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共和国編〜好きに生きる為に〜

111話

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 夜の帳が落ち始めた頃に疲れから爆睡してた俺は悪寒がして飛び起きた。

「にゃ、? にゃんだぁ? 凄い寒気がしたんだが」

 何かとてつもなく嫌な予感がする。

 ま、まさか? 拒否した事がもう伝わったのか?
 いやいや、考え過ぎだろうな。
 そんな毎時間、毎時間ギルドに何回も問いかけする何てないだろうな。

(ギルドに依頼をして拒否でも拒否してなかったとしても
 逐次何かあれば報告を貰える様に依頼があった事をケビンは知らなかった)


 この都市で今日からランク上げの為に動くので楽しみにしている事もあったので
 そのせいで早く起きてしまった事にするのであった。

 宿の裏庭に出るとちょうどお酒の匂いと喧騒が聞こえて来ていて
 ここの街が中々に発展してる事が伺えた。

 不意に知ってる匂いに驚きその匂いを辿るとそこは酒場と言うよりは大衆食堂と居酒屋を兼ねた店だった。

 その店に入りメニューを見ると目をひん剥いて驚いた。
 匂いで分かっていたけど、焼きおにぎり(味噌)と(ノーマル)があったのだ。

「すいません!焼きおにぎり2種類とそれと野菜炒め単品で!」


 サッと注文してすぐに出されたのは懐かしきお通しだった。

 これ絶対、日本人経営者が来たでしょ? と言いたくなった。

 そもそも過剰な前サービスは日本で言うおもてなしの部類に入るのだが
 他の国ではそれはチップを貰って初めて行う行為だからこそ

 日本文化は面白いと言われていたのだ。

 水をサーブして貰うだけでもお金を要求される国すらあるというのに……

 俺は懐かしき味を楽しんだ後、1つ気になったのが全て産地が記入されていた。

 水仙国という表記が書いてあったのでこれは後に行かなくてはならない場所になった。

 まぁ、醤(ひしお)再現は出来ているし、醤油自体は作れてしまっているので
 欲求度としては低いかもしれない、本場の醤油と急ごしらえの醤油の差はあるかもしれないがそれだけなのである。

 前世では発酵させない醤油も結構増えてきていたけど
 やはり発酵さえ行っていれば風味豊かな部分は確かな味わいになるのだから。


 俺は満足してお土産に20個ずつ焼きおにぎりを買って宿に戻った。

 宿に戻った時にチラッとトアとトヤの姿が食堂で見えたが
 色々な人達+目を光らしてギルド職員が見ていたので俺はスルーしてそのまま部屋に戻った。

 冷たいと言う奴も居るかもしれないが、余りに関わり過ぎてこちらに来ても今の所困るのである。

 俺が高ランク冒険者ならクラン立ち上げで庇護下に入れる事も有り得るかもしれないが

 それでは貴族に囲おうとした帝国貴族と何ら変わらない。

 やはり趣味の合う奴らで集まりサークルの様に立ち上げるのがクランの正統な立ち上げ方だと
 俺は思うのでここは気にせず彼らの成長を……

 ん? 少し食堂の顔ぶれを思い出す。

 俺は顔を顰めた。

 知っている顔が居たからである。
 しかも3人も……

 1人はもう言わなくても分かるだろうさっき確かに目が合った気がしたし。

 コンコン

 扉がノックされたので返事をして開けるとほら来たよ……

 すぐに防音結界を張る。

「ケビン様ぁぁ!! 居なくなるなら言ってくださいよ!
 どうやってケビン印のカレー粉を手に入れるか悩み抜きましたよ!

 それにマーキング場所から転々とするもんだから追跡が面倒でしたよ!」

 いや……君ちょっと優秀過ぎないか?
 ハビスの血族とは聞いてるけど、転移マーキングだけで俺を捕捉して追い掛けてくるとか。

「いやお前、諜報部隊員が他国に普通に来るなよ……」

「いや辞めて来ましたよ!!
 ケビン様のカレー粉が得られないならあんな国要らないですよ!

 ハビス老も来そうになりましたが最近私がケビン様付きだったのも
 功を奏してマーキングが切れて居たそうです!」


 俺は頭を抱えそうになったけど少し悩んだ。

「もう、俺にくっ付いて来るのは確定か?」

 ブンブン首を縦に振る。

「はぁ……俺はお前の名前知らないんだけど。
そしてどうやって金稼ぐの? 
 流石に戦闘能力は高いから冒険者でも良いと思うけど。俺は組まないよ?」

 ドンッと胸を張り諜報部隊員は初めて変身用の魔法を解いた。
 俺はそれに驚く……諜報部隊員として1番知られたくない事は素顔を知られる事だから。

 つまりもう諜報部隊関連とは決別を意味したのだ。

「ケビン様のカレー粉を得て依頼料理にハマっているのでご飯屋を営もうとしたんですけど……

 この地は少し分が悪そうです。先程私も知ってる匂いに釣られて入った店が美味すぎて笑えました。
 ケビン様が欲していた醤油と言うやつでした

 あ、私の本名はタビですよ!」

 ふむ……やはりコイツ使えるよなぁ。
 絶対にエース級だろうよ。
 そしてあっさりと本名言いやがった。

「うん、それは俺も思ったんだけどさ?
 ならこう言うのはどうだ?」

 俺は兼ねてより、本当はノース辺境伯領の為に温めていた料理を教える。

 それは……饂飩、UDONだ!!

 醤油の味に親しみがある地域なら多分行けるだろうってな。
 ラーメンは麺の製法を知らないので無理だからな。

 まぁスープを変えればそれなりに繁盛しそうだ。

「目玉商品は何になさるので?」

「ほらこれだよ?」

 俺は諜報部隊員いやタビにいつも渡していた瓶をマジックボックスから取り出す。

「俺達の強みって何だ?」

 タビはニヤリと笑い

「空間魔法ですね? これがあれば食材の劣化も防げてスープも熱々で出せますね?」

 俺もニヤリと笑う。

「よし!タビお前商業ギルドに登録は推薦状が無いから無理だろう。
 だから俺が屋台申請して従業員として登録しよう。
 あ、後これ常に仕入れといてカレー粉の原料だからな」

 こうして何故か着いて来てしまった1人の諜報部隊員タビによって
 共和国内にカレー革命が起きるとはまだ誰も知らない。


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