変人奇人喜んで!!貴族転生〜面倒な貴族にはなりたくない!〜

赤井水

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共和国編〜好きに生きる為に〜

137話

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 晴れるのを待ってと思っていたが……

 急激に土煙の中からのプレッシャー重圧が跳ね上がった、と言うより空気がミシミシと鳴り始め跳ね上がり続けていた。

「……チッ。やばいな。俺の命日になりそうだ」

 既に自分の手に負える相手では無いと感じていて逃げ出そうとしても自分の正確な座標が分からない為に転移も出来ず
 魔力を最大限練りプレッシャー重圧に耐え次の攻撃に備えるしか無かった。

 自分の心臓の音と冷や汗のジメッとしていて服が汗で湿り体に張り付く嫌な感覚がやかましい。

 マジックボックスから新しい剣を取り出して構えをとる。

 深呼吸して脳内の集中を高め……切り捨てて行く。
 俺はクロとの実践訓練という拷問を思い出しあの時のイメージを自分の感覚に添わせていく。

 触覚・嗅覚・痛覚・聴覚は要らない。
 色彩も要らないか……この世界特有の魔力感知と気配察知も切り捨てる。

 超常のモノを相手取るのには……いや、食らいつく為にはまだまだ実力が足らず
 1つの感覚以外切り捨ててギリギリ指が引っかかっる程度だった。

 俺は視覚以外全てを切り捨てると土煙が遅くなった。

 徐々に土煙が晴れ、あの龍人の姿が見えたと思ったら
 俺は抑制した感情が強制的に引き起こされる程の恐怖を感じた瞬間

 龍人の姿が消えた!?

『調子に乗るなよぉぉ!!ゴミがぁぁ』

 右斜め前に突如として現れた龍人の攻撃がハイスピードカメラのスロー映像の様に見えた。

 俺は無意識にその獣の様に襲いかかって来ていた龍人の左手に
 魔力が最大限に乗った剣を下から上に振り上げていたが

「くそっ!傷すらつかないか! 深呼吸!集中!!」

 俺はかの英雄と言われた武人達とは違い、戦闘経験が全く無い。
 あの人達はクロが言うには俺の様に全ての感覚を切り捨て無くても
 その膨大な経験予測により常に相手の行動、攻撃を隙を作ったりして場を支配して

 相手の次の行動を予知と言えるまでに昇華してるらしい。
 そんなのは無理だと言った時にクロは

『なら、全てを切り捨てても1番お前の特化してる部分を強化しろ!!』

 と言われた。
 それが視覚だった……

 前世の記憶を観られているクロも視覚にすることは賛成していた。
 極限集中状態の人間の1秒を数秒に伸びるモノを任意で他の感覚を切り捨てることによって任意で扉を開けるのが今回の技だ。


 灰色の世界で左半身がズタボロになった龍人の口の目の前に真っ白な玉が現れる!

「『黒雷槍』発射!」

 俺の左手から発射される真っ黒な稲光を纏った槍が奴の顔付近に向かう。

「あ……」

 世界が真っ白になった。




 龍人はブレスを撃った後にやらかしたことに気が付いた。

『むぅ……やってしまった。儂にダメージを与える等無理だと思うて油断して激情に身を任せてしまったのぅ』

 未だに目の前にはブレスの爆撃が鳴り響き破壊がその空間を支配する。

『不味いのぅ……彼奴最後の最後にこちらの力を感じ取っていた。
 つまり神と同等レベルにまで既に成り上がっておったか……
 殺してしまったことに後悔は無いが、創造神様の叱責は免れんのぅ』

 そんな時、龍人の右肩を誰かが掴んだ?

『ッ!!?ガハッ?』

 それと同時に龍人は叩き伏せられ、その上に何百倍という重力が叩き込まれた。
 視界の端に映るソレを見た時……自分を叩き伏せたのは先程の少年のあどけなさが残る青年だった。

『ぐぁ!? き、貴様!誰じゃ!?』

『トカゲ風情が吠えるなよ? よくも我の弟子をここまで追い詰めてくれたな?
 トカゲにボロボロにされたと秘術を使い弟子にしたが……お前が相手ならまだ14の小僧に勝てる訳がなかろうよ』

 青年と違うのはその髪の色は真っ黒だった。

『クソっ!まさか……貴様クロイツァーだな?』

『ふふ、義体なら早く神界に帰ればよかろう? 死体は弟子の為に置いていけ』

 龍人はその黒い青年の中身に気が付いたがもう抵抗は出来なかった。

『貴様の仕事はダンジョンの管理じゃろがいっ!』

『そのダンジョンで貴様が好き勝手にやってるじゃないか?
 それに……我の願いを聞き届けない神達に呆れたものよ?
 分かっているのか? 創造神に伝えよ。我の願いは魔人族の繁栄では無く平穏であった筈だ。
 それを願い、叶えると言われたから我は国を妹達に任せ1柱の末席……ククク違うか? 第2席に座ったのだぞ?』

 その神としての格の話をすると龍人は怒りを瞳に浮かべ立ち上がろうとしたが無理だった。

『ググググァ! 破壊神の因子は消えずか。貴様! 絶対に許さんぞ!?』

 龍人がそう言うと……青年は笑いだした。

『この子は妹から因子を渡され昇華した人間だ。伝えよ。手を出すな手助けは受けよう

 ん? ククク。こやつの成人の称号が決まった様だな?』

 足元に居る龍の抜け殻を見て黒の青年、クロイツァーは笑った。

『全く、トカゲにやられて悔しがってると思ったら龍神では無いか……ばか弟子め。
 はぁ……我の秘術もここまでか。独り立ちの時ぞ頑張れ我が弟子ケビン』

 そう言うと、青年の髪は灰色に戻り、龍の抜け殻の上に倒れるのであった。


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