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共和国編〜好きに生きる為に〜
102話
しおりを挟む俺は今、睨まれている。
それもお相手は顔を真っ赤にしてだ。
「ふーん? それで何で俺の部屋に入って来た?」
ツーンという擬音が着きそうな程不法侵入者の女はそっぽ向いていた。
「よし!衛兵呼ぶか!奴隷にでも落ちて娼館ででも働いてくれ!」
そっぽ向いていた芋虫が俺を涙目で見つめ
「ご、ごめんなさいぃぃ。娼館だけはいやぁぁ」
実は結界を解いた時にこいつ俺にナイフを投げて逃げようとしたので
咄嗟にバインド(水)(闇)(植物)の3属性の魔法でガッチガチに縛った。
闇は状態異常、水は衣服を濡らして行動阻害、植物は簡単にロープと同じ役割をする。
本当は光もあるんだけど、朝からあの光を見ると目がチカチカして痛そうなのでやめた。
悲しいかなあ……何故か咄嗟にバインドしたのに完璧な亀甲縛りになってしまった。
そりゃ睨まれますよね。
「じゃあ、何で来た? 話せよ?」
「アブルゼ商会の商会長が捕まえて昨日の広場での興行で稼がせろって」
おいぃぃ!!正しく人攫いじゃねぇか。
立派な犯罪で、有罪だよ!
「あぁ……そう……(縛り首)」
最後はボソッと言ったが聞こえていた様でガタガタ歯が鳴ってるのがよく聞こえる。
「人攫い+強制隷属は一族郎党縛り首の晒し首……後はあぁ。
勤勉な囚人奴隷のご褒美の後、特赦もあったなあ」
あ、あぁ特赦って特別恩赦ってことだからね。
女の顔はどんどんと悪くなる。
因みに勤勉な囚人奴隷と言うけれど、ただ単に頑丈で
たまたま生き残ってるだけの連中で下手すりゃ1000人位は居る。
それを相手にした後に特赦で解放と言うのは現実的に有り得ないからだ。
今までに1人も特赦を得る事が出来なかったからのこそ制定されてる法なのだから。
本当に耐えきったらドン引きしながらも特赦の免状を出すだろう。
俺は国を出てから少し性格が悪くなったかもしれない。
前なら何かしらの罰を出してそこら辺に捨てたけど。
今は禍根を絶って置かないといずれジリ貧になるのが目に見えてる。
だけど……やっぱり甘ちゃんなのかもな。
「さて、お前には今2つの道がある。
商会諸共自滅の道と俺に態々危機を教えに来たと伝えて一緒に衛兵の所に行くかの」
俺は女が何か口をパクパクさせて伝えようとしていたが
話せない様なので魔力を目に集め見ると
胸の辺りにモヤがかかってる。
俺は歩いて近付きガシッと掴んでさらに首を見た。
おー怖っ、怒っとるわ。
んーどれかな?
「『解呪』む? 違うの? 『コントラクトブレイク』お? 当たったか?」
モヤが霧散し、何か鎖が見えるのでそれを魔力でぶち壊してみた。
「あ、こっちは違う奴っぽいな? 『解毒』『清浄結界』『カースブレイク』」
あーめんどっ!、解呪は光や聖魔法と呼ばれる魔法で呪いを解く為に使われるが
呪物や生贄を使い継続、断続的に呪ってると意味が無い。
今回はそちらのタイプの呪いだったので俺は闇魔法で呪い本体を破壊した。
「この州の闇は深そう……いや、あれか。
商人の欲の業は深いと言った方が正しいな」
女がプルプル震えているな。
感動したのか? ほらお礼を言ってみな?
「い、いつまで揉んでんのよ!!」
おっとこりゃ失礼。
「いやー? そこにあったから?」
「無いわよっ!」
そんなに怒らないでよくない?
「呪いの解呪に契約破棄までしたんだからそれ位代金に乗せといてよ。
さーて、こんなに心が狭いだなんて防音結界を消して悲鳴をあげようかな?」
この子どちらにせよ不法侵入からの物取り未遂or強盗未遂になるの気付いてないよね?
「ひっ!外道!最低! おっぱい星人!!」
むむっ!こちらにもそんな罵倒があるとは
コンコン、ドアがノックされる。
「お客様? 騒がしい様ですけど何かありましたか?」
俺は女を見やると涙目で首を振る。俺はニヤリと笑うとさらに首を振る。
こいつ多分、いや考えるな。奴らと同じ臭いがする。
「いえいえー、なんでもありませんよー」
「なら良かったです!」
店員が去っていく音を聞いて俺はこいつをどうするか考える。
「はぁ……それで君どうするの?
呪いや契約が壊れた事は既に呪いをかけた相手には知られてるから
死んだか裏切ったか確認する為に君のお仲間は既に動いてるよ?」
「じゃー貴方が護ってよ!」
俺の顬辺りからピキっと音が鳴った気がする。
「はい!来ました頂きました!ギルティ!さようならえっと『マジックボックス』」
俺は紙を取り出してサラサラーと文字を書く。
内容は
『私はアブルゼ商会の悪事担当をしていました。
仕事内容は人攫いをしていて相手に強制隷属を仕掛ける為に宿屋に侵入しましたが失敗しました。
好きに使ってください』
俺はニヤニヤと笑いつつ女に紙を見せて
この紙がおデコから剥がれない限り声が出せなくなる位の弱い呪いをかける。
えっと、呪いは確か……願いを言葉に発して代価を差し出すことにより発動するはず。
魔力が多い人は魔力を対価に発動出来るって聞いたなたしか。
「えっと……この紙がこの者の額から剥がれるまで声を失う『カース』」
俺は縛っていた闇と水の魔法を解除して適当にマジックボックスから木の杭を取り出して磔にした。
晒す場所は昨日、道化もどきをした噴水前広場に女を置いて行く事にした。
俺は目元だけを隠せる仮面を被った。
「ふぅ、久々に使うな。『ゲート』」
俺はゲートで噴水前広場に到着すると女は驚愕の表情で何か話そうとしてるも声が出ないので無視する。
広場に杭さしていると、何か野次馬が沢山出来ていた。
俺は諸事情を軽めに話した後に女の顔を見ると酷く困惑と恐怖していた。
「そんなに睨まないで下さいよ? 」
はて? 俺はこの女のどんな顔を野次馬達に見せないようにしているのかな?
まぁ知りたくもないし興味もないかな?
◇
結局、色々騒ぎが大きくなった上に強制隷属という国際法違反をした奴が居ると知った衛兵達が街を封鎖したせいで2日間の足止めを食らった。
それもその筈、国際法違反を国として放置すると警告が出る。
警告を無視すると2カ国以上が手を組みその国が断罪するまで
圧力をかけるのだ。そんな事にその圧力をかけた側の費用は断罪を中々しなかった国になるので
被害が甚大になる前に1度発覚したら最後で街の人も国も絶対に助けないのだ。
情けをかけようとして一緒に処刑された何て話珍しくもないからな。
そんな封鎖された街で暇だなとブラブラしていると俺は街で微笑みの悪魔という2つ名持ちがいると聞いた。
へぇ……どんな奴なんだろ!気になって居たけど
その内詳しいことは知れるだろうとその日は過ごした。
予定が2日もズレたけど今日こそダンジョンに挑戦だぁぁ
と意気込んで行こうとした時に
「あの仮面の下はどうなってるのでしょうか?
微笑みの悪魔様~」
軽くズッ転けた。
うん、さっさとダンジョン行ってこの街から出ていこうか。
こうして故郷を離れてると実感する。
冒険者やっててよかった!
冒険者の理念。
【自己責任】ーー力及ばずとも他人を羨むな、自分の鍛錬の量の少なさを恨め。
準備や可能性を潰さなかった自分の浅慮を恥じろ。
力無き正義はいつも勝てる何て奇跡は無い。
この格言は全員が1度は先輩から聞かされる大事な理念だった。
こういう時に準備を怠らず基準を自分の中に決めて正解だったと情を理性でぶった切れるのが楽だった。
----あとがき----
少し治安の良くない国に行った時に感じた作者の本音です。
どこの国に行っても日本人はお人好し。
狙い目と言われます。
争わない勇気も大事な事ですが、永遠に集られます。なので断ち切る勇気も必要な事。
そんなお話でした。
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