上 下
120 / 296
共和国編〜好きに生きる為に〜

119話

しおりを挟む

 魔法指導をした次の日はBランクダンジョンに潜っていた。

 前回は15階層まで進んでいたので入口横にある転移魔法陣に乗ると
 自動的に16階層階段横に転移出来る。

 そして俺は周りを探知しつつ、森の中を駆け抜けて行く。

 ダンジョンの種類は迷宮型、環境型、遺跡型と特殊型の4つに分けられる。

 特殊型は本当に特殊で、とある条件を満たして居たから入ったり
 階層に踏み込んだら真っ暗闇の中だったなんて事もあった等の記録も残っている。

 たまに出てくる猿型やコング型の魔物を魔法で撃ち抜くとドロップや魔石が残る。
 それを拾い探索を進めていく。

 16階層からはギルドで確認した情報では20階層まで環境型の森構造になっているらしい。

 16、猿型魔物。17、猛禽類型魔物。18、ボア系魔物。19、16~19の複合の魔物出現。

 と情報が出揃っているので俺はサクサク探索と
 偶にある果物や薬草の採取をしつつ先へと進む。

 この世界に生まれてきて人間相手以外で窮地に陥った事のなかった
 俺ははっきり言って調子に乗っていた。

 と言うより、自分の命を脅かす魔物に出会えてない事により傲慢になっていたのだ。

 階段は基本的に中心か又は入口の反対側にあるのがここのダンジョン造りだった。

 それにならって、20階層手前まで進み休憩をした後に
 マジックボックスから資料を読んだメモを取り出した。

「えっと……20階層のボスはか。
 蛇型は速いし変則的な動きに加えて状態異常があるから気を付けないと。

 ん? フィールドボスタイプなのか。しまったな。
 熱源探知と俺の探知の勝負になりそうだな」

 フィールドボスとは通称の階層と同じ魔物がいる環境でその中の1体がボスで
 それが階層中を徘徊してるタイプのボスという事だ。

 だから探知力が強いボスだと、他の魔物を倒してる最中に奇襲を受けたりするので
 中々、気を抜けない相手という事だった。

 気が付いたら腹の中とか笑えない。蛇型の魔物って丸呑みか毒使いが多いからね。

 ボスを倒せばその場に階段が現れる為に、
絶対にボスを倒さないと先に進めないのが面倒くさい奴だ。

 休憩とイメージトレーニングをして俺は階段を降りると



 そこは無音だった。

「? おかしいぞ。何でこんなに静かなんだ?」

 そんな時だった。

「グルュオオォォォォォォ」

 激しい咆哮が前方から飛んできたのだ。
 俺は、蛇ってシャーーが鳴き声じゃないのか? と思いつつも

「まぁ、小手調べでこれで『ライトニングボルト』」

 右手から電撃を出し、咆哮が聴こえた方向に発射した。

 前方の木々を焼き焦がして爆発音が聴こえる。
 目の前がスッキリした状態で咆哮の相手を確認した。

「嘘だろ……」

 それは正しく、龍だった。
 ドラゴンでは無く、東方に伝わる蛇の様に細長い身体をうねらせているアレだ。

 赤い鱗が一瞬光ったと思うと、明らかに俺よりも大きいサイズの圧縮された火の球を飛ばしてきた。

「ッ!!?『レイ』」

 俺は速さ重視で、相手の攻撃に自分の魔法を当てて
 暴発させて逃げようと画策して直ぐに行動に移した。

 結果を見る事も無く、振り返り全力の身体強化で階段に戻ろうとし

 ガンッ という音と共に思い切り透明な階段のある洞窟の入口に顔を打ち付けていた。

「ンガッ!? くそっ! 結界か何かかよ!!うわっ!?」

 そう悪態をついた時に魔法と火の球がぶつかった余波で俺は横に吹き飛ばされていた。


「くそ、くそ、くそ、ちきしょー。調子に乗った! あれ程調子に乗ってる時ほど落とされやすいと前世で学んだのに

 やればいいんだろ!? こなくそ!」

 半ばやけっぱちになりつつも風魔法で体勢を変えて着地し赤い龍を睨む。

 眼光鋭くしっかりと俺を捉えるその瞳はとても怖く……無意識のうちに膝が震えていた。

「ふふふ、俺にもまだ子供らしい所あったんだな……」


 俺は覚悟を決めて皇国のあの日以来撃つことの無かった俺の中では最強の魔法を撃つ。

「終焉の咆哮よ、終焉の吐息よ全ての破壊をその手に圧縮し我の前に立つ障害を滅せよ!
『スーパー・ノヴァ』」

 詠唱を始めた所で首の付け根辺りが熱くなっていたが、
 そんな事を気にしていたら一瞬で死ねると感じ続けて魔法句を告げる。

 すると、普段は髪を黒く染めていた物が翼の様に
 背後に広がり魔力を収縮させて魔法に介入してきやがった!
 白1色だった魔法に黒も混ざり混沌とした魔法のレーザービームが赤い龍へと向かうと

 赤い龍は口を広げ口の中に、火の球を圧縮していたと思ったら前方に吐き出した。
 龍・竜の必殺技ーブレスーだった。

 ダンジョンの階層は物凄い衝撃と共にホワイトアウトしてしまった。
 ホワイトアウトが少しおさまりかけ

「ど、どうなっ……」

 声を上げようとした時だった。
 何かの風切り音と共に、俺の体・頭に5連撃の打撃が加えられ
 最後には尻尾で足を掴まれて逆さ吊りにされていた。

「グハッ。ま、全ぐ……みえながっだ……」

 龍は俺の顔を近くで見てくるがその時俺はガタガタと震えるしかなかったが
 その時の心境は死にたくないという恐怖感、後悔感、絶望と
 これが最強? という羨望感とここで終わってしまう悲壮感と後悔感でいっぱいだった。

 少し笑えてしまった、死を目の前にするとポジティブとネガティブの後悔がどちらも押し寄せてくるなんてな……

 すると、急に体にGがかかり視界いっぱいの土色を見て衝突するという認識後、
 俺は腕を前にクロスさせて対処しようとしたが衝撃を感じる間もなく意識を失うのであった。
しおりを挟む
感想 74

あなたにおすすめの小説

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

転生5回目!? こ、今世は楽しく長生きします! 

実川えむ
ファンタジー
猫獣人のロジータ、10歳。 冒険者登録して初めての仕事で、ダンジョンのポーターを務めることになったのに、 なぜか同行したパーティーメンバーによって、ダンジョンの中の真っ暗闇の竪穴に落とされてしまった。 「なーんーでーっ!」 落下しながら、ロジータは前世の記憶というのを思い出した。 ただそれが……前世だけではなく、前々々々世……4回前? の記憶までも思い出してしまった。 ここから、ロジータのスローなライフを目指す、波乱万丈な冒険が始まります。 ご都合主義なので、スルーと流して読んで頂ければありがたいです。 セルフレイティングは念のため。

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【味覚創造】は万能です~神様から貰ったチートスキルで異世界一の料理人を目指します~

秋ぶどう
ファンタジー
書籍版(全3巻)発売中! 食べ歩きだけが趣味の男、日之本巡(ひのもとめぐる)。 幻の料理屋を目指す道中で命を落としてしまった彼は、異世界に転生する。 転生時に授かったスキルは、どんな味覚でも作り出せる【味覚創造】。 巡は【味覚創造】を使い、レストランを開くことにした。 美食の都と呼ばれる王都は食に厳しく、レストランやシェフの格付けが激しい世界だけれど、スキルがあれば怖くない。 食べ歩きで得た膨大な味の記憶を生かし、次から次へと絶品料理を生み出す巡。 その味は舌の肥えた王都の人間も唸らせるほどで――!? これは、食事を愛し食の神に気に入られた男が、異世界に“味覚革命”を起こす物語である。

転生王子の異世界無双

海凪
ファンタジー
 幼い頃から病弱だった俺、柊 悠馬は、ある日神様のミスで死んでしまう。  特別に転生させてもらえることになったんだけど、神様に全部お任せしたら……  魔族とエルフのハーフっていう超ハイスペック王子、エミルとして生まれていた!  それに神様の祝福が凄すぎて俺、強すぎじゃない?どうやら世界に危機が訪れるらしいけど、チートを駆使して俺が救ってみせる!

異世界に転生をしてバリアとアイテム生成スキルで幸せに生活をしたい。

みみっく
ファンタジー
女神様の手違いで通勤途中に気を失い、気が付くと見知らぬ場所だった。目の前には知らない少女が居て、彼女が言うには・・・手違いで俺は死んでしまったらしい。手違いなので新たな世界に転生をさせてくれると言うがモンスターが居る世界だと言うので、バリアとアイテム生成スキルと無限収納を付けてもらえる事になった。幸せに暮らすために行動をしてみる・・・

処理中です...