変人奇人喜んで!!貴族転生〜面倒な貴族にはなりたくない!〜

赤井水

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共和国編〜好きに生きる為に〜

143話

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~ギルド総本部~

 会議室で各部門のグランドギルドマスター達が勢揃いしてる中で冒険者ギルドのグランドギルドマスターだけが頭を抱えていた。

 ことの発端は共和国のBランクダンジョンで虹龍の鱗が見つかったことだった。
 証拠の提出ということで1枚だけの鱗が送られてきて

 その鱗を見た時に1枚の内包する魔力に皆が目を輝かせた。

「うむ、それで件の冒険者はーー」

 1人の男性の言葉を秘書の様に後ろにたっていた女性が遮り報告をする。

「いえ、もう所属取り消しになりました。
 共和国の支部の定時報告を提出してきたギルドマスターサリアより
『情報漏洩するわ、提出物帰ってこないわ。紛失したのに買取もしないわゴミくそ組織』
 と罵倒されBランクの推薦も蹴り
 目の前で冒険者証を捨てたそうです」

 その報告に怒鳴り声を上げる者が現れる。

「なっ!何様なのだ!そんな奴はひっ捕らえて龍の素材を吐き出させれば良いだろ!?」

 その言葉に他の全員が頭を抱えそうになる。

 1人のエルフの女性がその憤慨した男性を睨みつけ発言をする。

「あらあら? 情報漏洩して素材を盗んだのあなたなの?
 今回の件、しっかりと浄化出来ないなら商業ギルド部門は独立を『宣言』するわ~」

 冒険者部門のグランドギルドマスターは天を見上げる。

「仕方ないだろうな。この中に知ってるものが居れば今のうちぞ? Sランク冒険者達がここに今向かってきている。

 散らばっていた連中ほぼ全てだ。今回の件を放っておくと後輩達が困るだそうだ。
 もし解決出来ないなら全員鞍替えするとまで言われたよ……

 更に悲惨なのは既にAランクで離脱者や引退届を出す者が後を絶たない」

 そんな時、ギルド秘蔵の連絡手段の通信石が光る。

 秘書が手をかざすと相手が表示される。

 空中に映し出されたのは渦中に居る、ギルドマスター、サリアだった。

『グランドギルドマスターの皆様お久しぶりです。
 今回の緊急連絡の内容は……
 誰なのでしょうか? 情報漏洩してくれたバカは? 今週で3件既に何処かの貴族や議員。はたまた襲撃も受けております。
 まさかこれも発展の為とか言わないですよね?

 もう辞表だしてここの支部畳みたいのですけど……
 件の冒険者ケビンは商業ギルドでダンジョン入場許可証を取得しました。
 しかもうちの支部の高ランク冒険者は殆どケビンの知り合いで返却を検討し始めました。

 そしてケビンは孤児院を開き、子供達の面倒を見てます。
 主に駆け出しからEランク冒険者も離脱を考え始めました。 新手の戦争を仕掛けてきてますか? 答えろや!!』

 そこで通信石は割れた。サリアの本気の殺気と魔力に耐えられなくなったのだろう。

「「「「……」」」」

「あら~?ワンチャン 久々に見たわね。『暴風姫』のガチギレは」

 全員が黙り告ってる中、既に離脱を宣言した商業ギルドのグランドギルドマスターの声だけが室内に響いた。

 そんな中激高した男性が居た。
 プライドの高い錬金術ギルドのグランドギルドマスターだった。

「何が孤児院だ! それは国の仕事だろ? んなもん個人でやらせるからそんなことになるんだろうが!」

 他のグランドギルドマスターの視線がキツくなる。

「あらヤダ? 錬金術ギルドのポーションは高くて教会の治癒魔法代金はお金を湯水の如く支払わないといけない。
 それなのにお金の無い孤児は依頼料の良い討伐依頼を受ける。
 そして死んでいく。悪循環じゃないの?」

「分不相応だと言ってるんだ!」

 ドカンッという音と共に会議室の机が割れる。

「国がやらんことをしてもらってる分際で先程から何を言うておる?
 ならば薬草の買取金を上げよ? 足元見た金額でしか買わぬ癖にポーション代金ばかり上げよってからに」

 冒険者ギルドのグランドギルドマスターだった。

「言えばよかろう? 共和国にお主は議員とも仲良くしておるんだからな?
 冒険者達が命懸けで採ってきた薬草でポーションを作り議員に優遇して渡してるのを儂らが知らぬとでも思うたか!?
 恥を知れ!! そもそも既に盗んだ犯人は見つけておるのだ。 隠し場所又は引渡した犯人を追ってる最中だ。

 犯人が何を着けていたか教えてやろうか? 隷属の首輪だ。
 これを複数人に着けて何度も何度も横流しの様にグルグル回したせいで場所が分からぬのだ。

 組織である以上最低限の信頼関係が無きゃ成り立たないことすらわからんのかボンクラめぇぇ」

 本気の怒りによりもう既に老人と言っても良い見た目にも関わらずその覇気は強者ゆえの波動だった。

 完全に学者畑の錬金術ギルドのグランドギルドマスターは尻もちを着いていた。

 最近代替わりしたドワーフ族の男性が立ち上がり言葉を発する。

「ケビンってあの帝国のケビンだろ? ドワーフ族はあいつに借りがある。
 そして爺さんよ? 今回はSランク案件だろうよ? 
 冒険者が討伐した素材の提出を拒むなんぞな。それに錬金術ギルドの坊ちゃんよ?
 アイツは『戦乙女』や『獣姫』とも面識あるぞ?
 お前は2人のSランクにドワーフ族。そして本人もA~Sランククラスの戦力にB~Dランク冒険者の戦力も合わせると来たもんだ。

 お前さん負けるぜ? うちの爺さんから聞いたがケビンは魔力を使う事柄……いや事象に着いては神クラスの腕前だって話だそうだ」

 そういうとドワーフ族の男性はそのまま外に出ていった。

「あらあら。ドワーフ族の恩人ってあの子だったのぉ? 
 女性と商人の味方ケビンちゃんがこちらの認識なんだけどねぇ。ねぇカトラちゃん」

 冒険者ギルドのグランドギルドマスターの後ろにたっていた秘書が頷く。

「彼は同級生の為に下着を開発したある意味下着の神様です。多分本人は嫌がるでしょうけどね?」

 2人でクスクスと笑う。

「冒険者ギルドとしても彼奴の味方はしてやりたいんだがのう。
 ネロとやらも今同じ地区に居るのだろう。彼奴ら帝国で当時魔の森以外では討伐数に素材卸数トップの成績じゃぞ?」

 やれやれと肩を竦めて立ち上がり出ていく。

 ずっと影の様に黙り込んでいた1人の女性が立ち上がる。

「薬師ギルドにとっても恩人。カレー粉という薬の原材料が料理になる発見をした。
 見習い達の仕事が無くて弟子が雇えなかった人達もあれで持ち直した。
 そもそも誰も言わないから言ってあげる。
 魔力への理解が深く、薬学にも精通してるということは自ずとケビンはかなり高位な錬金術も扱える

 最初から犯人は分かってた。虹龍の鱗を飲んだ所で不死にも進化も出来ない」


 白衣を翻し。コツコツと足音を立てて去っていった。

 1人残った商業ギルドのグランドギルドマスターが微笑んでその姿を見て満足した様に立ち上がる。

「あら~? 皆バカねぇ。私に言えば持ってる情報売ってあげたのに~。
 ねぇ? 錬金術ギルドさんは『人体復元』って出来る?」

 その言葉にポカンとしていた男性は慌てて

「で!出来るわけないだろっ! 人体の構造も材料も分からないのに!」

 喚き散らした男性に一言悪魔の笑みを浮かべ告げた。

「彼は出来るらしいわよ? 神への信仰心が無さ過ぎて治癒魔法がほぼ使えないから錬金術で代用してるそうよ~?
 完全にあちらの方が格上ねぇ~。じゃあねぇ~」

 そう言うと商業ギルドのグランドギルドマスターは空間に歪みを作り消えた。

 男性は脂汗を浮かべ、思考の海へと乗り出す。

(ま、まずいぞ? ケビンとやらは平民だからと議員に施設や素材を接収してくれと頼んでしまった。
 大陸全土規模の組織に喧嘩売る規格外が現れるとは思わなかった。
 良いじゃないか!数千枚あるだろう鱗の1枚だぞ!?
 何故、俺がこんなに責められなければならいんだ!
 そ、そうだ俺は悪くない。そしてあの街には龍素材と竜人族が居たはずだ!まだ実験に使える素材は……逆転のチャンスはあるぞ!!)

「ふふ、ふふふ」

 そんな男の姿を冷めた目で見つめる人が居た。
 気配を隠蔽し限りなく消えている秘書カトラだった。

(また何かやらかしそうですねこの男。権力と金とプライドしか無い中身の無いコイツが動き出す前に止めなくてはなりませんね……)

 誰も既に動いている等思ってもみなかった。
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