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共和国編〜好きに生きる為に〜
128話
しおりを挟む「いやぁ、最近の小悪党は勤勉だねぇ。何もこんな朝早くから動かなくてもねぇ?」
俺の言葉にタビが笑いを堪えていた。
「それにしてもケビン様。我々のことアイツら忘れてませんかね?」
「グフッ!言うな……
俺もなんでトアとミアを攫うことばかりに注視してるのか
思考回路どうなってるのか理解不能だからな」
タビの言葉は俺の心にクリーンヒットした。
いや、タビは確かに影を意図的に薄くしてるけどさ。
最近、思うんだ。俺の周りキャラ濃い奴らが来るせいで基本的に俺が薄い味になって
味のしないガムとして見向きもされない子になってる気が……
やめよう。この思考は沼に入りそうだ。
俺達は彼らが出て行った部屋から認識阻害のローブを被りつつ一緒に出て行くと彼らは目をひん剥いて驚いていた。
そりゃそうだよね……外に幹部の警護兼襲撃用の人員が居たのに全員お縄についてるんだからね。
「おう? お前ら随分とアタシがいない間に好き勝手してたらしいねぇ?」
憤怒のエルフこと、ギルドマスターが門のど真ん中に縛った奴らの上に腰掛けて待っていた。
ん? ギルドマスターに座られてた奴が新しい扉を開いた様で人様に見せれない顔をしていることに俺は顔を背けた。
「なっ!? 何でお前がここに居る!?」
暁の蛇のクランマスターは怒鳴り散らしてる。
実はギルドマスターは州のお偉いさん(象徴元王族)からの依頼で州の外の都市に出ていた。
俺とタビはサブギルドマスターのダダンからその話と場所を聞いて転移というチートを使い
ちゃっちゃと依頼を終わらせ、暁の蛇のアジト襲撃の協力要請を出して強制送還させたのだ。
その時の一言が
『お前らと行動するとアタシの移動にかけた時間は何だったんだろうと常識を壊されるよ』
とお言葉を貰ったのはちょっと笑えた。
魔力はバカ食いするが、戦闘行為が無いなら俺は空を飛べるので片道ならもっと短縮出来た事は伝えなかった。
どうしても転移は目視とかマーキングが必要になるから片道は自力移動なんだよねぇ。
そもそもギルドマスターには4年振りにあった時は認識して貰えず攻撃された位だからな!!
納品の時にその元王族さんの顔がかなり引きつってたのは忘れられない。
だって一時的に復帰したAランク冒険者にSランク魔物の討伐依頼かけてるだもん。
俺達が協力要請した内容には弟子のトアとミアを攫おうと画策してる暁の蛇の存在を教え。
ギルドマスターが州の外に追いやられてた事を考えると依頼主のこいつも関係者だろうと脅す事にしたのだ。
トヤとトアはギルドの保護対象種族でそれを望むならギルドは撤退と戦争を仕掛けますと
ぼかしながらも笑顔で言い切ったギルドマスターはとても満足していた。
そしてその元王族には選択を迫ると
「2度と……2度とかかわりましぇん」
と泣きながらアヘアヘ言いつつ言質をとった。
まぁ、タビがとある紋章を見せたら急に怯えだしたのも理由の1つであるけれど。
そして今に至る。
そんな回想をしてるとふと、思い出した。タビが見せた紋章って何だったんだろうかと
「なぁ? そういや昨日見せた紋章って何の紋章なんだ?」
タビはニヤリと笑みを浮かべ
「クロス家や帝国の諜報部隊が外国で使う紋章ですよ。
特殊な魔道具でして、悪事に使うと呪いがかかり死にます。
この魔道具は貰った時に主家や国に害を与えず悪事を犯さずの誓いを立てているのです。
今回、相手がケビン様という主家の血筋に敵対する行為をしたので遠慮なく使わせて頂きました」
怖っ!なんだその呪いの道具は。
諜報部隊通称『影』の怖い所は忠誠を誓った相手は絶対に裏切らないということだ。
自分の命より忠誠を大事にしてる……はず。
いや、なんか自信無くなってきた。
最近の影の忠誠が『俺』では無くて『カレー粉』の気がする。
あぁ、やめたやめた。気にしたら終わりだ、ありがたい忠誠と受け取っておこう。
「あ゛ぁ? なんで居るだぁ? てめぇの協力者の依頼をさっさと終わらせて帰って来たからに決まってんだろ?」
「馬鹿な! Sランクだぞ!?」
ん? 何でこいつ依頼内容知ってるんだ? 依頼主はあくまでも場所の指定だけして
恐らくAランクからBランク魔物の群れが存在する程度の情報しか元王族でも無かったぞ?
「どうなってやがる!」
そう言って掴みかかったのは1人のマフィアだった。
「し、知らねぇ。『あの御方』に貰った薬を魔物に注入すればSランク魔物になると言われてたんだ!」
ハイ!アウトー! 『あの御方』って誰だよ!
俺は前世で言う千本という武器……まぁ少しデカい針にとある薬を塗りそのマフィアの太ももに『サイコキネシス』で飛ばして刺した。
「痛っ! あ、やばい」
その一言でマフィアは糸が切れた様に倒れた。
ん? 少し強力過ぎたかな? ま、死にはしないし大丈夫だろう。
「誰だっ!?」
もう暁の蛇のクランマスターはパニックで叫びまくってる。喉潰れない大丈夫かな?
俺とタビは認識阻害のローブのフードを取る。
このアジト中々立派だから門から屋敷まで20m位の道があるから余裕で挟み撃ち出来るよね!
「なっ!? 何で……お前が……」
「いやいやいや……はっきり手紙で書いてたろ? 2つ目だよ。目に余る行為は。
そもそもお前らが襲撃を決めた理由が俺達なのに何で俺の存在忘れてるんだよ!?」
いや今更目をひん剥いて驚かれてもねぇ?
「アタシを無視すんじゃないよぉぉお!!!」
あっ……遂にギルドマスターが我慢出来ずにブチ切れた。
俺は屋敷の敷地内に結界を張る。
だってギルドマスターの剣幕に怯え、逃げようとした奴が1人では無かったので逃がす訳にはいかない。
これも一応、治安維持や改善の足がかりなのだから。
こうなるとギルドマスター1人に任せても良いんだけど……
「おいっ!!ババアさっきから俺にも攻撃飛んできてんだよ!? 見境無しかコラァァァァ!!」
そう、何故か俺やタビにもきっちり攻撃が届いてるのだ。
死なせない様にこちらで調整してんのに、いちいち攻撃に対応するのもめんどくさいんだよ。
「あ゛ぁ? 誰がババァじゃぁぁぁぁ!!」
「狂戦士かよ!? おまっ!精霊術師だっただろうがっ!」
何故か、完全にこちらに敵意剥き出しになり攻撃される。
ギルドマスターに着いてる精霊は俺にペコペコ必死に謝ってる。
何だこれ!? タビはこの間に1人黙々と敵を無力化していた。
この後、タビが敵を全員を捕縛した。
1番最後まで放置していた暁の蛇のクランマスターが俺とギルドマスターの戦闘の余波によって
ボロボロになっていて可哀想だけどざまぁと思ってしまった。
結局1番迷惑を被ったのは俺とアジトの建物だろう?
近隣住民も唖然とした表情で建物見てるよ。
音も振動も無いのに昨日までは人相の悪い男達が出入りしてた大きな屋敷が跡形もなく残骸と化していたのだから。
ストレス発散出来てツヤツヤのギルドマスターはスッキリしたと帰ろうとしたので俺は……
「なぁ? ギルドマスターさんよう? 俺に攻撃したことについて今日はきっちりみっちりギルドで話し合おうかい?
こちとら、殺した方がはやいのに殺せないから必死に耐えるしか無かったんだよなぁ。
ダダンさんにも報告しようか?」
「えっと……いや、そのう……はぃ。すみませんでした。
えっ!? ダダンはやめてぇぇ。報告しないでぇぇ怒られるぅぅぅ」
やっぱ、どこのギルドマスターもネジぶっ飛んでるわ……
嫌がり駄々をこねるギルドマスターを笑顔で引きずる青年に住民達は戦々恐々とするのであった。
その後、住民達に俺のアダ名が『裏ボス』になる事を俺は知らなかった。
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