったかな? と思うと背筋に悪寒が走ったので距離をとる。

 視界に写ったのはフラフラながらも無音が立ち上がり何か毒々しいオーラが立ち昇り始めていた。

「近隣住民には手を出さずにグルーダだけを始末する予定だったがヤメだ。
 『毒竜纏装』ハハハッ! 奥の手ってヤツだぁぁ」

 うげぇ……毒竜だって? ヒュドラか何かだっけ?
 それにこの感覚、何か切り替わった様に思えるが力自体は感じ取れてるけど。
 ギルドマスター達を見ると首を傾げていた。

 クロの恩恵か分からないけど俺は既に奴の力を感じ取れる領域まで踏み入れてるらしいな。
 つまり、以前聞いたSの神の力を行使してるらしい。

「はぁ……アンタSランク冒険者だったのかよ」

 俺がそういうと何故かご機嫌な上にヘラへ笑ってた。
 何かヤバい薬を使ったり力自体に副作用でもあんのか?

「あぁ? 今更気付いても遅せぇんだよ!
死ね『デスブレス』」

「うえぇ。死の息とか臭そう『暗黒渦』」

 ビギッと言う擬音が似合う程ブチ切れた気配を感じた。
 沸点低すぎない? Bランク以上の冒険者は品位検査あるんとちゃうの?

「なめんじゃねぇぇぇ『毒竜砲』」

 ゴポッという音と共に無音の目の前にはスライム並の大きさ兼粘着質な球体が複数現れこちらに飛んできた。

 余りにも数が多かったので俺は地面少し削っても良いや位の勢いで『暗黒渦』を広げ

 そして俺はというと、『潜影』を使い影に潜り込み
 無音の影から飛び出て背後を取り肩に手を置くと顔は目以外隠れていたが驚くよりポカーンが正しい目をしていた。

「全力で撃つけど死ぬなよ?『スタンボルト』」

 バチバチという音と共に俺の周りには黒い雷が迸る。

 無音はその場に倒れると痙攣しだしたので治癒で心臓だけは治療した。

 生物にとって雷属性はやはり凶悪だな?

 無音との戦闘は終わったが、戦闘途中に気付いた厄介事は沢山残ってるんだよなぁ。

「えっと……婆さん? いやお姉さんと呼んだ方が良いか? 結界ありがとさん」

 俺は薬師ギルドマスターを見てそう告げた。
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