5 / 9
第一章.転生、ペンギンになる
ザリアスは謎の人間と出会う
しおりを挟む
あのペンギンの様子が、変わった?
俺の【固有結界】によって消滅した筈の魔力が、微量ではあるが再生を試みている。
一体、何が起こったというのだ。
考える可能性は二つ。
外部からの接触を受け【固有結界】が破壊されたか、それともあのペンギンの変化が関係しているかだ。
それ以外に可笑しな点は見受けられない。
「まさか‥‥」
この不利的状況を前にして覚醒した?
そんな物語のような都合が良い話があったら困るのだが、可能性はゼロではない。
本当に謎だ。
「あのペンギン、面白いですね」
「────!?」
背後を取られた、か。
ペンギンに気をとられている隙に、まさか別の刺客が来るとは。
今日はつくつぐ面白い。
「いや、すまない。魔王軍幹部最強と謳われるザリアス殿を見かけたのだ。同じ話題を共有したくてね」
目の前に立つ男からは一切の敵対心が感じられないし、戦って負ける気すらしない。
あえて実力を隠しているのか。
でなければ先程の出来事はただのまぐれとなる。
しかし、まぐれにしては上手く立ち回りが出来ており、実力者の風格も持ち合わせている。
へぇ、こいつも面白いや。
「あのペンギン、妙ではありませんか?ずっと彼を見ておりましたが、あの強威力での広範囲攻撃‥‥‥‥。素人が撃てる代物ではない」
「すまない。それを俺はそれを見ていないから分からんのだが、確かにあいつは妙だな」
「えぇ。長く楽しめそうです」
言葉から読み取るに、俺よりも早くからこの場に居合わせているのだろう。
男は顔に薄く笑みを浮かべると、一度お辞儀をしてこの場から退散し始めた。
面白いがなんとも不気味で、あまり関わりたくはない人物だ。
「あ、忘れる所でした」
「え?」
「ザリアス殿が名前を知られて、私が知られないのは不平等というものですね」
正直、この男の名前は聞かなくてもいいのだが。
一応彼なりの礼儀を込めているのだろうから、素直に聞いておく事にした。
「では聞いておこう」
「──私の名前は、麟瀟贐戳蟇と申します」
聞き慣れない名前だ。
覚えやすくて助かるが、謎は深まるばかりだ。
「あぁ、覚えておこう」
「有難いですな。それでは、私は用事がございますので‥‥‥‥」
そう言い残すと、麟瀟贐戳蟇は横から吹いた風に混じって姿を消した。
「妙というか不気味というか」
いや、もうそんなのは忘れよう。
今はあのペンギンとの勝負が最優先事項だ。
アイツがどのように立ち回り、短時間で戦略を練り、どう俺に対応して見せるのか。
俺は面白さと強者を求める。
何も持たない奴には興味なんぞ微塵もない。
でも。
「今はアイツとの戦いが、本当に楽しみで仕方がない!!ペンギン、精々俺を楽しませてくれよ?」
俺の【固有結界】によって消滅した筈の魔力が、微量ではあるが再生を試みている。
一体、何が起こったというのだ。
考える可能性は二つ。
外部からの接触を受け【固有結界】が破壊されたか、それともあのペンギンの変化が関係しているかだ。
それ以外に可笑しな点は見受けられない。
「まさか‥‥」
この不利的状況を前にして覚醒した?
そんな物語のような都合が良い話があったら困るのだが、可能性はゼロではない。
本当に謎だ。
「あのペンギン、面白いですね」
「────!?」
背後を取られた、か。
ペンギンに気をとられている隙に、まさか別の刺客が来るとは。
今日はつくつぐ面白い。
「いや、すまない。魔王軍幹部最強と謳われるザリアス殿を見かけたのだ。同じ話題を共有したくてね」
目の前に立つ男からは一切の敵対心が感じられないし、戦って負ける気すらしない。
あえて実力を隠しているのか。
でなければ先程の出来事はただのまぐれとなる。
しかし、まぐれにしては上手く立ち回りが出来ており、実力者の風格も持ち合わせている。
へぇ、こいつも面白いや。
「あのペンギン、妙ではありませんか?ずっと彼を見ておりましたが、あの強威力での広範囲攻撃‥‥‥‥。素人が撃てる代物ではない」
「すまない。それを俺はそれを見ていないから分からんのだが、確かにあいつは妙だな」
「えぇ。長く楽しめそうです」
言葉から読み取るに、俺よりも早くからこの場に居合わせているのだろう。
男は顔に薄く笑みを浮かべると、一度お辞儀をしてこの場から退散し始めた。
面白いがなんとも不気味で、あまり関わりたくはない人物だ。
「あ、忘れる所でした」
「え?」
「ザリアス殿が名前を知られて、私が知られないのは不平等というものですね」
正直、この男の名前は聞かなくてもいいのだが。
一応彼なりの礼儀を込めているのだろうから、素直に聞いておく事にした。
「では聞いておこう」
「──私の名前は、麟瀟贐戳蟇と申します」
聞き慣れない名前だ。
覚えやすくて助かるが、謎は深まるばかりだ。
「あぁ、覚えておこう」
「有難いですな。それでは、私は用事がございますので‥‥‥‥」
そう言い残すと、麟瀟贐戳蟇は横から吹いた風に混じって姿を消した。
「妙というか不気味というか」
いや、もうそんなのは忘れよう。
今はあのペンギンとの勝負が最優先事項だ。
アイツがどのように立ち回り、短時間で戦略を練り、どう俺に対応して見せるのか。
俺は面白さと強者を求める。
何も持たない奴には興味なんぞ微塵もない。
でも。
「今はアイツとの戦いが、本当に楽しみで仕方がない!!ペンギン、精々俺を楽しませてくれよ?」
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです
青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる
それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう
そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく
公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる
この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった
足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で……
エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた
修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た
ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている
エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない
ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく……
4/20ようやく誤字チェックが完了しました
もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m
いったん終了します
思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑)
平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと
気が向いたら書きますね

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる