変人奇人喜んで!!貴族転生〜面倒な貴族にはなりたくない!〜

赤井水

文字の大きさ
上 下
59 / 296
学園編

58話

しおりを挟む
  俺達5人は皇国の首都を別々に上空から入り各個撃破する事にしたのだが……

「はぁ……この国は何やってんの?」

  俺の視線の先には結界の端で女の子が手を前に腕を縛られ台の上に乗せられている。
  その周りを大人達が囲い女の子はビクビクと震えていて時間を置いてビクッと肩が跳ねて居るので罵倒されている様だ。

  あれじゃまるで魔女狩りの生贄だな。
この国の国民は質素倹約をして慎ましく暮らし宗教へ傾倒していると認識していたが
  欲の塊じゃないか、自分達が生き残る為なら弱者には何をしても良いって事かい?

「ムカつくな……個人的な行動は良くないけどこればっかりは許せない!『テレポート』」

  俺はフードを被り認識阻害の効果と紫の粒子を纏い少女の横へと転移した。

「ひっ!ヒゥイ」

  女の子は悲鳴を上げ、我慢しようとして更に変な声を上げていた。
  俺はどう繕っても変な怪しい奴なので女の子の頭を撫で
  その手を縛られているロープを触り少し離れるとロープはポロッと落ちて俺はそのロープを紫の炎で焼き尽くした。

「お!お前は何者だ!?何しにここに来た!」

  ようやく正気に戻った囲い込んでた男達……ん?ちょっと老けてるのが多いな?

  そのまま話すのは躊躇われるから『ボイスチェンジ』の魔法を使う。
良かった!学祭とかあったりした時の為に宴会芸用の魔法覚えておいて!

  この世界、娯楽が無いせいか変に宴会や祭りが発達している。
多分初代皇帝がそこに入ったせいで文化まで侵食してしまっていた。

  よし!魔法の効果は出たな?

「我こそ汝らに問う?自らが生き残る為に何故少女を犠牲にしようとする?
善い行いをするのは皇国民の美徳でなかったのか?」

  善神教の1つを話してみたら男達全員笑い出した。
  俺はそれを注意深く見て確認していた時に気付いた彼らもこの女の子も服装がやけにボロボロだ。

「あー?何だお前?上の連中か?そんなもん金を教会に払える奴らだけが言ってるもんだろうが!

俺達はなぁ……汚いと罵られて端に追いやられた人間なんだよ!
だったら外のバケモンに俺達も力を貰ってこのクソな国をぶっ壊してやるよ!

ここでは“力こそ正義“なんだよ!」

  そう言って武器を持ち上げた瞬間に俺は彼らの周りに紫の炎を円で出し尚且つ魔圧でその場に縫い止めた。

「ガッ!?グゥゥゥ。また奪われるのか俺達はぁぁぁ」

  そんな叫び声が聞こえるが……

「ふむ、なら何故冒険者にならない?彼らは実力主義だぞ?
力こそ正義と言ったな?今我は汝らのその主義通りに従っている。

そしてとある方の命令で我達はあの悪魔を討伐する。
汝らが力を得る事は無いし、そもそもあれらには理性が無い。

生贄を出しても理解出来ぬぞ?」

 何かだんだんとキャラが固まってきたと言うよりスラスラとセリフが出て来て楽しくなってきたぜ!

  そしてコイツらはアレだ、所謂スラム街の住人って奴だ。
  世界が変わっても貧乏暇なし時間なし金なしで
  前世の俺も宗教は仲良くしてれば飯が食える、又は食わしてくれる集会所にしてたから何となく分かるぞい!

  前世と違いこの世界では力を持たなきゃ自分の全てを失う。
  結果それを悪魔の波動により悪感情の共鳴が起きて取り込もうと必死だったのだろう。
  なら全てを上塗りしなくてはならないな!

  よし!行こうと空を飛ぼうとした時だった。


「い、妹を返せぇぇぇ!!」

  1人の少年がボロボロに錆びた剣を持ちこちらに走って向かって来た。
  空から確認してた時から居るのは知っていたが俺が1人になった途端来るとはな。

  俺は剣を振り降ろした少年の腕を掴みそのまま地面に叩きつけた。

「ガッッハッ!!」

「お兄ちゃん!?」

「少年よ?何故相手が1人になった途端に出て来た?

そして少年が勝てないと二の足を踏んでいた相手を触る事すら無い者に戦いを挑んだ?
我が少女を助ける為と判断されなければ消し炭にされていても文句は言えぬぞ?」

  俺は少年の目の前に紫の炎の玉を出す。

「少年よ。守ろうとするなら力を着けよ。
この街や国では無理だろうが、共和国や帝国では冒険者見習いを育成する場がある。

汝らが恐れた悪魔は今我と我の同志達が討伐を始めている。
その様子を見ても折れない様なら頑張るが良いぞ『ショックボルト』
妹が大事なら奮い立つ事も大事だぞ」

  俺はこの兄妹の姿を前世の自分に重ねてしまっていた。
  この場は切り抜けれる様に男達を気絶させ妹の方に向かい頭を撫でた。

  多分この2人俺より年上だが身長は変わらない。
  妹はほぼ同い年っぽいけど小さいな。

  そのまま去るのも何かあれだなと思い、俺はマジックボックスから小袋1つ取り出し少年に投げ渡し少女と握手をして1枚の硬貨を握らせた。

「我が去った後に見るが良い。兄にも秘密でずっと隠す事だな。
本当に困った時に使いなさい」

俺は少女に耳打ちし、少年の方を向く。

「少しの金と冒険者が野営に使う結界石だ。
魔力を込めれば何度でも半日は使える。
金は服装と旅費にでもすると良い」

  少年は顔を百面相させてコロコロ変わっているが少し時間が無い。

  「おい!アンタ名前を教えてくれ!いつか返しに行くから!」

  俺は少しその言葉に笑みが溢れてしまった。

「ふっ、今の少年なら何十年先かな?それと探してみるが良い。妹と仲良くな?」

  俺はそう言うと空を飛ぶ。その時に聞こえた声で転けそうになった。

「お!お兄ちゃん!人って極めると空も飛べるのね!?
私も飛びたい!お兄ちゃん!お兄ちゃん!」

  ふふ、強さは人の欲の求心力になるだろうがそれよりも憧れやなりたいという願いの方が強く印象的に残る。

  あれじゃ少年より少女の方が我武者羅に冒険者になりそうだなぁ。
  なんてお節介をした後に俺は結界を抜けて上空に待ち構えていた悪魔を見る。

「はぁーマジでこれに俺、勝てんのか?やだなぁ。まぁ行こうかな?」

  そう、ド派手に見せる為に俺はローブに魔力を流して紫の粒子を撒き散らすのであった。
しおりを挟む
感想 74

あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

誰も要らないなら僕が貰いますが、よろしいでしょうか?

伊東 丘多
ファンタジー
ジャストキルでしか、手に入らないレアな石を取るために冒険します 小さな少年が、独自の方法でスキルアップをして強くなっていく。 そして、田舎の町から王都へ向かいます 登場人物の名前と色 グラン デディーリエ(義母の名字) 8才 若草色の髪 ブルーグリーンの目 アルフ 実父 アダマス 母 エンジュ ミライト 13才 グランの義理姉 桃色の髪 ブルーの瞳 ユーディア ミライト 17才 グランの義理姉 濃い赤紫の髪 ブルーの瞳 コンティ ミライト 7才 グランの義理の弟 フォンシル コンドーラル ベージュ 11才皇太子 ピーター サイマルト 近衛兵 皇太子付き アダマゼイン 魔王 目が透明 ガーゼル 魔王の側近 女の子 ジャスパー フロー  食堂宿の人 宝石の名前関係をもじってます。 色とかもあわせて。

チートな親から生まれたのは「規格外」でした

真那月 凜
ファンタジー
転生者でチートな母と、王族として生まれた過去を神によって抹消された父を持つシア。幼い頃よりこの世界では聞かない力を操り、わずか数年とはいえ前世の記憶にも助けられながら、周りのいう「規格外」の道を突き進む。そんなシアが双子の弟妹ルークとシャノンと共に冒険の旅に出て… これは【ある日突然『異世界を発展させて』と頼まれました】の主人公の子供達が少し大きくなってからのお話ですが、前作を読んでいなくても楽しめる作品にしているつもりです… +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-  2024/7/26 95.静かな場所へ、97.寿命 を少し修正してます  時々さかのぼって部分修正することがあります  誤字脱字の報告大歓迎です(かなり多いかと…)  感想としての掲載が不要の場合はその旨記載いただけると助かります

スキルが覚醒してパーティーに貢献していたつもりだったが、追放されてしまいました ~今度から新たに出来た仲間と頑張ります~

黒色の猫
ファンタジー
 孤児院出身の僕は10歳になり、教会でスキル授与の儀式を受けた。  僕が授かったスキルは『眠る』という、意味不明なスキルただ1つだけだった。  そんな僕でも、仲間にいれてくれた、幼馴染みたちとパーティーを組み僕たちは、冒険者になった。  それから、5年近くがたった。  5年の間に、覚醒したスキルを使ってパーティーに、貢献したつもりだったのだが、そんな僕に、仲間たちから言い渡されたのは、パーティーからの追放宣言だった。

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

処理中です...