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第一章.転生、ペンギンになる
強襲
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「では、話をしましょう?あなたに敵意がない限り、こちらは攻撃をしません。それでよろしいですか?」
「俺はそれで構わない。元々こちらに非が有るので、話す機会をくれただけでも有難い」
お風呂場から少女の自室へと移動した二人は、先程の提案通りに話をすることにした。
話をする、とは言っているが、言い換えれば休戦をする的な形で緊張は続く。
ペンガ自身も別にそれで構わない。
敵対するのは好ましくないし、出来ることなら協力関係を築きたい。
なにせ、この世界の話を聞けるのであれば生存率が少しでも高まる可能性は上昇する。
この機会を逃す訳にはいかない。
「分かったわ。あ!そう言えば気にしていなかったのだけれど、喋るペンギンなんて初めて見たわ。どこの生まれ?」
「えーと‥‥」
突然振られたなんとも答え難い質問に、ペンガは同様を隠せない。
転生したばかりなのだから、この世界の地名だって一つも分からないので適当言って誤魔化すことも出来ない。
ましてや、日本という地名を出して信用して貰えるかも怪しい。
(転生論的なのがあれば話は楽なんだけどな)
そう思うのは必然的だった。
日本でこれを言うのは気が引けるし、異端者扱いされるのは言うまでもない。
しかし、魔法等の非科学的な力が存在しているこの世界であれば問題はない。
その可能性に賭けるのも有りではあるが、危険性は膨大だ。
悩む。
小さな脳で、駆使できるだけの知識を限界まで用いて、今後の未来まで含めた上で決断する。
「実は俺は転生して、日本という場所から来ました」
打ち明けた。
信じて貰えるかはもう考えず、嘘偽りなく自身の情報を提示する。
目を逸らさずに真剣な眼差しで少女を見つめる。
張りつめる緊張、消えることを知らない沈黙。
心臓の音が一回一回着実に脳へ刻まれていく。
この感覚を決して忘れさせるものかと言うように、重く丁寧に。
ペンガの意識は壊れてしまいそうだ。
「あなた、それ本気で言ってるの?」
「は、はい」
緊張が更なる圧力をかける。
少女は信じ難そうにうつ向き、考える。
対してペンガは、表情を一切変えることなく少女の返答を待つ。
そして。
「にわかには信じられないけど、喋れるのもあるし、それにあの──」
突如としてペンガらを大きな揺れが襲う。
「なんだ!?」
「まさか‥‥」
なにやら少女には心当たりがあるようだ。
嫌な予感はするが、ペンガからしてみればこれは救いとも言える出来事である。
「ペンギン君、戦えるかい?」
「経験はないですが、多分‥‥」
事態の全貌が理解できた少女とは対照的に、理解が追い付かないペンガは、少女の問いかけに怪訝そうに答えた。
言葉からして大体戦闘的な何が起こることは間違いないのだろうが、いまいち状況が掴めない。
ただ一つ、分かるとするならば。
面倒事に巻き込まれている、ということだろう。
本能が危険だと叫ぶ。
「なら行こうか」
ほらほら、と少女はこちらを手招きする。
「は、はい」
一度スキルウィンドウを確認し、【全物理攻撃反射】及びに【全魔法攻撃反射】があることを確認する。
これらさえあれば身の安全は一応保証されるし、戦闘に参加することも出来る。
参加したくはないが。
そんなペンガをよそに、少女はどんどんと先へ進んでいってしまう。
「あ、待ってください!」
慌てて向かう。
長い廊下を走り、揺れの元となったであろう場所へと到着を果たした。
何を見間違えたのか、豪勢な造りの家の一角には巨大な穴が空き、解放感で満ちていた。
(なんか凄いなおい!)
穴の先には何百、いや何千もの見たことのない生物達が群れを成して待ち構えている。
幾らなんでも規模が規格外。
少女も想定外なその量に苦笑いが絶えない。
それに若干顔がひきつっている。
「一体何が?」
「言い忘れていたけど、魔王でもあるのよ?私。名はレイン。呼び名は何でも良いわ」
「はぁ‥‥?」
「で、多分これは別の魔王の軍勢ね。目的は多少変わるだろうけど、私を倒すためとか?」
「‥‥ん?魔王ってそんなにいんの!?」
少女改めレインの発現に、ペンガはうっかり素で返してしまった。
フラット過ぎる返しに、レインは苦笑いから解放され満面の笑みで大爆笑した。
「ぷはははははっ!!本当に知らないのね。と言うよりその返し良いわ、素のあなたって感じ!」
大爆笑のおかげで、ペンガもだいぶ気が緩む。
先程までの緊張はほどけ楽になった。
「気づいてたのか?ちょっと気を使ってたの」
「そりゃ魔王ですし、分からなければこんな立場出来ませんよ。‥‥‥‥まぁ、話は後で。取り敢えずあの輩どもを蹴散らしましょう」
レインの両手に白色と黒混じりの紫色の光が集まり、一つの炎となる。
右手には白色、左手には紫色の炎が生成されている。
準備万端なレインは隣で敵方向に構える。
(んじゃ適当に)
魔法なんて持ち合わせていないし、スキルも三つしかない。
なんと攻撃系統のスキルは一つしかない。
となればそれを使うしか道はない。
攻撃系統スキル【スラッシュ】。
使用者の魔力量が威力を大きく左右させる実力者向きなスキルの一つ。
注ぎ込める"魔力量は調整出来る"ので汎用性はあるのだが、如何せん魔力量が少ない使用者では全く威力が出せない。
その点、ペンガには問題はないが別の問題が沸き上がってしまう。
"魔力量は調整出来る"とはいうが、それは魔力操作が出来る人間に限られるので、それすら分からないペンガの場合は威力の方が問題付き。
使い方も分からないので、適当に腕へ魔力を纏わせる。
虹色の光が限界を与えず、それどころか底知れぬ力を加え続ける。
(これで、太刀打ち出来るのか?)
そう思う反面、威力は知りたかった。
初期レベルの自分が、何れ程の力を発揮する事が出来るのか。
(頼むから、恥ずかしくなるような威力だけは止めろよ!?)
おもむろに腕を振り上げる。
「今だっ!!」
「了解!」
レインは両手に生成した炎を敵向けて放つ。
敵軍に直撃後、炎は大きな音と共に周囲を巻き込み爆発した。
凄まじい威力というより、これもまた規格外。
この世界、規格外が多すぎる。
「じゃあ俺も!‥‥【スラッシュ】ッ!!」
負けじとペンガも腕を振り下ろし、溜め込んだ魔力を掛け声と同時に放出した。
光が腕から抵抗なく放たれ、敵軍の中心を狙うようにまっすぐな軌道を維持したまま進む。
その攻撃範囲の広さは横と高さを合わせると、最早【スラッシュ】というよりもレーザー砲だ。
走る大地をこれでもかと削る。
かといって、速度も威力も落とさない。
そんな規格外な【スラッシュ】は、とうとう敵軍に到達し、命中した。
【スラッシュ】のダメージを受けた箇所は一目瞭然で、その部分だけくっきりと群れに穴が開いている。
あの攻撃範囲を持ってしても、全滅させられないほど敵の数が多いことにも驚くが、殆ど敵は残っていない。
多少範囲からずれた位置に構える敵が少数残るのみ。
もう敵が可愛そうに見えてくる。
一部始終を見届けていたペンガとレインも、さすがにこの威力には引いた。
「ペンギン君、ちょっとやり過ぎじゃないかしら‥‥‥‥?ここまで来ると、もう清々しいけれど」
「俺も望んでこれをした訳ではないですよ!?使い方が分からなかったんです!」
必死に状況の弁解を試みるが、少し時間がかかりそうである。
一方その頃、甚大な被害を受けた敵軍ではなにやら圧倒的な強者が現れた。
右手に大剣を所持し、頭には禍々しい角を二本額に生やした魔族の戦士が。
謎の気配が大地及び二人もろとも包み込む。
魔力の流れが妙であることに、レインは気づく。
「‥‥‥‥【固有結界】」
「何か起こったんですか?」
「えぇ、厄介な事が起こったわ。別にペンギン君のせいではない。これもあの魔王の計画の内よ、大きく狂った筈だけれど」
ゴクリと唾を飲み、レインは続ける。
「どうやら魔王軍幹部、ザリアスが来たようね」
どうやら、まだ戦闘は続きそうだ。
「俺はそれで構わない。元々こちらに非が有るので、話す機会をくれただけでも有難い」
お風呂場から少女の自室へと移動した二人は、先程の提案通りに話をすることにした。
話をする、とは言っているが、言い換えれば休戦をする的な形で緊張は続く。
ペンガ自身も別にそれで構わない。
敵対するのは好ましくないし、出来ることなら協力関係を築きたい。
なにせ、この世界の話を聞けるのであれば生存率が少しでも高まる可能性は上昇する。
この機会を逃す訳にはいかない。
「分かったわ。あ!そう言えば気にしていなかったのだけれど、喋るペンギンなんて初めて見たわ。どこの生まれ?」
「えーと‥‥」
突然振られたなんとも答え難い質問に、ペンガは同様を隠せない。
転生したばかりなのだから、この世界の地名だって一つも分からないので適当言って誤魔化すことも出来ない。
ましてや、日本という地名を出して信用して貰えるかも怪しい。
(転生論的なのがあれば話は楽なんだけどな)
そう思うのは必然的だった。
日本でこれを言うのは気が引けるし、異端者扱いされるのは言うまでもない。
しかし、魔法等の非科学的な力が存在しているこの世界であれば問題はない。
その可能性に賭けるのも有りではあるが、危険性は膨大だ。
悩む。
小さな脳で、駆使できるだけの知識を限界まで用いて、今後の未来まで含めた上で決断する。
「実は俺は転生して、日本という場所から来ました」
打ち明けた。
信じて貰えるかはもう考えず、嘘偽りなく自身の情報を提示する。
目を逸らさずに真剣な眼差しで少女を見つめる。
張りつめる緊張、消えることを知らない沈黙。
心臓の音が一回一回着実に脳へ刻まれていく。
この感覚を決して忘れさせるものかと言うように、重く丁寧に。
ペンガの意識は壊れてしまいそうだ。
「あなた、それ本気で言ってるの?」
「は、はい」
緊張が更なる圧力をかける。
少女は信じ難そうにうつ向き、考える。
対してペンガは、表情を一切変えることなく少女の返答を待つ。
そして。
「にわかには信じられないけど、喋れるのもあるし、それにあの──」
突如としてペンガらを大きな揺れが襲う。
「なんだ!?」
「まさか‥‥」
なにやら少女には心当たりがあるようだ。
嫌な予感はするが、ペンガからしてみればこれは救いとも言える出来事である。
「ペンギン君、戦えるかい?」
「経験はないですが、多分‥‥」
事態の全貌が理解できた少女とは対照的に、理解が追い付かないペンガは、少女の問いかけに怪訝そうに答えた。
言葉からして大体戦闘的な何が起こることは間違いないのだろうが、いまいち状況が掴めない。
ただ一つ、分かるとするならば。
面倒事に巻き込まれている、ということだろう。
本能が危険だと叫ぶ。
「なら行こうか」
ほらほら、と少女はこちらを手招きする。
「は、はい」
一度スキルウィンドウを確認し、【全物理攻撃反射】及びに【全魔法攻撃反射】があることを確認する。
これらさえあれば身の安全は一応保証されるし、戦闘に参加することも出来る。
参加したくはないが。
そんなペンガをよそに、少女はどんどんと先へ進んでいってしまう。
「あ、待ってください!」
慌てて向かう。
長い廊下を走り、揺れの元となったであろう場所へと到着を果たした。
何を見間違えたのか、豪勢な造りの家の一角には巨大な穴が空き、解放感で満ちていた。
(なんか凄いなおい!)
穴の先には何百、いや何千もの見たことのない生物達が群れを成して待ち構えている。
幾らなんでも規模が規格外。
少女も想定外なその量に苦笑いが絶えない。
それに若干顔がひきつっている。
「一体何が?」
「言い忘れていたけど、魔王でもあるのよ?私。名はレイン。呼び名は何でも良いわ」
「はぁ‥‥?」
「で、多分これは別の魔王の軍勢ね。目的は多少変わるだろうけど、私を倒すためとか?」
「‥‥ん?魔王ってそんなにいんの!?」
少女改めレインの発現に、ペンガはうっかり素で返してしまった。
フラット過ぎる返しに、レインは苦笑いから解放され満面の笑みで大爆笑した。
「ぷはははははっ!!本当に知らないのね。と言うよりその返し良いわ、素のあなたって感じ!」
大爆笑のおかげで、ペンガもだいぶ気が緩む。
先程までの緊張はほどけ楽になった。
「気づいてたのか?ちょっと気を使ってたの」
「そりゃ魔王ですし、分からなければこんな立場出来ませんよ。‥‥‥‥まぁ、話は後で。取り敢えずあの輩どもを蹴散らしましょう」
レインの両手に白色と黒混じりの紫色の光が集まり、一つの炎となる。
右手には白色、左手には紫色の炎が生成されている。
準備万端なレインは隣で敵方向に構える。
(んじゃ適当に)
魔法なんて持ち合わせていないし、スキルも三つしかない。
なんと攻撃系統のスキルは一つしかない。
となればそれを使うしか道はない。
攻撃系統スキル【スラッシュ】。
使用者の魔力量が威力を大きく左右させる実力者向きなスキルの一つ。
注ぎ込める"魔力量は調整出来る"ので汎用性はあるのだが、如何せん魔力量が少ない使用者では全く威力が出せない。
その点、ペンガには問題はないが別の問題が沸き上がってしまう。
"魔力量は調整出来る"とはいうが、それは魔力操作が出来る人間に限られるので、それすら分からないペンガの場合は威力の方が問題付き。
使い方も分からないので、適当に腕へ魔力を纏わせる。
虹色の光が限界を与えず、それどころか底知れぬ力を加え続ける。
(これで、太刀打ち出来るのか?)
そう思う反面、威力は知りたかった。
初期レベルの自分が、何れ程の力を発揮する事が出来るのか。
(頼むから、恥ずかしくなるような威力だけは止めろよ!?)
おもむろに腕を振り上げる。
「今だっ!!」
「了解!」
レインは両手に生成した炎を敵向けて放つ。
敵軍に直撃後、炎は大きな音と共に周囲を巻き込み爆発した。
凄まじい威力というより、これもまた規格外。
この世界、規格外が多すぎる。
「じゃあ俺も!‥‥【スラッシュ】ッ!!」
負けじとペンガも腕を振り下ろし、溜め込んだ魔力を掛け声と同時に放出した。
光が腕から抵抗なく放たれ、敵軍の中心を狙うようにまっすぐな軌道を維持したまま進む。
その攻撃範囲の広さは横と高さを合わせると、最早【スラッシュ】というよりもレーザー砲だ。
走る大地をこれでもかと削る。
かといって、速度も威力も落とさない。
そんな規格外な【スラッシュ】は、とうとう敵軍に到達し、命中した。
【スラッシュ】のダメージを受けた箇所は一目瞭然で、その部分だけくっきりと群れに穴が開いている。
あの攻撃範囲を持ってしても、全滅させられないほど敵の数が多いことにも驚くが、殆ど敵は残っていない。
多少範囲からずれた位置に構える敵が少数残るのみ。
もう敵が可愛そうに見えてくる。
一部始終を見届けていたペンガとレインも、さすがにこの威力には引いた。
「ペンギン君、ちょっとやり過ぎじゃないかしら‥‥‥‥?ここまで来ると、もう清々しいけれど」
「俺も望んでこれをした訳ではないですよ!?使い方が分からなかったんです!」
必死に状況の弁解を試みるが、少し時間がかかりそうである。
一方その頃、甚大な被害を受けた敵軍ではなにやら圧倒的な強者が現れた。
右手に大剣を所持し、頭には禍々しい角を二本額に生やした魔族の戦士が。
謎の気配が大地及び二人もろとも包み込む。
魔力の流れが妙であることに、レインは気づく。
「‥‥‥‥【固有結界】」
「何か起こったんですか?」
「えぇ、厄介な事が起こったわ。別にペンギン君のせいではない。これもあの魔王の計画の内よ、大きく狂った筈だけれど」
ゴクリと唾を飲み、レインは続ける。
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どうやら、まだ戦闘は続きそうだ。
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