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共和国編〜好きに生きる為に〜

107話

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 今、トア・トヤと俺の3人で宿の同じ部屋に居る。

 この街では最高級より2ランク下がった位の宿屋だ。

 最高級の宿に泊まると金持ちだと更に狙う奴が増えるから
 中位より少し上が今の俺の冒険者ランクとしては丁度いいけど年齢的にはまだ高いのは悩みの種だな。

 宿屋のおっさんには冒険者ギルドの資格証を見せたらコロッと態度変わったから大丈夫だろう。
 金も多めに払って尚且つ、少し脅したからな。


「トヤ、トア、お前ら今めちゃくちゃ混乱してると思うけどどうした?」

 2人とも何か不思議そうにしているので質問してみると

「いえ、ケビンさん。何でこんなに絡まれるんでしょうか?
 前に居た時は常にこちらに来るなという意思表示ばかりだったので」

 それに同意とトヤもウンウン頷く。

「前は酷い時には物を投げられてたぜ?」

 俺は呆れたのでマジックボックスから手鏡を取り出す。

「前はThe浮浪児だったからだろ? ほら鏡で確かめろよ。
 そして今は綺麗になって青髪何て珍しい髪色してるんだから目立つだろ?

 綺麗にする前は汚れてくすんでいて藍色に見えたからな」


「「えっ?これが私(俺)??」」

 綺麗にハモったな。


「それとこの街はさっさと明日には出ていくぞ。
 後、龍神様からお前ら2人にプレゼントらしいぞーー」

 2人とも収納リングを渡すと何故か泣き出した。
 俺は良く分からないので狼狽えるしかなかった。

「ゔぅーーごめんなさーい。こんなに……こんなに優しくしてもらえた事無くて。
 私達は、生まれてきてダメな人間だと思ってたから……」

「ふぅーん? それで?」

 これは重症だと、俺は2人を引き寄せ頭を撫でる。

「お母さんが、村で竜を生むために父と作ったのが私達2人です。
 でも竜にはなれず竜人族でした。

 村では竜になれない人は追い出されてどこかに消えてしまい
 私達もその通りに村を追い出されてここに数年かけて来ました」

 竜信仰ね……どうやっても実現できない事に情熱を注ぐ阿呆共だな。

「特にトヤは3歳で放り出されました。
 たまたま私達が頑丈で環境に強かったからこの歳でも生きてこれました。
 でも毎回捨てられた時期になると……思い出すんです。
『お前らが竜になれなかっから白い目で見られる。
早くいなくなれ!消えろ!』
 って母親に言われたのを」

 俺はついつい笑ってしまった。

「ケビンゥゥ何で笑うんだよぉぉ」

 トヤがこんなにもしおらしくなるなんてな。


「君達2人に面白い事を教えてあげよう。
 竜と人間が交わった所で竜にはなれない。

 何故だか分かるか?」

 2人は首を横に振る。

「彼らは魔法で人化する事によって子供を人間との間に生めるけど。

 本来竜は卵生なんだ。胎生の人間には竜を生む事なんて出来ないのさ。
 そして、父親に関してだが……お前らと会った事は無くともお前らの事は好きだと思う」

 2人はキョトンとしている。
 そうだよな。学園の本を読み漁っててたまたま知ってるけど。
 普通の人は知るはずのない知識。

「な、何でですか? 私達は1度も会った事が無いのですよ?」

 俺はニヤリと笑い2人を見る。

「竜は誇り高き一族として自分達を常に誇ってる。
 そんな竜には1つだけ難点があってな?

 子供を作る時は作りたいと思わないと作れないんだ。
 つまり父親は竜を作るのに利用されてたかもしれないが……
 それでもトアとトヤという子供を作りたいと願ったという証拠なんだよ。
 だからお前らも余り気にすんな!!」

 トヤは母親の方を気にしてるらしいな……

「なぁトア。竜人族になった子供達ってどうなった?」

トアは涙を拭きながらも首を傾げた。

「いや、幼かったので記憶には……あれ?
 確かに竜人族は村から追い出したと言われてましたけど実際に会った事無いです……」

 やっぱりそうだな。

「多分、お前ら意図的に洗礼式前に放り出されたな? 
 多分、お前達の村は洗礼式と同時に竜人族の子供を奴隷化してた筈だ。

 それまでに逃がしたいけど、お前ら2人がベッタリで逃げてくれないから母親は一計を案じたんだろう。
 感謝はしても、助けたいとは思うな。
 もっと覚悟を持っていれば一緒に逃げて冒険者ギルドや国に保護を頼めたんだからな」

 2人とも、驚きつつも何か安心した様な雰囲気だった。

 こうしてアサダ州最後の日が終わろうとしていた。

 俺は布団から突然起き上がり、トアとトヤの周りに防音、堅固な結界を張る。

「ちっ、諦めりゃいい物を……」

 俺が転移で外に出ると20人以上の人間がこちらに向かって来てるのを感知で分かっていた。


「おい、おい、何で3人のガキ攫うだけでこんなに人が必要なんだよ?」

 柄の悪い頭の悪そうな奴が叫んでいた。
 普通は隠密行動を取るだろ……


「お前らの質が悪いからだろうね?」

 俺は普通に答えてやると流石に慣れているのか全員が抜剣した。

「だ、誰だ!? 出て来やがれ!」

 俺は少し笑ってしまった。

「ふっ、お前達が攫おうとしたガキの1人だよ。
 じゃっ、狙った相手が悪かったと後悔して死ぬんだな?『ウォーターボール』」

 俺は20......正確には24人の頭にウォーターボールをぶつけ全員を溺死させて裏路地に捨てて寝るのであった。

「ふぁ~明日寝坊しないようにしないとな」
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