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本格始動知識部!
99話
しおりを挟む今日は獣王国新主都ビストのお披露目会+お疲れ様会の予定だった。
ここに『だった』を付ける理由はどこかの暴虐なる顔だけ可愛いわがまま王女様から注文を言われて
ちょっとイラッとしたので金を巻き上げつつ
厨房で指示を出しながらも提供人数が多いせいで魔法も使いつつ料理をしている。
「皆さん、野菜クズは洗ってしっかりと煮込めばスープの下味が出来ます。味見してみてください」
「「おお!」」
「料理はこういった下味や出汁が味の土台を支えています。
他の料理を作る時の参考にしてください。
肉や魚は血が臭みの元になるので同じ様に出汁をとる場合には注意してくださいね」
暴虐なる王女の所望品はカレーとデザートだ。
デザートに関してはマジで面倒だったので魔法でゴリ押しして氷の箱に入れて放置。
1つだけ言いたいのはプラテリア、アホだろ?
何であの子立食パーティーでカレー所望するの?
しかもドレスだぜ? こぼしたらンコ着いてる言われても何も言えないぞ?
今は魔法で小麦粉にバターと酵母を混ぜて捏ねている。
何時ものくそ硬いパンは風魔法で粉砕した。
そう、仕方なくカレーパンだ!!
これに関してはマジで他の人では作れないと思う。
この世界で新鮮なラードや植物油を集めれるのは
毎日素材が潤沢に入ってくる冒険者ギルドだけだからな。
冒険者ギルドと言えば。
最近のビストでは部族の集落から若い奴がお金を持ってやってくる。
貨幣の使い方を学ぶ為らしい。
そして半分以上の部族が、ドワーフの武器や防具を買いに来ていた。
俺は1部の獣人族が始めた屋台に色々テコ入れをした。
獣人族の利点とは何だ? と問われればさしあたって言うなら五感の中でも嗅覚だ。
つまり、美味い飯の匂い引っ提げて屋台出せば勝手に客は集まるのだ。
この手の商売を始めるに当たって、俺は売り子と調理を女性にして
力任せに商品をお金では無く暴力行為で得ようとすると……
とても怖い強面のおじさんお兄さんが裏であらこんにちは? と控えているという状況にした。
効果は抜群だった。
昔のゲームの王様や神官様ならこう言うに違いない。
『おぉ勇者よ、死地に飛び込んで来るとはなんと情けない』
と、これには獣人族も人族も入ってるのでアホだと思う。
俺はやり方を見せただけで他の屋台のおっちゃん達も
難しい職人技が要る料理以外は同じ様にしていた。
しっかり売り子のみという発展した店もあった。
そして、露店も何人か仕込んだらそれが基になったルールもある。
俺はそんな思考ともう1つの思考で先の事を考えていた。
精霊達は俺やネロにとても優しい。
最近も、態々俺に心配事や厄介事があれば教えに来てくれるのだ。
毎回相当な数のお菓子を献上させられるけど……いや違うぞ!?
泣いてなどいないぞ? ちょっと玉ねぎの微塵切りで鼻に臭いが入っただけだ。
全ての仕込みが終わったので俺は退散した。
後は放置して膨らんだらネタを包み揚げるだけだからな。
因みにどうせ揚げ物作るならとドーナツも仕込んでいたなんて誰にも気付かれてはいない。
俺は部屋に戻り、大豆を粉にする為にすり潰して塩と砂糖を入れてきな粉に。
牛族ミルクが優秀過ぎて笑える。
生クリームやカスタードクリームを作ってみたけど
激ウマ過ぎて未だに1人で楽しんでいる。
しかし本当に一瞬出して舐めて隠す。
10秒出していれば暴虐王女に気付かれるからな。
俺は牛族ミルクを大量購入したのだが、その時に
『そんなに沢山飲みたいなら直飲みする? お金払いも最高だしねー』
とからかわれた。
ここでお調子者の奴なら、喜んで!!と行けるのだろうけど。
俺にはハードルが高過ぎた。
って言うより、お子さん達の何とも言えない視線に耐えられんかった。
親のそういうジョークに気まずいのと、俺が客だから
どういう反応していいのか判断に困ると言った表情で見られたら
流石にうぇーい何て言いつつ欲にかまける事なんて無理だった。
最近は本当に、本当にこういうからかいなのか? ハニートラップ? が多くて困っている。
主にドワーフ族のポジティブキャンペーン(カレー教)が9割理由だ。
勿論、強者がモテるのも今まで通りなのでネロは強者が持つオーラや気を常に纏っている為、
めちゃくちゃ突撃されてる様でむさい男と女の子を引き連れて大名行列をしている。
俺? 俺は突撃されても普通に負けたら来なくなった。
ネロは『武人にわざと負ける情けなどない』
と言って馬鹿正直に全員相手にしてる。
俺は1時間程、時間を潰しながらある物を作ってから
厨房に戻りドーナツを揚げまくりながら魔法でカレーをパンに包む。
魔法って便利だよなぁ。
こういう時に手に臭いもつかないし高速で作業が出来る。
俺の魔法を見て、料理長達は模倣は無理と諦めていた。
俺は油切り用のパッドと網は唐揚げ用に前から作っていたので
それに大量に縦に積んではマジックボックスに入れていく。
熱々の料理提供にマジックボックスが有能過ぎる。
まぁ、時間停止は素養と魔力量が必要なのでそもそも論。
それだけ空間魔法使えたら戦闘職だよね? って話だ。
商売しなくても稼ぎは幾らでも稼げるのでそういう人は居ないって訳だ。
ここでまた精霊が近くによって来て思念を渡してきたので揚げたてドーナツに砂糖を塗し渡す。
最近は、父上の領内の屋敷周辺を嗅ぎ回ってる奴が多数。
既に3回、ムゥ、サツキ、メロが狙われた?
それが1ヶ月前の話? それを知った時の俺の顔はどんな顔だったのか自分でも分からなかった。
それにハンナを寄越せと言い寄る貴族も多くて父上と一触即発らしい。
ここ1年ちょっと、俺は父上やハビスの目から離れて少し羽目外した結果に驚きと呆れが出ていた。
ハンナは俺の側付きとは有名だ。
しかし、それを横槍の如く寄越せと父上に言える貴族が凄いと思う。
だって、部下(人間)を上の判断で金払ってやるから寄越せと言う。
人身販売と何が違うのだろう? 騎士とは当代当主や貴族の1個人に忠誠を誓う人の事だと思うんだけどなぁ。
うん。
腹積もりはやはり決まったな。
◇
獣王国新首都ビストの完成、感謝祭がその日開かれた。
獣王の言葉は予定より20分の1の長さになった。
これ……歴史書に食欲に負けた獣王とか言われないよね?
と内心冷や汗をかいていた。
そう、今から5分前の事だ。
「同盟国の帝国の皆様。今回のビスト建設から法整備まで何から何まで整えて貰いありがとう。
獣王国の獣王として我は今一度同盟国の帝国とはこちらからは一切争わないと表明しよう」
そこまで言うと、一緒に派遣されてきた貴族が拍手しまくりでその文官の周りには知識部の姿も見えた。
あーダルいなぁと長い話になりそうだなぁ。
今のうちにカレーパン出して置かないと
油切りが甘いと大変だしなとマジックボックスから取り出す。
「国交樹立の感謝の意を示す。ん?
それで……あの……うん。
無理だ!!腹減った。ケビン!そりゃないぜ!
暴力より辛い美味そうな匂い振る舞わせて、スピーチ何て無理!
帝国の皆!ビストの連中もさっさと飲もうぜ!!
乾杯!」
「獣王様!?」
乾杯の音頭を急にとったと思ったら獣王は既に目の前に居てカレーパンを見ていた。
「ケビン説明よろしく」
「獣王様、ちゃんとしないとまた王妃様に怒られますよ?
これはカレーパンです。ドレスだ、礼服だ着てるのに
貴方のお子さんが立食パーティーなのにカレー出せって
煩いから仕方なく手で掴める様にしたんですよ」
「うみゃーーー」
おい、説明してるそばから食って聞いてないとかお前まじか!?
相手が獣王だから口には出来ないから心の中でもう1回問うぞ?
お前まじか……?
その後、王妃様や暴虐の王女様から直接持って来いと言われたので
拒否して一悶着あったが中々騒がしいくも楽しい最後の一時を過ごした。
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