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共和国編〜好きに生きる為に〜
122話
しおりを挟む『お……おき……オキロ!』
「うわぁぁぁ! ん? ココどこだ?」
急に呼び掛けられて俺の意識は急浮上して慌てて飛び起きた。
目を開けるとそこは真っ白な空間に目の前には真っ黒な人型のナニカが居た。
「俺は……死んだのか?」
真っ黒な人型のナニカは腹を抱えて笑ってやがる。
『ククク……んな訳ないだろう?
あまりにも不甲斐ないからお前を精神世界に引っ張り出したんだ。
あぁ……私の事は説明しても理解できないから適当にクロとでも呼んでおけ。
魔人王種族は長命だがそこに至る奴が稀でな?
力の継承の為に眠っていたのだが……
蛇と蜥蜴の中間種みたいな奴に良いようにされやがって
情けないからここに連れてきたわけだ』
真っ黒な人型に瞳はないけれど……目がある場所に
確かな憎悪が見て取れて俺はブルりと肩を震わせた。
「あぁ……そうだった。俺はアイツにゴミみたいな扱いをされた」
俺は悔しくて、怖くて感情が昂っていた時だった。
「ぶへぇ!?」
クロにいきなりビンタされた。
『お前にはまだ悔しがったり怖がったりする資格など無い。
最初の質問だ。"お前にとって魔法とはなんだ?"』
辛辣な意見と意味不明な質問だったが俺は答えた。
「魔法は俺にとって憧れで……ようやく手に入った力だ」
その瞬間。俺は物凄い衝撃を受けて吹き飛んだ。
「何すんだ!!『目的と手段を綯い交ぜにするな』ど、どういう事だよ……」
『魔法は力じゃない。魔力を使って現世に干渉する方法だ。
お前の記憶を見させてもらった。魔力が無くても魔法を模倣や再現……
更にはその先の技術を知る貴様が術を手放すな!!』
俺は……ぐうの音も出なかった。
『まぁ、ケビンは特殊だから更に難しいのもわかるがな。
お前は体と魂と精神。全てがズレて現存している。
神とやらが多少、力技で全てを1つにしたみたいに見えるんだ』
俺はその言葉に首を傾げるしか無かった。
体と魂と精神のズレ? 体と精神なら分かるが……魂とはこれ如何に?
「俺は転生したとは言え、こちらで生まれ育ったのに全部がズレてるのか?」
『ん? あぁ。体と精神がズレているのは前世の記憶があるからだな。
無意識に近接戦闘を避けてるのも、その感覚のズレを感じ取らない為のセーフティだろうな。
体は未成熟過ぎて、お前の成熟してる魂とズレが生じてる。
精神と魂は……これは帳尻合わせを神が行った時に受けたズレだな……
ケビン、お前。自分の姿を自分と認識出来てるか?』
俺は最後の言葉、質問にドキッとした。
両親に感謝はしてるが……俺は初めてこの世界に生まれ落ちた時から
銀髪や美少年風の顔に違和感を覚えていたからだった。
『精神と魂のズレはこれが原因だ』
そういうとクロは右手を前に軽く振るとそこには……
「前世の俺と今世の俺?」
そこには幻影だろうか? そんな感じの事をクロがして俺に見せる。
『前世はタスクと言ったな? ケビンの精神はタスクの体を自分の体だと認識しているが
この世界に来た事によってケビンの中にある魂は
ケビンの体を唯一無二の存在と定義付けをしている。
魔人王種になってから黒髪が出てきて少し安堵して
精神が落ち着き始めて力の定着が起きた。
その結果……魔力、気、体の成長の3つが起きたのだが
お前にとっての前世の記憶が邪魔をした訳だ。
人を簡単に殺せる技術、文明や倫理観を持ってる前世の記憶がな?
お前の身長が伸びなかったのは魔法がある常識や日常にいまだに夢見心地なふわふわとした状況だからだ。
だからこそここで本気で魔法を扱う術を学べ。
ここは精神と夢の狭間。本気で魔法を使った所で
壊れはせん。まずは腹が減ってるだろう?
これを食うのだな』
クロが手をかざすとそこには料理が出て来た。
「あー……何となく言いたい事はわかった。
お!? 美味そうだ。そういや俺、ソウちゃんの所で学術的には学んだけど
ソウちゃん達はこの事に気付かなかったのか?
あ、頂きます。う、うめぇ……」
料理がバンバン出て来るが、味がタビが作った料理の味でちょっと嬉しくなってしまった。
『ククク、阿呆。神の精神や存在この世界では不変なる物。
奴らの関心や物事の捉え方は魂と体が中心で
一方の人は……精神と体の結び付きの方が強いのだ。
気付くわけなかろう。ほら食べろ。お前の前世の常識のせいでお前は必要量食べ物摂取出来ておらん。
早く前世の子供の成長スピードの常識を打破しろ。
戦闘の多い世の中と人族の主権の隆盛を極めてる前世では安全性の違いから
どんな種族でも10~12歳までで身長は伸びきる筈なのに
お前は前世の記憶の常識が無意識に働き、膨大な魔力で無意識に世界に干渉をしている。
あのクソ蛇、クソ蜥蜴どちらでもいい。絶対に勝ちたいと心から願え。
あんなもんに狙われたのだ。危機感を持て』
俺の心の動揺や気持ちがスっと静まり返ったのがよくわかった。
前から前世の常識は非常識でこの世界では異端なのは理解していたが
この世界の常識に則って動かなければ死んでしまうのだ。
『そうだ。お前が前世から感じている。死への恐怖をここにしっかりと解放し
向き合え、まずはそれからだ。食べるといい』
俺はクロが出してくれた料理の中には俺が知らないうどんとかあってとても面白かった。
俺は死が怖い。ファンタジー小説である自分の死を認識してこちらに来た訳では無く。
ある日突然、こちらに来たという感覚が強いからだった。
前世でも、何度も死にかけた事もあったがそれでも、それでも死は身近でとても恐ろしいものだった。
普通の人の数倍恐怖を感じていた。
前世の俺は二重人格で常に片方がいつ消えるかという強迫観念もあったのだろうけどな。
今はしっかりとその気持ちも1つになった時に継承していた。
『よし、食べ終わったな? 少し眠り次第。
本格的に魔の操る術を教えてやろうぞ!』
飯を食べ終わった瞬間に俺は何故かクロにぶっ叩かれ……眠りに着くのであった。
意識が遠のく、クロに最後に言いたい。
「物理的じゃなくて、普通に眠らせろよ……」
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