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本格始動知識部!
98話皇帝陛下視点
しおりを挟む~とある会議室~
宰相が先日、進捗と言うよりも急速発展を遂げた
同盟国の獣王国の新首都ビストを視察に行った使節団長より報告を受けていた。
「ドワーフ族が自ら恩義を返すべく参加した結果、予定が一気に繰り上がり帰還予定だった
学生達は建物が出来上がるまで残ると表明した訳ですか?」
そうなのだ、1年間という予定だった学園生徒達は全員が帰還を拒否と言うと命令違反の為に
全員がもう少しで終わるので帰還命令の延期を願い出たのだ。
「して、そのドワーフ族の恩人とは誰なのだ?」
チッ、トラスド公爵の狸爺が興味を持ったか。
答えるなよ? 使節団長、頼むぞ。
俺のそんな考えを無視し、使節団長は普通に話してしまう。
「受け入れてくれたノース辺境伯とケビンと言う平民の少年です」
俺はつい、机を叩いてしまった。
「陛下? どうなされましたかな?」
ニヤニヤと笑う狸爺に誰か処刑命令を出したい。
誰か介錯用の斧くれ。
「ほう? 平民とな? ならば爵位を与えれば良いか?
それとも「要らぬ」陛下? 成果には報酬を。報酬には爵位でしょうが?」
爵位を報酬と言うのは貴族だけというのが何故分からぬ。
「爵位を与えて何になる。まだ10になったばかりの子だぞ?
そして、誰かの養子何て話をしてみろ。
お主らの家にとある連中が押し掛けてくるぞ?」
「ほう? かの血族という事でしょうか?」
そう、今の帝国で直接貴族相手に真正面から武力にて押し掛ける等、鬼と呼ばれるアイツしかおるまい。
ここで俺はケビンの話が有耶無耶になってしまえば良いと会議の話を打ち切り
宰相に目配せをして次の話を進めた。
「使節団長より外務大臣へと獣王国から輸入の打診が来ています。
数年は輸入だけでも続けられる程の資金がある事が分かっているそうです。
しかし、正確な金額に関してはSランク冒険者のカロン様、プラテリア様達との契約魔法にて口を開く事を禁止されていました。
後は薄汚い事をやった共和国の加盟国の1つに対する対処方法が分からず困っている為
大国である帝国に仲介して欲しいそうです。
獣王は戦闘よりで文官や交渉は全く無理だそうです。
えー他の皆様は分かりづらいと思いますのでクロス伯爵やノース辺境伯が脳筋成分2倍と思ってください」
小さく「ぐふっ」という声が聞こえる。
あの2人は確かに脳筋だが、主要な政策だけは外さず
側近の声にもしっかりと反応するだけの柔軟さがあったのだ。
しかし、獣王の場合。
側近も脳筋な為に、脳筋同士の会話で良い政策でも
細かい運用が出来ずに頓挫した何て沢山聞いてきたのだ。
しかしあの国の王は常に最強であらねばならぬのもまた事実。
でなければ内紛待ったなしなのだ。
「要求は必需品か? それとも技術面か?」
「はい、塩と野菜の種の様な物と小麦の苗が欲しいそうです。
ドワーフ族達の調べでは森が近い獣王国は穀倉地帯に出来るだけの土壌らしいです
つまり後々輸出品を麦に固定出来ると言って居ますね」
会議室がザワついた。
農業をしなかった、獣王国にてドワーフ族という他種族が関わるだけでこれだけの発見があるのだ。
「既に、ドワーフ族の指導により土壌改良をしているそうです。
そもそも、獣人族には馬力は必要無いとの事で
土を耕すにしても獣化して道具を引っ張って行っているそうです」
そういうと宰相は俺に書類を渡してきた。
ふむ、ほう?
牛や馬に着ける農耕器具や水車起点の臼、やはりドワーフ族とは計り知れんな。
どうしてもあの少年があちらに居ると顔がチラつくのが難点だがな。
「宰相、いや使節団長よ。この報告書にある牛族のミルクを使ったチーズとは何だ?」
俺はまさか食事が美味しかったです何てアホな食事日記を報告書に紛れさせた何て思いたくないからな。
「あ、牛族のミルクの加工品で保存食にも長けていて小麦を使った料理の発展先だと
ケビン少年が報告書に絶対載せる様にとお話になりましたので
そのうち彼の個人的な諜報員が陛下に直接報告と現物を持ってくるそうです」
ケビンのアホタレー!!
サラッと俺と諜報員を通してやり取りしてるなんてばらすんじゃない!
「諜報員はあれだ。クロス伯爵家の1人がケビン少年に成人まで付き従ってる……
いや、伯爵が中々報告に来ない時に催促してるだけだ」
仕方ないと、ケビンの出自を明らかにした。
「くれぐれも手は出すなよ?
奴は何故か強者に好かれている」
そう言うと使節団長も追従してくれた。
「獣王国に居る間はずっとSランク冒険者2人が取り合ってましたね。
いやー羨ましいですよ。あんな美女2人に追い掛けられるなんて」
俺はその言葉に青筋を立てそうになるが我慢した。
んん? カースド公爵も何故か青筋……あぁ。
令嬢はあんな事があったのに未だに関わりたいのか。
こうして会議は終わって執務室に戻ると机の上に小さな青い旗が置いてある。
「ふむ、報告を聞こう」
どこからともなく黒い装束を身にまとった者が現れる。
「はい、今回はこちらです!」
丸い黄色色の物が目の前に出された。
「これが報告書にあったチーズという物だな?」
「えぇ、今回は2つ持ってきましたので1つは少し食べてみましょう。
ワインや甘くない小麦焼きを一緒に食べると酒のツマミになるそうです」
こやつ、最近思うのだが俺を皇帝陛下と知っておるよな?
遠慮無く、ワインを開けて2つのグラスと切ったチーズを取り出す。
匂いを嗅ぐと何やら不思議な匂いだが1口食べるととても美味かった。
小麦焼きも面白い発想だった。
甘くせずに逆に塩を振り、その塩っけで酒を飲むのだ。
「うむ、これはいかんなぁ。俺も獣王国に行きたいなぁ……」
「陛下? 牛族はバインバインでしたよ?」
「ふむ? 所でビストには娼館あったりするのか?主かなり艶々なのだが?」
前に見た時は疲れきっていた彼はどこにも居らず。
今はウッキウキのつっやつやになっていた。
「あ、昔の名残であるにはありますよ。
俺は牛族の女の子に土下座とお金を払おうとしたんですけど……」
「何だ? 勿体ぶるな。早う言え」
「獣王国ビストでは金よりカレー粉の方が人気です。
つまり……ケビン坊ちゃんは毎日追いかけられています。
この間、オッパイとオッパイに挟まれて窒息仕掛けてましたからね!」
うむ、何てしょうもない報告なのだ。
ん?待て……俺は嫌な事を思い出す。
カレー粉は人気ではあれどそれなりに裕福な家庭なら買える。
しかし、今の所外から取り寄せる事が出来ない。出来るのはこやつのお陰でケビンのみ。
むむっ、不味いのう。
良くくだらない報告をしてくれたと思ったが有益な情報だったな。
「よし、カレー粉を輸出品として卸そうでは無いか」
「あ、良かった。皇帝陛下ならお前のスッキリ話だけで
そこに至るからとケビン様に言われて居たので助かった!」
「何故その様な事を?」
「ケビン様に寄ると、その話を聞いて前のめりで来たら巨乳派、興味無さそうなら普通から小さい好き派らしいので
皇帝陛下の関心度で話を決めろと言う話でした」
あやつ、情報屋にでもなるのではないか?と心配になるのであった。
◇
~トラスド公爵陣営~
トラスド公爵はその白髪になった白髪を撫でニヤニヤとしていた。
帝城に用意された部屋に戻ると派閥の貴族が集まっており
部屋に居るのは肥えた連中ばかりで少し顔を顰めた。
圧迫感と鼻息の荒さと少しの不快なジメッと感を感じた。
「それでトラスド老。取り込むのですかな?」
トラスド公爵は頷く。
「儂らは散々アレクサンダー・クロスにやられてきた。
脳筋で全く話の通じない獣だ。
彼奴が息子に裏切られると分かればかなりの痛手であろう?
そもそも、喧嘩でもしなければ出奔何てありえぬだろう?
騎士爵で良いか?」
1人が手を挙げる。
「彼は既に獣王国やノース辺境伯で色々と手を出しています。
ならばいっそ我らの為に男爵位を渡して子爵級の不毛な土地を渡して開拓させれば宜しいのでは?
後々、その土地を開拓し、盛り立てれば子爵にするとでも口頭で言えば喜んで働きましょうぞ」
「「「そうだな!お前天才か?」」」
鼻高々にブヒブヒと笑う度に鼻が鳴る。
トラスド公爵はそんな光景に微笑んでる様に見えた。
内心は『臭い息を振りまくんじゃない。フゴフゴ煩いのう』と思っていたとは言えない。
「文官に圧力をかけてねじ込め。論功行賞授与式まで陛下や宰相に絶対にバレるなよ?」
そんな時に部屋にはぷかぷかと黄色と紫に光る玉があった。
目の前を飛んでいる光の玉には誰も気付く事は無かった。
『はぁ……やり過ぎた? いや過去にやり過ぎた恩が帰ってきたなら文句は言えないよなぁ』
光の玉からの報告を受けてロッキンチェアに座る少年は孤児院で孤児を見つめて悩むのであった。
「あーあー楽しかったんだけどなぁ」
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