転生ペンギン

大石或和

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第一章.転生、ペンギンになる

ザリアスは謎の人間と出会う

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 あのペンギンの様子が、変わった?
 俺の【固有結界】によって消滅した筈の魔力が、微量ではあるが再生を試みている。
 一体、何が起こったというのだ。
 考える可能性は二つ。
 外部からの接触を受け【固有結界】が破壊されたか、それともあのペンギンの変化が関係しているかだ。
 それ以外に可笑しな点は見受けられない。

「まさか‥‥」

 この不利的状況を前にして覚醒した?
 そんな物語のような都合が良い話があったら困るのだが、可能性はゼロではない。
 本当に謎だ。

「あのペンギン、面白いですね」

「────!?」

 背後を取られた、か。
 ペンギンに気をとられている隙に、まさか別の刺客が来るとは。
 今日はつくつぐ面白い。

「いや、すまない。魔王軍幹部最強と謳われるザリアス殿を見かけたのだ。同じ話題を共有したくてね」

 目の前に立つ男からは一切の敵対心が感じられないし、戦って負ける気すらしない。
 あえて実力を隠しているのか。
 でなければ先程の出来事はただのまぐれとなる。
 しかし、まぐれにしては上手く立ち回りが出来ており、実力者の風格も持ち合わせている。
 へぇ、こいつも面白いや。

「あのペンギン、妙ではありませんか?ずっと彼を見ておりましたが、あの強威力での広範囲攻撃‥‥‥‥。素人が撃てる代物ではない」

「すまない。それを俺はそれを見ていないから分からんのだが、確かにあいつは妙だな」

「えぇ。長く楽しめそうです」

 言葉から読み取るに、俺よりも早くからこの場に居合わせているのだろう。
 男は顔に薄く笑みを浮かべると、一度お辞儀をしてこの場から退散し始めた。
 面白いがなんとも不気味で、あまり関わりたくはない人物だ。

「あ、忘れる所でした」

「え?」

「ザリアス殿が名前を知られて、私が知られないのは不平等というものですね」

 正直、この男の名前は聞かなくてもいいのだが。
 一応彼なりの礼儀を込めているのだろうから、素直に聞いておく事にした。

「では聞いておこう」

「──私の名前は、麟瀟贐戳蟇りんしょうじん たくまと申します」

 聞き慣れない名前だ。
 覚えやすくて助かるが、謎は深まるばかりだ。

「あぁ、覚えておこう」

「有難いですな。それでは、私は用事がございますので‥‥‥‥」

 そう言い残すと、麟瀟贐戳蟇は横から吹いた風に混じって姿を消した。
 
「妙というか不気味というか」

 いや、もうそんなのは忘れよう。
 今はあのペンギンとの勝負が最優先事項だ。
 アイツがどのように立ち回り、短時間で戦略を練り、どう俺に対応して見せるのか。
 俺は面白さと強者を求める。
 何も持たない奴には興味なんぞ微塵もない。
 でも。

「今はアイツとの戦いが、本当に楽しみで仕方がない!!ペンギン、精々俺を楽しませてくれよ?」
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